#もっとずっときっと笑って
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ひどく悲しい夜だった。どうしてかはわからないけれど、涙がぼろぼろと溢れて止まなかった。
気持ちがずっと沈んでいく。制服だって、まだ着替えられない。
ふわふわとした絶望のベッドにごろんと寝そべっていると、視界の端で白い半透明な何かが小さく動いているのが見えた。
それは人のかたちをしていて、もっと言えば私のよく知る人のかたちであった。
それは踊っていた。不器用で、わけもわからずに。
何故だか目が離せなかった。だって、あの人はこんなに小さくないし、何よりこんなことをするわけがないんだもの。
きっとあの人ではないのに、わたしを励まそうと不器用にするところはあの人で、わたしはつい笑ってしまったのだ。
October 13, 2025 at 5:11 AM
imonouka.bsky.social
「……一途、確かにそうね。アタシは林檎に関しては一途である自負が無いわけじゃないわね。この身を得てから、ずっと愛おしいと思っているもの、"成りたい"と思っているモノ、だもの。諦めたものも、無かったわけじゃないけれど。アンタも、一途に愛せるものがあるのなら、アタシはきっとそれを応援する、かもね？ふふ、だってアタシたち、初対面よ。もっとお互いのことを知らないと！」って、シトリンさんの言葉を聞いて、そう言いながら笑ってるベルちゃんですね！薔薇のお庭の話を聞いて、「あら、良いじゃない。植物を大切にしてくれるコは好きよ、アタシ」って言うことでしょう！
October 10, 2025 at 8:29 AM
harutoomi.bsky.social
ロイアイのワンライ過去お題チャレンジ
お題はワンピース
最初に思い浮かんだ暗いイメージを払拭できず、まあそのまま行った。
中佐少尉でできてなくて暗い。リザさん鬱々としている。
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。 画像情報：generated by 新書ページメーカー / Photo by Jill Wellington on pixabay / フォント：源暎こぶり明朝 以下は本文の内容です。 　どうしてもと食い下がられて受け取った包を開けてみると、ワンピースが入っていた。 　リザはそれを広げてみる。白のワンピースは、ふんわりやさしく広がって、レースの花模様が浮いて見えるのが可愛らしい。 　体にあててみた。鏡に写して見ようかと思った時に、すねに傷があるのが目に入る。先日の訓練で擦ったのだ。もう治っている。筋状のかさぶたは汚れのようだった。 　リザは立ち上がる気をなくす。 （白だなんて） 　ふふ、と肩を揺らしてリザは笑った。 　ワンピースを渡してきたのはマスタングだ。もっと前に渡したかったんだけどと苦く笑っていた。彼はイシュヴァールに行く前、ホークアイ家を訪ねたらしい。その時の手土産だったのだと言っていた。 　どうして服だったのだろうとリザは思う。彼はそつなくいつも手土産を用意していたが、基本的に食べ物だった。ちょっと珍しいお菓子、リザの住むあたりでは手に入れにくいお野菜、季節によっては肉だったこともあったように思う。そう、ずっと昔なら、人にもらったからと服やアクセサリーや化粧品を持ってきてくれたこともあった。 　あの頃リザが随分やきもきしたことも彼は知らないだろう。絶対恋人からだと思って、こっそり捨てたことだってある。今にして思えば、多分、彼は彼の養母の店の従業員からもらったのだ。 　真っ白のワンピース。 　ウェディングドレスの話に、それを思い浮かべたことがある。子どもの頃のことだ。リザは実際には結婚式のドレスを見たことはなかった。参列したというクラスメイトが話していただけだ。ふわふわした白いドレスで、レースがきれいで、と。 　お弟子さんにもそのまま話した。見たことありますか？　すごく素敵だったんですってと。きっと声には憧れが滲んでいた。ノートの隅に落書きもした気がする。流石にそこまでは知らないだろうけれど。 　ドレスなんか見たことがないから、その時リザの頭の中に浮かんでいたのはワンピースだった。エンパイアワンピースと、今のリザなら説明する。胸の下で切り返しがあり、すとんとスカートが深く落ちて、袖が膨らんでいる。開いた襟ぐりの、神話なんかに出てきそうなそれ。 　贈られたワンピースに目を落とした。肩のあたりを手に持って持ち上げてみる。切り替えはウエストにあるし、スカートはボリュームがある。プリンセスラインと言っただろうか。 　きっと自分が意識しすぎなのだ。イシュヴァールに行く前なら、当時の彼の年齢は今の自分ともそれほど変わらない。独り立ちしたばかりで背伸びをしたくて、ちょっと女の子にいい格好をしたくなっただけ。店頭でワンピースを見つけて、リザのことを思い出してくれたのなら嬉しい。 （似合うって） 　思ってくれたのだろうか。 　結局リザはワンピースを手に立ち上がった。鏡の前でもう一度自分の身体にあててみる。サイズ は問題なさそうだ。真っ白の、お姫様みたいな可愛いワンピース。鏡のなかの自分は卑屈な笑みを浮かべている。 　ひどく嫌な気持ちになった。緩んだ指からワンピースは滑り落ち、床にわだかまった。踏みにじってやりたくなったけれど、寸前で思いとどまる。 　君に、と言った人の、苦い笑顔。 （……だめ） 　しゃがみこんだ。額を抑える。凶暴な衝動は胸に渦巻いている。こんなワンピース、ずたずたに引き裂いてやりたい。銃の的にして、血で汚して。 　きっと彼は傷つくだろうけれどと思ったら、余計にそうしたい気もした。 　無邪気になんてもう笑えない。白いワンピースに袖を通すには、もう自分は汚れすぎている。 　あの頃とはもう違うのだ。彼が贈りたかったのは、師匠の娘で、血を知らない、無邪気な田舎娘だった頃の自分だ。 　だからといって、こんな風にいじましい自分を見せつけることもできないけれど。 　暗い衝動をどうにか押し殺して、リザはワンピースを元通りに包んだ。死体を埋める気持ちで片付ける。 （あの人は） 　リザがまだこのワンピースを喜ぶと思っていたのだろうか。 　それならそうと振る舞おう。清潔さや優しさを装おう。そうして欲しいと彼が願うなら。嘘なんて何も怖くない。 　鏡の中で、虚像のリザは思ったよりずっときれいに微笑んでいた。
September 20, 2025 at 12:18 AM
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百日紅とポケフジちゃんの話です　まだ……ギリ咲いてるから……セーフとされたい……（2/2）
でも、そうはなれなかったのだ。 　 　思い返すジャングルポケットの上にも、百日紅の白い花が降りかかる。この街に湧くように咲いていたはずなのに、去年は全く気づいてもいなかった。 　 　あの夏祭りの夜、花火に照らされて、フジキセキは本当に綺麗に笑っていた。でも、あの笑顔を思い出すと、今でもちくりと胸が痛む。だってあれは舞台の上の表情だ。ちっぽけな自分を取り繕っていることなんて、全部お見通しだったろう。 　小さくねじくれて、消えてしまいそうだった走りたい気持ちを、それでも確かにあるのだと、見つけて、照らして、再びターフに立てるようにしてくれたのがこの人だ。 　憧れの、完璧に格好いい先輩と、後輩。クラシックに走ったジャパンカップまでは、その枠組みからどうもはみ出せない関係だったと思う。 　では、今は？　ライバル宣言もさせてもらって、フジキセキ自身もレースに復帰して、一年近く一緒に時間を過ごしてきた今は、どうだろう。 　フジキセキの目に、自分はどんな風に映っているのだろう？ 　 　俯いていた顔を上げて、ジャングルポケットはフジキセキを覗きこむ。視線が合うと、フジキセキはやわらかく微笑んで返した。 「どうしたの？」 　少し力の抜けた、ざっくばらんと言ってもいい笑顔だ。最近見せてもらえるようになったこの笑顔が、舞台袖限定のものであることを知っている。それくらいには、この人のことを見てきている。 「フジさん、スカートもめっちゃ似合うなって……」 「はは、ありがと。今日のお出かけを夏合宿のご褒美にしてたからさ、着てて自分が楽しくなっちゃう格好にしちゃった！」 　黒い艶やかな尻尾を普段より大きく振りながら、フジキセキは屈託なく答えた。 「へえ……」 　やっぱり、かわいい。それに……。胸がきゅう、と締めつけられる。意識的にかはわからないけれど、この人はもう、かっこいい先輩の顔を少しずつ外して、生身で隣にい ようとしてくれているのだ。 　進む先を見れば、強い日差しが作る輪郭のはっきりした自分の影が眼前に延びていた。その胸の辺りに、ぽとりと、薄紅をした百日紅の小さな丸い花がまた一つ落ちる。 　この、胸をくすぐる、やさしい気持ち。ジャングルポケットは知らず胸に手を当てていた。今まできっとフジキセキからたくさんもらっていて、これからも手渡してくれるだろう気持ち。 　渡したい。あなたにも。そうしたら、もっともっと、のびやかな顔を見せてもらえるだろうか？ 　 　海風がずっと吹いている。 　また風に舞った花が、ひとつ、フジキセキの耳に留まった。ぴょこぴょことうっとうしそうに耳を揺らしているので、ジャングルポケットはちょっと背伸びをして、そっと指で花を摘んだ。少しもったいないような気もする。繊細な薄い幾重もの花びらが、しなやかな青鹿毛によく似合っていたからだ。 　だから、 「フジさん」 　胸がどきどきするのを頑張って無視しながら、顔が赤くなっていないように祈りながら、なるべくなんでもないように笑う。なんでもないこと、これからたくさん伝える言葉にしたいのだ。 「なんかね、花つけてんの、すっげーかわいかったです！」 　フジキセキは本当にわずかな間、ぽかんと微かに口を開けた。薄くリップののっていた口元はすぐに緩んで、はにかむような笑顔を浮かべている。 「……ありがと！」 　散々悩んだわりに、伝えてしまえば一瞬だ。でも短い返事の後に、フジキセキの耳が小さく震えたと思ったのは、自惚れだろうか？　それでもいい、と思う。だんだんと普段の調子になっていく会話が、今はなんとも嬉しかった。 　 　フジキセキは、気づけばまた緩やかに早足になっている。ジャングルポケットは少し大股になってテンポを合わせてみた。確かに、歩くのはとても楽しいことだった。
September 15, 2025 at 10:52 AM
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先日ポストした🎑sgoを書き直しました！

