読了。十数年ぶりのミステリ。"あの一行"がすごいっていう前情報しか持っていなかったけど、どれが"あの一行"なのかがすぐ分かった。文句無しに面白かった。ミステリって小難しいイメージがあって敬遠していたけど、やっぱり名作といわれる小説はいいね。
物語とは関係ないけど、1987年の小説であり、当時の性別役割がありありと分かるのも興味深い。連続殺人が起きているのに絶対に女に料理をさせようという男たちに、当時の読者たちはなんの違和感も覚えなかったのだろう。
あと、推理小説だから仕方ないけど、人が簡単にたくさん死ぬのは少し抵抗感があった。だんだん麻痺してきたけどね。
読了。十数年ぶりのミステリ。"あの一行"がすごいっていう前情報しか持っていなかったけど、どれが"あの一行"なのかがすぐ分かった。文句無しに面白かった。ミステリって小難しいイメージがあって敬遠していたけど、やっぱり名作といわれる小説はいいね。
物語とは関係ないけど、1987年の小説であり、当時の性別役割がありありと分かるのも興味深い。連続殺人が起きているのに絶対に女に料理をさせようという男たちに、当時の読者たちはなんの違和感も覚えなかったのだろう。
あと、推理小説だから仕方ないけど、人が簡単にたくさん死ぬのは少し抵抗感があった。だんだん麻痺してきたけどね。
読了。鼓直訳。ノーベル文学賞作家の代表作。凄まじい本だった。ドロドロに煮立てたコーヒーのように濃縮された小説。細密で濃厚なエピソードをまわりくどい言い回しと共にこれでもかと積み重ねながら、それぞれが孤独を抱えて生きているブエンディア一族の物語を紡いでいく。いつも読んでいる小説と比べて密度も深度も段違いで、本当に果てしなく長い時間をブエンディア家と共に過ごしたような気にさせられる。登場人物も多く時系列も行ったり来たりでかなり複雑な小説ではあるのだが、不思議と取り残されることがなく、どのエピソードも頭の中にこべりついて離れないのがまさに名作という趣だった。
読了。鼓直訳。ノーベル文学賞作家の代表作。凄まじい本だった。ドロドロに煮立てたコーヒーのように濃縮された小説。細密で濃厚なエピソードをまわりくどい言い回しと共にこれでもかと積み重ねながら、それぞれが孤独を抱えて生きているブエンディア一族の物語を紡いでいく。いつも読んでいる小説と比べて密度も深度も段違いで、本当に果てしなく長い時間をブエンディア家と共に過ごしたような気にさせられる。登場人物も多く時系列も行ったり来たりでかなり複雑な小説ではあるのだが、不思議と取り残されることがなく、どのエピソードも頭の中にこべりついて離れないのがまさに名作という趣だった。
読了。編年体になっているのもあるが、一冊を通して生活の匂いを感じる句集だった。関西の地名や風土がよく入ってくるのも特徴的。渾身の一句を世の中に刻んでやろう、という風な野望を感じる句はほとんどなく、俳句とともに自然体で生きている雰囲気がある。字余り字足らず句またがりなどの破調がほとんどないことも、その印象を強くしているのだろう。どの句も平易で身の回りだけで完結しており、とてもやわらかい気持ちになれる句集だった。
動く看板光る看板十二月
小春日の大阪湾といふ鏡
見物が絶句を継いで村芝居
風呂敷の更紗も二月礼者かな
薄れたる定規の目盛り秋灯
#俳句
読了。編年体になっているのもあるが、一冊を通して生活の匂いを感じる句集だった。関西の地名や風土がよく入ってくるのも特徴的。渾身の一句を世の中に刻んでやろう、という風な野望を感じる句はほとんどなく、俳句とともに自然体で生きている雰囲気がある。字余り字足らず句またがりなどの破調がほとんどないことも、その印象を強くしているのだろう。どの句も平易で身の回りだけで完結しており、とてもやわらかい気持ちになれる句集だった。
動く看板光る看板十二月
小春日の大阪湾といふ鏡
見物が絶句を継いで村芝居
風呂敷の更紗も二月礼者かな
薄れたる定規の目盛り秋灯
