氷が世界を覆い尽くそうとしていた。終末の予感に満ちたなか「私」は少女の家へと車を走らせる。
少女を「長官」なる人物と争ったりと寓話的な展開だが、少女の造型が生々しくてそれがこの小説に妙な迫力をもたらしているように思った。今日みたいに寒い日に読むと感慨もひとしおというやつ
氷が世界を覆い尽くそうとしていた。終末の予感に満ちたなか「私」は少女の家へと車を走らせる。
少女を「長官」なる人物と争ったりと寓話的な展開だが、少女の造型が生々しくてそれがこの小説に妙な迫力をもたらしているように思った。今日みたいに寒い日に読むと感慨もひとしおというやつ
アルゼンチンの片田舎の診察室でアマンダは瀕死の状態である。その横には謎の少年ダビ。彼女はなぜ瀕死なのか、二人の対話がその記憶をたどる。
いくつかの声の重なりが物語に纏わせる幻想的な空気、しかしその奥にあるものは…
日本のジャンル区分でいうとミステリーにあたるところが多々あるので言えないことが多いけど、声が重なっていく書き方はとても魅力的だった
アルゼンチンの片田舎の診察室でアマンダは瀕死の状態である。その横には謎の少年ダビ。彼女はなぜ瀕死なのか、二人の対話がその記憶をたどる。
いくつかの声の重なりが物語に纏わせる幻想的な空気、しかしその奥にあるものは…
日本のジャンル区分でいうとミステリーにあたるところが多々あるので言えないことが多いけど、声が重なっていく書き方はとても魅力的だった
ニューヨークの高層アパートの一室で、死の床にある往年の大女優が半世紀近く前の殺人を告白した。事件現場は一階、そのとき彼女は34階の自室にいてアリバイは完璧だったという。御手洗潔がその謎を追う。ドでかトリック炸裂!!!な長編ミステリーだった
ニューヨークの高層アパートの一室で、死の床にある往年の大女優が半世紀近く前の殺人を告白した。事件現場は一階、そのとき彼女は34階の自室にいてアリバイは完璧だったという。御手洗潔がその謎を追う。ドでかトリック炸裂!!!な長編ミステリーだった
「20世紀初頭の忘れられた小作家になりたい」――表紙にあるこの言葉通りラルボーの作品には時代による淘汰に抗おうという気構えはないように思う。
本書に収められている10篇ではおもに子どもが扱われており、つかのまの友情だったり勉学に対する純粋な喜びと苦悩だったりと、どこか心覚えはあるがすっかり失われてしまった情感がすくい取られている。
しかしときおり危うさがほとばしることがあり、その一瞬は幼年時代の思い出として片づけてしまうにはあまりに痛切な感情を呼び起こす。
「20世紀初頭の忘れられた小作家になりたい」――表紙にあるこの言葉通りラルボーの作品には時代による淘汰に抗おうという気構えはないように思う。
本書に収められている10篇ではおもに子どもが扱われており、つかのまの友情だったり勉学に対する純粋な喜びと苦悩だったりと、どこか心覚えはあるがすっかり失われてしまった情感がすくい取られている。
しかしときおり危うさがほとばしることがあり、その一瞬は幼年時代の思い出として片づけてしまうにはあまりに痛切な感情を呼び起こす。
アンゴラのヤモリが語り手。ヤモリはフェリックスの家に住みつき彼の生活を観察している。
フェリックスはひとの過去を新しく作り直すという仕事をしている。長年にわたる内戦が終わったアンゴラの社会はまだ不安定らしく、この仕事にも説得力があるという。ある日フェリックスのもとを身元不詳の外国人が訪ねてくる…
これはネタバレしないほうがいいタイプの作品だった。だからあんまり言えることはないけど、ヤモリによる自在な語りと特殊な職業についての語りが見せる小説の相貌はすごく興味を引くものだった。
アンゴラのヤモリが語り手。ヤモリはフェリックスの家に住みつき彼の生活を観察している。
フェリックスはひとの過去を新しく作り直すという仕事をしている。長年にわたる内戦が終わったアンゴラの社会はまだ不安定らしく、この仕事にも説得力があるという。ある日フェリックスのもとを身元不詳の外国人が訪ねてくる…
これはネタバレしないほうがいいタイプの作品だった。だからあんまり言えることはないけど、ヤモリによる自在な語りと特殊な職業についての語りが見せる小説の相貌はすごく興味を引くものだった。
チャンドラー『長いお別れ』へのオマージュが色濃く反映されたハードボイルド。おしゃれなセリフの応酬が繰り広げられる。在日米軍基地を絡めた点に独自の展開があるか。
チャンドラー『長いお別れ』へのオマージュが色濃く反映されたハードボイルド。おしゃれなセリフの応酬が繰り広げられる。在日米軍基地を絡めた点に独自の展開があるか。
イラン・イスラーム革命に翻弄される一家のすがたをマジック・リアリズムの手法で描いた作品。思ったけどマジリアって現実を基盤にできない代わりに、家族とか一族というものの絆を強固にしているのかもしれない。
本作でよかったところは、中東圏の風味が新鮮だったこと、どことなく日本の純文学にあるようなセンスすぎるものの見方が随所に差し挟まれていること。それから、啓示文学としてあまりにすばらしい始まり方をしておきながら、文学に宗教を呑み込ませるかのように、細部で読ませる構成をとっていること
イラン・イスラーム革命に翻弄される一家のすがたをマジック・リアリズムの手法で描いた作品。思ったけどマジリアって現実を基盤にできない代わりに、家族とか一族というものの絆を強固にしているのかもしれない。
本作でよかったところは、中東圏の風味が新鮮だったこと、どことなく日本の純文学にあるようなセンスすぎるものの見方が随所に差し挟まれていること。それから、啓示文学としてあまりにすばらしい始まり方をしておきながら、文学に宗教を呑み込ませるかのように、細部で読ませる構成をとっていること