『月i見i日和』
夏の終わりが寂しい杉と励ましたい尾のsgo（4/4）
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「月見日和」、「だえ@dangoelephant」と記載されています。 以下は本文の内容です。 　点々と申し訳程度に植えられた街路樹の根本辺りから、鈴虫の音に耳をくすぐられる。半袖のワイシャツから出た腕に涼しい風が触れ、まるで灼熱の季節は終わったと言わんばかりだ。 　ついこないだまで夜でも湿度をまとった重苦しい暑さだったが、ここ数日で朝晩はずいぶん過ごしやすくなった。労働後の帰路に着く足取りも心なしか軽い。 　森山直太朗の『夏の終わり』には少し涼しすぎるだろうか。 　││これは８月が終わるくらいの夕方に、汗を滲ませながらアイスを齧って聴くのがいいんだ。 　杉元が７月末に流れて来た曲に尖らせていた唇を思い出した。そんなピンポイントに指定される曲もないだろうと思ったが、確かに夏が終わってから聴くのは味気ないかもしれない。 　そんなことを考えて足を運ぶたびに、左手のビニール袋がガサガサと揺れる。目玉焼きが乗っただけで『月見』と銘打つのは簡単すぎやしないか？と思わないでもないが、旨さが全てを不問に付す月見バーガーが全種類入っている。あと、 限定のパイとシェイクと、いつものサイドメニューを２人分頼んだら３袋にもなっちまった。 　家では、いつも陽の光を背負って笑う夏の申し子みたいな杉元が、しょぼくれて寝込んでいる。部署異動で春からずっと忙しく、毎年夏は馬鹿みたいに遊び呆ける杉元も休日出勤ばかりだった。やっと取れた土日休み、駆け込みで予約を取った一昨日のＢＢＱは、杉元がどっかからもらってきた強めの風邪でおじゃんになった。この数年病気１つしたこともなかった頑丈なやつだが、疲れが溜まっていたのかもしれない。「さすが杉元。夏風邪をひくほどの馬鹿だったとはな」という軽口にも「そうね……」と乗ってこなかったから心身共に相当キているとみた。 　ガサガサと揺れるビニールが手のひらに食い込む。少し持ち上げ顔を近づけると、温かさに乗ってバンズの小麦とソースの甘ったるい香りが鼻に届いた。飲み物の氷がガラガラと音を立てる。シェイクもあるのにコーラまで頼んだのはやりすぎだったか？重さに小さく後悔が湧くが、シェイクはデザートとしても楽しみ たいし、コーラのないハンバーガーなんて、餡子のないおはぎみたいなもんだしな、と思い直した。みんな俺と同じはずだ。 　黄色い２つの山が連なったファーストフード店の袋を持ち替えて、赤く筋の入った左手を開いたり閉じたりして労ってみる。 「夏が終わっちまう……」そう半泣きでＢＢＱ場にキャンセルの電話を入れていた杉元が過ぎる。 　多分、風邪っぴきの人間にはもっと相応しいもんがあるとは思う。思うが、アイツは昭和の家電みたいな丈夫で単純な男だから、ショックを与えたら治るかもしれない。 　毎年嬉々として発売日に買い込んでくるのに、今年はその余裕もなかったようだからきっと喜ぶ。この右手の重量は、大人しく養生している褒美だ。 　ほら、大丈夫だろ。夏が終わったって楽しいことはいくらでも作れる。 　あと、なんだ。今晩は涼しいから、３ヶ月ぶりに同じベッドで寝るのを許して やってもいい。 　鈴虫の音に別れを告げて、鼻歌まじりに角を曲がると、杉元の待つマンションが大きな満月に照らされていた。
September 14, 2025 at 3:08 AM
capriccio21.bsky.social
あなたたちに慕い愛され崇められるために「私」は。
あの子は笑いました、それでも笑いました。
私の全てをわかったように笑いました。
──「人とは不思議な生き物でして、泣いたり苦しんだりするのに、それを笑顔に変えられるのです。それはきっと、魔法なんかよりずっと尊くて皆がそれに気付けたら、もっと世界は優しくなると思うのです」。
赤い、赤い。
私の髪の毛あの子の眸。
紅い紅い。
私のドレス、彼の眸。
おかしいのです、優しい私。
慈悲深い私。
尊いわたし。
つよいわたし。
わたしは“恋なんてしていませんでした”。
September 9, 2025 at 1:16 PM
n-dearplus.bsky.social
【ボーイs フェスタ2025夏✨BL小説イッキ読み特集②】
#久我有加 先生
× #山田ユギ 先生
#何でやねん！①
#何でやねん！②