#俳句
読了。最近は内面的小説ばかり読んでいたので、気分転換の池井戸潤。学生の頃によく読んでいたが、今は企業の解像度が上がり、より楽しめているような気がする。数年前にそこそこ規模の大きな企業に転職したので、わかるなぁというシーンも多い。どんどん熱く高まっていく構成はいつもながら見事。ただ、最後の展開がタイトルから透けて見えてしまうのは勿体ないような気がした。池井戸小説自体は確かに安定して面白いとは思うが、池井戸潤を愛読しているおじさんは嫌だなぁ、と思う。社会人野球の話であるが、細かいルールを調べながら読んだので少し野球に詳しくなった。DHとか勝利投手とか。
読了。最近は内面的小説ばかり読んでいたので、気分転換の池井戸潤。学生の頃によく読んでいたが、今は企業の解像度が上がり、より楽しめているような気がする。数年前にそこそこ規模の大きな企業に転職したので、わかるなぁというシーンも多い。どんどん熱く高まっていく構成はいつもながら見事。ただ、最後の展開がタイトルから透けて見えてしまうのは勿体ないような気がした。池井戸小説自体は確かに安定して面白いとは思うが、池井戸潤を愛読しているおじさんは嫌だなぁ、と思う。社会人野球の話であるが、細かいルールを調べながら読んだので少し野球に詳しくなった。DHとか勝利投手とか。
読了。あまりにも破調の歌が多い歌集。五六音の字余り・字足らずはザラなのだが、不思議と定型を感じさせる韻律ではある。女性性を持つことから来る鬱憤が短歌を通して爆発しており、どの歌からも強烈な激情を感じることができる。その筆の勢いと大胆な破調が妙にマッチしており、すごいなぁと呟きながら一気に読み進めてしまった。
社員証の私ウケる誰にも心開いてないって顔
愛はお金お金は愛じゃないけれど津波のようなパトロンがほしい
おとこもおんなもそうでありたくないひともみんなカードキャプターさくらだ
みんなつらいって言ったらそれで終わりじゃん私が急速冷凍する
#短歌
読了。あまりにも破調の歌が多い歌集。五六音の字余り・字足らずはザラなのだが、不思議と定型を感じさせる韻律ではある。女性性を持つことから来る鬱憤が短歌を通して爆発しており、どの歌からも強烈な激情を感じることができる。その筆の勢いと大胆な破調が妙にマッチしており、すごいなぁと呟きながら一気に読み進めてしまった。
社員証の私ウケる誰にも心開いてないって顔
愛はお金お金は愛じゃないけれど津波のようなパトロンがほしい
おとこもおんなもそうでありたくないひともみんなカードキャプターさくらだ
みんなつらいって言ったらそれで終わりじゃん私が急速冷凍する
#短歌
読了。めちゃくちゃ面白かった。生きるのに疲れた主人公が化け物の住むマンションに入居し、化け物がベランダで毎日話してくる怪談を友人として聞くというホラー小説。主人公が人生を諦めているので、巻き起こる怪異にしっかり向き合わずにいなしてゆくのが小気味いい。ちゃんと怖くて、でもどこかほっこりしていて、ちょっと気を許すと隣人の化け物が可愛く思えちゃったりして、妙な読み口の小説だった。サクサクと読みやすく、とても好みの本だった。話の締め方は拍子抜けという感じだったが、どうやらまだカクヨムで連載が続いているらしい。そちらも楽しみだ。
読了。めちゃくちゃ面白かった。生きるのに疲れた主人公が化け物の住むマンションに入居し、化け物がベランダで毎日話してくる怪談を友人として聞くというホラー小説。主人公が人生を諦めているので、巻き起こる怪異にしっかり向き合わずにいなしてゆくのが小気味いい。ちゃんと怖くて、でもどこかほっこりしていて、ちょっと気を許すと隣人の化け物が可愛く思えちゃったりして、妙な読み口の小説だった。サクサクと読みやすく、とても好みの本だった。話の締め方は拍子抜けという感じだったが、どうやらまだカクヨムで連載が続いているらしい。そちらも楽しみだ。
読了。すごく面白かった。海沿いの町に移り住んだ女性とそこに住む少年の話。ちょっと触れたら壊れてしまいそうな薄いガラスのような小説で、読んでいるあいだ中、なんだか分からないけどずっと泣きそうだった。内容が辛すぎて読むのをやめようかと何度も思ったが、ハッピーエンドを信じて読み進めた。子どもが生まれたのを発端に、両親との関係がギクシャクしてしまった自分の今の境遇と重ね合わせてしまったのかもしれない。親と子、大人と子どもの「愛」についての物語だった。歳を取ればとるほど涙腺が弱くなるっていうのは、持っている思い出が増えていくからなのかもなぁと思った。
読了。すごく面白かった。海沿いの町に移り住んだ女性とそこに住む少年の話。ちょっと触れたら壊れてしまいそうな薄いガラスのような小説で、読んでいるあいだ中、なんだか分からないけどずっと泣きそうだった。内容が辛すぎて読むのをやめようかと何度も思ったが、ハッピーエンドを信じて読み進めた。子どもが生まれたのを発端に、両親との関係がギクシャクしてしまった自分の今の境遇と重ね合わせてしまったのかもしれない。親と子、大人と子どもの「愛」についての物語だった。歳を取ればとるほど涙腺が弱くなるっていうのは、持っている思い出が増えていくからなのかもなぁと思った。
読了。一章と三章は、日常のことを詠んでいるようで少しだけ「分からない」へずらされている歌が並ぶ。第二章は語彙も措辞も難解になり「分からない」の渦に放り込まれたようになる。
一冊を通して分かりやすい叙情に頼らずに歌が作られていて、一首一首に力がこもっている歌集だった。
(ファンタジーモチーフの歌も多いがこれらは好みでなかった)
銀漢に表裏があれば手触りは違うのだろう 指輪を外す
選ぶのがいやだったという花束をまぶしい塩湖に浮かべていたい
どうだったと聞けばまじめに冬の日の南天の実のかたさを喋る
ボトルシップの底に小さな海がある 語彙がないから恋になるだけ
#短歌
読了。一章と三章は、日常のことを詠んでいるようで少しだけ「分からない」へずらされている歌が並ぶ。第二章は語彙も措辞も難解になり「分からない」の渦に放り込まれたようになる。
一冊を通して分かりやすい叙情に頼らずに歌が作られていて、一首一首に力がこもっている歌集だった。
(ファンタジーモチーフの歌も多いがこれらは好みでなかった)
銀漢に表裏があれば手触りは違うのだろう 指輪を外す
選ぶのがいやだったという花束をまぶしい塩湖に浮かべていたい
どうだったと聞けばまじめに冬の日の南天の実のかたさを喋る
ボトルシップの底に小さな海がある 語彙がないから恋になるだけ
#短歌
読了。俳句には珍しく多くの句で「君」が意識されており、叙情的でしっとりと水分を含んでいる。フォントも句とあっていて心地いい。景の切り取り方がどれも好みでとても良い句集だったので、何度も読み返すことになりそう。特に良かった句を以下に書くが、横書きになってしまうのが惜しい。余白のあるページに縦書きで並べられているのがピッタリの句ばかりだった。是非縦書きで読んでほしい。
扉を叩くための拳や春北風
書きながら字の暮れてゆく桜かな
滝壺のたとへば君の底知れず
冬薔薇に司祭のごとく歩み寄る
桜蘂降る硝子屋の窓硝子
風邪の目に活字のひとつひとつかな
#俳句
読了。俳句には珍しく多くの句で「君」が意識されており、叙情的でしっとりと水分を含んでいる。フォントも句とあっていて心地いい。景の切り取り方がどれも好みでとても良い句集だったので、何度も読み返すことになりそう。特に良かった句を以下に書くが、横書きになってしまうのが惜しい。余白のあるページに縦書きで並べられているのがピッタリの句ばかりだった。是非縦書きで読んでほしい。
扉を叩くための拳や春北風
書きながら字の暮れてゆく桜かな
滝壺のたとへば君の底知れず
冬薔薇に司祭のごとく歩み寄る
桜蘂降る硝子屋の窓硝子
風邪の目に活字のひとつひとつかな
#俳句
第98回「夕方」
金魚鉢の底も夕晴れ
最優秀賞で掲載いただきました!