× #金ひかる 先生
#月も星もない
#月よ笑ってくれ

× #草間さかえ 先生
#恋で花実は咲くのです

× #北別府ニカ 先生
#思い込んだら命がけ！

× #佐倉ハイジ 先生
#君が笑えば世界が笑う
#もっとずっときっと笑って

#小林典雅先生
× #みずかねりょう 先生
#友達じゃいやなんだ
× #須坂紫那 先生
#御曹司の恋わずらい
June 20, 2025 at 10:23 AM
lightnikomi.bsky.social
モブ俺が合コンでリョちゃんの隣になりメロメロになるものの三リョに敗北する話です

『思い出したくない夜の話』(3/6）
「じゃあひとりずつ自己紹介お願いしまーす！」　 　大学時代の同級生に呼ばれた〝飲み会〟は、まあいわゆる合コンってやつだった。広告代理店に就職したソイツらしく、男性陣もかなり色々なタイプが取り揃えられている。中にはプロのスポーツ選手なんかもいて、オイオイいいのかよなんて思ったけれど、相手の女の子たちの中でもひときわ可愛い子がスポーツ好きだというので、きっとその子を呼ぶためにアイツが苦労したんだろうなってことが予想できた。 「えー、すごーい！　私、プロの選手って初めて会ったかも！」 　俺の隣に座るそのスポーツ選手（名前は宮城って言うらしい）は女の子たちの視線を独占。俺だってそれなりに良い会社に勤めているけど、それが完全に霞んでしまった。まるで空気だ。そもそも俺、こういう集まりに出るタイプでもないから、なんで呼ばれてるのかもよくわかんないし。アイツのことだから俺の会社名で呼んだんだろうけど、こんな奴が隣にいたらいる意味ねえじゃん、俺。 「あはは、まあそうっすよね。あんま出会うもんじゃないし……」 　宮城とかいうその男はバスケ選手だと言う割には小柄で、でも厚みのある筋肉質な体に色黒でヤンチャそうな雰囲気。髪型もいかついし恰好もチャラいしで、普段なら絶対関わらないタイプだ。甘い香水の匂いがいかにも女ウケって感じ。これ、こんなとこ来なくても彼女のひとりやふたり絶対いるだろ。それとも特定の相手を決めずに遊んでるとか？　とにかくあんまり良い印象はない。 女性陣は相変わらず宮城選手に夢中なので、俺はひとり小さくなって皿にちょっとだけ乗ったサラミだとかを食べて、よくわからない名前の酒を飲んでいた。 「えー！？　アメリカの大学！？　超かっこいいー！」 「そんなでもないっすよ、はは」 　こういう会に慣れてるアイツが主催したってだけあって、店の雰囲気は最高だった。個室でプライベートは守られてるし、ほどほどに薄暗い照明、洒落たＢＧＭ。それになにより、料理が美味かった。レモンが乗ったアヒージョ、もっと食いたい。こうなったら飯だけでも楽しんでやろうじゃないか。テーブルの遠いところにあるのを眺めながらとれそうなタイミングを窺う。宮城選手、仕事帰りでくたびれたスーツの俺とは比べ物になんないくらいお洒落だな。アクセサリーとかつけてみようかな、俺も。そんなことを考えながらボーっとしていると、ふっと彼の視線がこっちに向いた。 「あれ、もしかしてなんかとりたい？」 「えっ？　あ、はい……」 「ゴメン、気付かなくて。食いたいのあれ？」 　呆気にとられている間に、宮城選手は「オレよそうね、貸して」と俺の手から皿をとっていってしまった。……もしかして良い人なのか？ 「タコ、多めにしといたよ」 　うわ、と思った。悪戯っぽく笑う顔。見た目にそぐわずちょっと子どもっぽいその仕草に、男の俺でもドキっとした。モテる奴ってこういうことか。 　その後もグラスが空けば「グラス開いてんじゃん。何飲みたい？　それ？　オレもそれにしよっかな」と気を遣ってくれたり、 周りにも話を振ってくれたりする様子に、俺は一瞬で虜になってしまった。 「えー、アクセとかつけたらいいじゃないっすか。オレが今日つけてるこれの店とか、結構安いけどお洒落で――」 　く、とちょっと顎を上げて首元のネックレスを見せてくれる。なんか宮城さんって、妙に色っぽいっていうかなんていうか、独特の雰囲気がある。さっき笑ったときにも思ったけど、髪型の印象で誤魔化されているだけで結構童顔だ。ふっくらした唇やまるっこい頬のライン、ハリとツヤのある肌。暗めの暖色の照明の下で艶っぽく映るそれらに、俺は女性陣よりずっと目を引かれていた。 「すみませーん！　盛り上がってるところ申し訳ないんだけど、そろそろ時間みたいなので――」 　幹事のその声に、ハッと我に返った。宮城さんもジッと見つめる俺を不思議そうに見つめ返していたが、「もう時間か」とそっちに意識をとられてくれたようだ。俺は内心ホッと胸を撫でおろす。 「二次会はカラオケでーす！　自由参加で！」 　ザワザワと解散の雰囲気の中、宮城さんは案の定、女性陣に捕まり「え、リョータさんも行きますよね？」などと言われている。俺はもう充分メシも食ったし、これ以上いても求められていないだろうからここらでお暇するとしよう、とこっそり抜け出そうとしたら、誰かに腕を掴まれた。 「帰る？」 「え、俺、っすか」 　振り返ると、そこにいたのは宮城さんだった。俺のダサすぎる反応に、彼は「それ以外に誰がいんだよ」と楽しそうに笑う。 「帰ろうと……思って、ます、けど……」
June 5, 2025 at 5:07 PM
makinohanairo.bsky.social
敢由
続きの幸せなやつ書きました。式の日の朝。
（2/2）
　……そんなこと知るかよ！ 　叫びたくなったが、出先なので声に出すこともできずに、心の中で悪態をつく。 　由衣は幼馴染だと、高明だって嫌と言うほど知っているはずだ。敢ちゃん、敢ちゃんってずっと後を追いかけてくる、妹みたいなもんだ。 　この頃は中学生になって急に身長が伸びて、少し見ないうちにどんどん変わっていっちまうが―― 　結婚だとか、愛だとか。まさかそんなこと、思ったところで言えるかよ。 　てか、思ってねぇし…… 　敢助は熱を持つ耳を誤魔化すように、伸びかけの髪を掻き回した。 　――今思えば、あの頃から敢助は由衣のことが好きだった。何ならもっと昔から。笑顔が見たい。他の誰かではなくて、できることならこの手で、守りたい――そんなことを思う女なんて、この人生でただの一人しかいなかった。 　一度、他の男の手に渡ってしまった。それでも、こうして彼女と人生を共にできる日が来たのだから、あの櫛も長い時を経て役目を果たしたと言えるのだろうか。 「敢ちゃん？　どうしたの？」 　急に押し黙ってしまった敢助に、由衣は首を傾げているが、そんな話は正直にできるわけもない。 「いや……何でもねぇ。それ、渡したの随分前だろ？　よく持ってたな」 「そうね……でも、大事にするって言ったでしょ？」 　確かに、そんなことを言ってたっけな。 　曖昧な表情をする敢助に、由衣は「肝心なことは 覚えてないんだから」と笑った。 　だって、あれは十年以上も昔の話で。そんなものを今でも使っているなんて、物持ちが良いとかいうレベルの話じゃない。きっと傷まないように、丁寧に扱っていたのだろう。 　そう思えば、無自覚だったあの頃から思いが通じ合っていたような気がして、なんだかむず痒くなる。 　照れ隠しのように、敢助は由衣を手招きした。素直に従った由衣は、ベッドに腰掛ける敢助の脚の間へと座る。その長い髪に指を通すと、敢助のそれとは違い、細く滑らかな手触りが心地よい。 「――式が終わったら、髪切ったりするのか？」 　結婚式が終わったら髪をバッサリと切った同期がいたことを思い出し、敢助は言った。 　由衣は大人しく髪を撫でられながら「うーん」と唸る。 「……敢ちゃんが短い方がいいなら、切ってもいいけど」 「あ？　お前、ずっと髪長いのが好きだろ？　切っちまっていーのかよ」 「いいの」 　記憶のある限り、髪の短い由衣など知らない。 　ふいに、いつの日かの記憶が頭の中に浮かぶ。 『由衣とお揃いだね！』 　あれは、櫛を渡した日のことだったか。誰がどう見たってお揃いには見えないだろうに、髪を結ぶようになった敢助に向かって由衣は笑ってそう言ったのだ。 「まー……長い方がいいんじゃねぇか」 「え？」 「せっかく、綺麗なんだからよ」 　記憶の中で微笑む彼女の髪はいつだって美しく、 そして今日は一層輝くに違いない。由衣の花嫁姿を想像すれば、自然と笑みが溢れた。 　急に静かになった由衣の顔を後ろから覗き込むと、彼女の頬に涙が伝っていた。敢助は慌ててそれを指で拭う。 「お、おい、なんでだよ」 「ううん……なんでもないの……ありがとう、敢ちゃん」 　想いを確かめ合ってからというもの、こうして彼女は時折涙を流す。その心の機微が敢助にはさっぱり理解できないが、由衣は毎回「悲しいわけじゃないの」と言う。 　その声に涙が混じっているのを聞くと、敢助はその唇に口付けを落とした。 「……そういうのは、式が終わってからにしろよ」 「うん……」 「式の間もぴーぴー泣くんじゃねぇぞ」 「……泣かないもん」 　そんなことを言って、結局ぼろぼろと涙をこぼすのだろうな、と敢助は思った。 　一度、この手を離してしまった。その代償は大きかった。だからこそ、彼女をもう二度と失ったりはしない。 　形なんかどうだっていいと思っていた。それでも今日、この腕の中の愛おしい存在が自分の家族になるのだ。これ以上ない幸福を噛み締めながら、敢助はもう一度彼女の髪に指を通した。
May 16, 2025 at 12:25 PM
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「私も、……そっか、わからなくて、怖くて、不安で、寂しかったのかもしれませんね。」
少し目を伏せて話す秀才ちゃん。
「今も……ちょっと、そんな感じです。というか、ずっと、そうでした。知らないフリをして、孤独から目を逸らしてた……。やっぱり、もっと、貴方と話せばよかったな……」
ふふ、と笑う秀才ちゃん。ちょっと寂しそうな笑い方。
「貴方を気にしていた。私も、きっと貴方に会いたかったんです。でも、もう会えないから、やめよう、て……」ってところでほろほろっと涙がこぼれる秀才ちゃん……
May 10, 2025 at 7:23 AM
hananien.bsky.social
（3/3）キングダムカム2（KCD2）　ヘンカポ（ハンスリー）
「オメガと包囲戦」