二度目なのですが、毎回素敵なイラストを描いてもらえるのが嬉しいですね。
koubo.jp/article/40162
#俳句 #自由律俳句
第98回「夕方」
金魚鉢の底も夕晴れ
最優秀賞で掲載いただきました!
二度目なのですが、毎回素敵なイラストを描いてもらえるのが嬉しいですね。
koubo.jp/article/40162
#俳句 #自由律俳句
バチカンでリアルコンクラーベが行われていることで話題になっている映画。映画館で見てきました。シアターが満員でびっくり。
次の教皇を決めるコンクラーベを取り仕切る枢機卿が主人公。落ち着いた映画かと思いきや、目まぐるしい展開でエンタメ寄り。教皇選挙の仕組み自体も興味深く、話も面白いので目が離せなかった。
ただ、最後の取ってつけたようなオチはちょっと(というよりかなり)嫌だった。配慮が杜撰な印象で「ポリコレ映画」って言われても仕方ない感じ。
見に行くなら登場人物の名前と顔だけは予習するべし。誰が誰か分からなくて初めの30分は混乱しちゃう。
バチカンでリアルコンクラーベが行われていることで話題になっている映画。映画館で見てきました。シアターが満員でびっくり。
次の教皇を決めるコンクラーベを取り仕切る枢機卿が主人公。落ち着いた映画かと思いきや、目まぐるしい展開でエンタメ寄り。教皇選挙の仕組み自体も興味深く、話も面白いので目が離せなかった。
ただ、最後の取ってつけたようなオチはちょっと(というよりかなり)嫌だった。配慮が杜撰な印象で「ポリコレ映画」って言われても仕方ない感じ。
見に行くなら登場人物の名前と顔だけは予習するべし。誰が誰か分からなくて初めの30分は混乱しちゃう。
読了。面白かった。人間社会を他人事のように眺めながら、妹から教わった「処世術」を駆使して日々をなんとか過ごしていく女性の話。コンビニバイトが天職の主人公から語られるコンビニは、とてもキラキラした場所として描かれていて読んでいて楽しい。と、思っているのも束の間、ある事件から一気に生々しくグロい話になっていく。チャーリー・ゴードンが知性を手に入れた時のような感覚に陥るが、心づもりができていない分こっちの方がダメージが大きかった。ただ、話の締め方はさっぱりとしていて読後感もいい。文章も上手く大袈裟な展開などはないので、とても飲み下しやすい毒でした。人気があるのも納得。
読了。面白かった。人間社会を他人事のように眺めながら、妹から教わった「処世術」を駆使して日々をなんとか過ごしていく女性の話。コンビニバイトが天職の主人公から語られるコンビニは、とてもキラキラした場所として描かれていて読んでいて楽しい。と、思っているのも束の間、ある事件から一気に生々しくグロい話になっていく。チャーリー・ゴードンが知性を手に入れた時のような感覚に陥るが、心づもりができていない分こっちの方がダメージが大きかった。ただ、話の締め方はさっぱりとしていて読後感もいい。文章も上手く大袈裟な展開などはないので、とても飲み下しやすい毒でした。人気があるのも納得。