　「もっと食べななきゃだめだ」　ヘンリーの抑えられた静かな声。「あんたは体力を消耗してる。ずっと何も飲んでなかったし……」 　「ヘンリー？」　ハンスはやっとこれが現実だと受け入れ始めた。「ここで何してる？」 　「何って？　主人に食事を持ってきたんだ」 　「俺に……食事を与えてるのか」　ヘンリーはとぼけたが、ハンスにはそれに付き合っている体力がなかった。一日じゅう、夢とうつつを行き来しながら、抑えきれない欲望に溺れる体を一人でなぐさめ、濡れた指をシーツでぬぐって、次の発情の発作の予兆にもだえるのを繰り返していた。 　奥まで入れた指を曲げて自分自身を絶頂に落としたとき、まくらの中に叫んだ名前を彼ははっきりと自覚していた。 　「発情中のオメガに食事を与えてはいけない」　ハンスは無知な農民に教えてあげた。「それは……それは……」 　「求愛になるから？」　ヘンリーは平然と返した。「それって貴族のオメガに平民がやっちゃいけない唯一のことでしたっけ？」 　「身分は関係ない」　ハンスは言った。もっとしっかり体を起こそうとしたが、肘から下に力が入らなかった。崩れかけた姿勢をヘンリーの手が支えた。 　「身分は関係ない……」　彼はもう一度言った。「いや、関係ある……おまえは……俺の従者だ。俺の……。だから、こんなことにおまえを使っちゃいけない。俺の発情に付き合わせるのは……夢の中でだけにしないと……」 　呼気が多めの笑いにさらされ、ハンスは目を閉じた。発情の発作が近い。また体温が上がり、尻 の間が濡れてくるのを感じた。 　自分自身の香りでむせ返りそうになる。ふだんはヘンリー特製の、彼と出会う以前は城でお抱えの医者に作らせていた抑制薬でおさえていた香りが部屋に充満している。きっと廊下にももれているだろう。アルファを狂わせるこの香りを、包囲戦中の城の中で放つのがどれだけ危険で迷惑なことか、ハンスは理解している。はじめのうちは楽観的だった。薬の効き目が切れる前に援軍が来て戦いは終わると思っていた。周期的にもまだ先のはずだった。 　ストレス、不十分な食事と不規則な睡眠、先の見えない未来にぼんやりとちらつく婚約話、そういったものがすべて重なって、そして手の届く範囲に常に彼の恋焦がれるアルファがいて、気づいたときにはハンスは自分のうなじから百合とりんごの香りをかいでいた。すぐ横で靴を磨いていたヘンリーも気づいて、ぽかんと口をあけた間抜けな顔で彼を見つめていた。ハンスは自分が発情期に入ってしまったことを従者に短く宣言し、混乱を防ぐために部屋に閉じこもることを、ジシュカとピセックに伝えるように指示をした。ヘンリーはすぐに動き始めた。ハンスは自分の部屋に向かってよろよろと歩き始めた。途中で汗をかいたヘンリーが戻ってきて彼の体を支え、部屋に入って中から鍵をかけるまで確認してくれた。 　ベッドに倒れ込んですぐに服の上から体を触った。発情しながら濡れた服を脱ぐのは大変だった。 　彼は自分の世話をしてくれるアルファを強く望んだ。彼のアルファを。ハンスは自分を見つめる従者の青い目を想像しながら濡れた穴に指を入れた。 　あれから一日は経ったのだろうか。ほとんどを欲望にかすんだ夢の中で過ごした気がする。 　「キスしてもいいですか？」 　ぽつりと落とされた言葉の幼さに、ハンスは笑った。喉を鳴らして笑い続けるハンスを彼の上にいる者がゆすった。 　「笑わないで！　ハンス、お願い……答えが必要なんだ」 　思いがけない切望に満ちた声を聞いて、ハンスは目を開けた。 　夢にしては鮮明なクマのあるヘンリーが、眉を下げて彼を見ていた。 　「あんたを助けたい。薬を作ろうとしたけど、材料が集まらなかったんだ。これ以上発情を長引かせるとあんたの身が危険だ。だから……あんたの安全のために……その……」　ヘンリーは唇を噛み、目を閉じ、首を振った。そしてもう一度目を開け、しっかりとハンスの目を見すえた。「ちがう、ちがう――そうじゃない、そんな言い訳をするべきじゃない。俺はずっとこうしたかった――こんな機会があるなら――ずっと……もしも自分にこんなチャンスが与えられたら、絶対に逃すものかと思っていた――あんたに触れることを許されるなら……。俺が、あんたを必要としてるんだ」 　「おまえは俺の従者だ、ヘンリー」　ハンスは言った。ヘンリーの顔が悲しそうにゆがむのを見て、重い腕をなんとか動かし、慰めるために頬に触れた。 　「おまえをこんなことに使うのは不適切だ。俺がそうしたいからといって、欲望に付き合わせるなんて……すごく、いけないことだ。ちがうか？」 　「欲望ですか、閣下？」　ヘンリーは頬に置かれ た手を自分の手で包んだ。「どんな？」 　「おまえに抱かれたい」　ハンスは秘密を明かすようにささやいた。「おまえは強いアルファだ、ヘンリー……。俺をよく世話してくれる。俺に仕えながら、どんどん大きくなるおまえを見てきた……」 　ヘンリーの鼻孔がふくらみ、のどぼとけが上下するのが見えた。 　「いつからそんなふうに思ってたんだ？」 　「いつから？　そうだな、たぶん……」 　ハンスは、矢傷も生々しい青年が貴族たちの会議の場に現れ、年齢にふさわしくない堂々とした態度で話はじめた時のことを思い返した。 　「最初から」 　「最初って？」 　「おまえは憶えてないのか」 　「ハンス……」　ヘンリーの顔はとても近いところにあった。ハンスはまばたきをするとまつ毛で彼の鼻に触れることができた。 　「キスしてもいいですか？」 　「だめだ」 　ハンスは従者の首の後ろに腕をかけて引き寄せ、キスをした。 　 　* 　「ゆうべ塔の近くで騒いでいた猫を誰か捕まえたか？　猫でもいいから肉入りスープが食べたいぜ」　――預言者サミュエルがキャサリンとジシュカに食堂からつまみ出された時の言葉（彼はとても後悔している！）
May 1, 2025 at 12:42 PM
laibidor0995.bsky.social
やばい本当にツボなんだけどどうしよう助けて。変なツボに入ってしまった。今バイト休憩中でまた読み直して笑いこらえるのに必死。ご飯食べてるからマスクが……！

野菜たちは｢僕たち見て愛でて楽しむだけじゃなくて美味しく食べてもらえるんだって！｣と野菜としての存在価値を見出してるし、🌟はずっとなんだこれはと思っているし、敵組織もなんでこれで行けるんだと思ってるんだきっと…🎈以外みんな？？ってなってるんだ……最高に草、、
私のアイコンとヘッダーから分かるようにバカやってる🎈大好きなんですよね。キャラ崩壊は承知の上だ。もっとくれ。
April 2, 2025 at 4:01 AM
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裴溯自身が気付いてるかわからないし、駱為昭も陶沢も気付いてなかったっぽい感じはあるけど、裴溯は子供の頃からずっと親から虐待受けて育ったってことになるよね

裴溯自身周囲と上手く馴染めなかったとして、あの家で人に馴染める子供が育つわけがないだろって話だし…

母親もずっと夫から虐待を受けてたってことだろうし、その何もかもが記憶から消えないのだと身をもって知っているのだとしたら、生きているだけで凄いことだって笑って言ってる場合じゃないよ…

駱為昭、裴溯をもっと大事にしてやってくれ
そしたらきっと裴溯も大事にしてくれるからさ
裴溯が何かを返そうとしてるのが、いじらしいじゃないかよ…
March 30, 2025 at 3:17 PM
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「君の隣で笑っていられる僕ならよかったのにね」

なんて零しても
変わるわけもないのに
何を願っても
隣に君は居ないんだから

生まれ方が違って
出会い方が違ったら
僕ら　もっと　ずっと
近くで笑いあえたのかな

君の一番 面倒なところ
きっと一番 愛しいところ
「かわいくないよ」って
君は呟くんだろうね

あぁ、君に会いたいなんて
僕に言う権利なんか
無いんだけどさ
もし君と話せるなら
いったい何を伝えようか
君に惹かれた理由
君と離れる理由
答えはどっちも変わらないよ
March 12, 2025 at 4:27 PM
umizoinosakana.bsky.social
はればれと晴れ。1/2
連れ合いになる土井利。やがて家族になる土井利吉きりちゃんシリーズの1作目です。
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「はればれと晴れ」、「鰯」と記載されています。 以下は本文の内容です。 「あちらは、ご友人ですか」 　きょうだいかもしれない、と言ってから利吉は気づいた。問われた人は、からりと笑って答える。 「いえ、連れ合いです」 「それは、とんだ失礼をいたしました」 「いいえ、きょうだいって聞かれる時もあるしねぇ。もう慣れましたよ。わたしにはもったいないくらいいい人でね。ああこういう人と一緒になりたいなと何度も思わせてくれる、自慢の連れです」 「惚れ直すというやつですね」 　いや全くその通りで。面映そうに笑う。その人の連れ合いは、こちらの会話を機にもせず道ゆく人に野菜を売りさばいていく。 　休みの日のことだった。この町の近くに隠れ家の一つがあり、報告まで済ませた忍務明けに一晩休んでから町に出てきた。数日分の食糧になるものさえ手に入ればいいとうらうら歩いていた時に、その人に会った。その腕には重すぎるだろう荷物をぶら下げてふらふらしていたので、つい手を貸してしまった。そのお礼に、ちょいとばかりはまけますよと誘われて野菜売りのところに連れてこられた。それでこの会話である。 　二人の装いは同性のものに見られる。そうか、男と男、女と女でも連れ合いになれるのか。それは利吉の胸にすとんと落ちた。別に連れ合いになる資格に男と女のみと定められているわけでもあるまい。 　話を聞いた野菜売りはうちの人がお世話になってと銭をまけてくれた上におまけまでつけてくれた。こんなにお礼をいただくようなたいそうなことはしていませんよと申し出ると、先払いです よぉと返される。 「先払い？」 「そう、今度また別の人が困ってた時も兄さんが助けてくれるように。その人がお礼ができなくても、うちでもう払ってあるからトントンです。兄さんいい人そうだから、損しないように生きてかなきゃ」 　なるほど、何度でも惚れ直す連れ合いと言われるだけある。そういうことなら、ありがたくちょうだいします。季節の野菜と、おまけに貰ったのはおやつに持ってきたというみかんだ。鼻に持ってくるとふわりと馴染みのない香りがする。 　隠れ家への帰り道に水を飲む代わりにみかんを食べた。隠れ家に帰って煮炊きをする間も、もう一晩休む間にも、次の忍務に入るまでの用意の時間も、ずっと連れ合いというものを考えていた。 　利吉にとってそれは、一人しか思い描けなかった。 　氷ノ山に土井半助が帰ってきた。と言っても秋休みの間、きり丸が乱太郎の家に泊まり込みで稲刈りのアルバイトをしている数日だけである。それでも半助が山田家に帰ってくるのは久しぶりで、散々帰ってきてください母上に顔を見せてくださいと粘った利吉の方がまだ驚いている。父の方は忍術学園に仕事を残しているらしく、半助と肩違いになる可能性もある。 　山田先生より先に帰るのもなんだか気まずいなあと頬をかく半助の手には市で買ってきた鮎が下がっている。母はもう一人の息子の久しぶりの帰宅を喜んで迎え入れた。 　竹林から半助がやってくるのを見ていた利吉も一緒に家に入る。三人で火のついていない囲炉裏を囲んでしばし団欒する。 　日がやや傾いてきたところで利吉は朝からやっていた竹林の手入れを再開させた。まとめて竹売に売りつければそれなりの収入にもなる。下手に若すぎる竹を切ってしまったり、逆に古い竹を残すと叱られる。見落とした古い竹が雪の重みに負けて折れてしまったりしたらそれこそ一大事である。竹を切り倒して、枝葉を落として一箇所に集める。繰り返しているうちに日が傾いてくる。 　そろそろ帰ろうかと思った頃に竹林の向こうからおおいと利吉を呼ぶ声がする。 「土井先生」 「利吉くん、そろそろ帰っておいで」 　はい、丁度頃合いだと思っていたんです。半助は積み上がった竹の山を見て、頑張ったねえと感嘆する。町に下ろすのは私も手伝うよ。助かります。 　谷を下る時、前を歩く半助が滑ると危ないよとごく自然に利吉の手を取った。いわんや、どちらも忍者である。こんな所で少し薄暗いからといって足を滑らすはずがない。しかし利吉は取られた手をそのまま半助に預けた。目の前には、見た目よりずっと硬い髪が揺れている。 「土井先生、私ずっと考えていたことがありまして」 「うん」 「先日、と言ってももうふた月前のことなのですが、町で同性の連れ合いと商いをやっている商人に会いまして」 　先を歩いていた半助が振り返る。こちらの顔色 を伺う様子はない。ただ利吉の次の言葉を待っている。昔からこういう人だったような気がするけれど、今はもっと、先生らしいなと思う。きっと生徒の相談にもこうして耳を傾けてくれるのだろう。 「こういう生き方を選んだ時から私は誰かを連れ合いに迎えるつもりはありませんでした。苦労をかけるでしょうし、命が危険に晒されることもあるかもしれない。私のせいでそんな目に遭わせるわけにはいきません。でも、私」 　預けていた手に力を込める。互いの手のひらの皮は硬い。それだけ暗器を使いこなしている。 「私の連れ合いを選べるなら、土井先生がいいです」 　ずっとこれが言いたかったのだと、言ってから気づいた。あの商人たちに会うよりも前から、ずっと。ずっと私はこの人の隣で生きたいと願っていたのだ。 「まあ私はこれでも腕は立つ方だし、利吉くんの不安は大概取り除けるね」 「商人はこう言っていました。一緒になりたいと、何度も思わせてくれる連れ合いだと。私にとってそれはあなたなんです。半助さん」 　目が。感情を消そうとしている。だからぐっと近づいて覗き込む。なにがあなたの憂いなのだろう。その目の奥になにを隠そうとしているのだろう。私があなたにふさわしくないなら、何度でも谷底に落ちて研鑽して帰ってくる。何度でもこの身を火にくべて生まれ変わってみせる。 「利吉くんの気持ちは嬉しいけど、そいつは名前も教えてくれないようなやつだよ」 　半人前だから半助、は父がつけた名前だ。そう
February 13, 2025 at 11:51 PM
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キスメットフレンズ

この出会いはきっと　ぼくの宝物だよ ずっとこうやって歳を重ねて 嘘のような日々をつくろう？ キスメットフレンズ 生まれてからそうずっと　別々の道を歩んで “何十億分の一”は　他の誰かじゃダメなんだ もし出会わない展開があったかもなんて 考えただけで怖いよ 恋バナとか弱音も愚痴だって 全部明かせる君がいてよかった この出会いはきっと　ぼくの宝物だよ もっとずっと夢見て　くだらないことで笑おう？ 悲しみははんぶんこで　喜びは倍になって もう「友達」なんかでは　表せきれないほどの キスメットフレンズ つかみどころのない君　不思議と探っちゃうよ どこか素朴なのに歌い出すと別人に…
キスメットフレンズ
この出会いはきっと　ぼくの宝物だよ ずっとこうやって歳を重ねて 嘘のような日々をつくろう？ キスメットフレンズ 生まれてからそうずっと　別々の道を歩んで “何十億分の一”は　他の誰かじゃダメなんだ もし出会わない展開があったかもなんて 考えただけで怖いよ 恋バナとか弱音も愚痴だって 全部明かせる君がいてよかった この出会いはきっと　ぼくの宝物だよ もっとずっと夢見て　くだらないことで笑おう？ 悲しみははんぶんこで　喜びは倍になって もう「友達」なんかでは　表せきれないほどの キスメットフレンズ つかみどころのない君　不思議と探っちゃうよ どこか素朴なのに歌い出すと別人に 神様は僕と君2人が　補えるように 別々の個性をくれた 子供たちに教えてあげたいな こういう人を裏切らず信じてみて？ ダイヤモンドよりも　硬く輝く絆 気遣いとかは不要でも　思いやりは持って 良いとこは褒めあって　時には競い合ってさ そんでもっと大人になったら 思い出に乾杯しよう、ね？ 君という存在を知った時 こんなかけがえない関係に ありがとうねっ 頭の中のメモリいっぱいに 何があっても側で 口には出さないけど 「ありがとう、大好きだよ」 なんてやっぱ言えないけれど きっと伝わっているでしょう？ この出会いはきっと　ぼくの宝物だよ もっとずっと夢見て　くだらないことで笑おう？ 悲しみははんぶんこで　喜びは倍になって もう「友達」なんかでは　表せきれないほどの 来週はどこへ行こうか？ キスメットフレンズ
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February 8, 2025 at 3:19 PM
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Letters

We won't cry We won't cry いつか僕と一緒に 泣いてくれたこと 覚えてるかな？ねぇ　とても救われたんだ まっすぐなヤツだから　また強がったりして 隠さないでホントのとこ　もっとみせてほしいよ コインを投げた先の明日へ どんな未来だとしてもそれが最高の Story きっと一緒にいれば 乗り越えていける You know it “色々あったよね”って笑って言える そんな日が来るまで 転がった明日を信じて We won't cry We won't cry はじめて会った日から 変わらないよずっと 共に歩んだ日々が僕らを強くするんだ…
Letters
We won't cry We won't cry いつか僕と一緒に 泣いてくれたこと 覚えてるかな？ねぇ　とても救われたんだ まっすぐなヤツだから　また強がったりして 隠さないでホントのとこ　もっとみせてほしいよ コインを投げた先の明日へ どんな未来だとしてもそれが最高の Story きっと一緒にいれば 乗り越えていける You know it “色々あったよね”って笑って言える そんな日が来るまで 転がった明日を信じて We won't cry We won't cry はじめて会った日から 変わらないよずっと 共に歩んだ日々が僕らを強くするんだ 不器用なの知ってるから　ひとりで抱えないで I got your back, hey don't you worry　頼ってほしいよ 目には見えない絆があるって どんな結末だとしても それが与えられた Story ずっと一緒にいれば 宿命と言える I know it “これでよかったよね”って胸張って 言えるよな気がする 転がった明日にI promise We won't cry We won't cry…
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February 8, 2025 at 3:04 PM
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バカ

「バカだよね私」って今日何度目かのその台詞に 僕は毎回首を横に振るだけ 苦手なビールをあおってまで流し込んだのは やり場のない怒りと君への想い 僕ならもっと　俺ならもっと 誰よりずっと　彼よりきっと 幸せに出来るのに　ましてや泣かせたりなんて絶対にしないのに 君が好きなその人の何倍も 僕は君を想ってるんだぜ 本当のバカはここにいるだろ だから君は笑っていてよ 「あんたみたいな人の方が結婚するにはいいのかもね」 って冗談が残って 苦手なビールをまたあおって流し込んだのは なんの意味もない嬉しさの破片 君ならもっと　あなたならもっと 今よりずっと　彼よりきっと…
バカ
「バカだよね私」って今日何度目かのその台詞に 僕は毎回首を横に振るだけ 苦手なビールをあおってまで流し込んだのは やり場のない怒りと君への想い 僕ならもっと　俺ならもっと 誰よりずっと　彼よりきっと 幸せに出来るのに　ましてや泣かせたりなんて絶対にしないのに 君が好きなその人の何倍も 僕は君を想ってるんだぜ 本当のバカはここにいるだろ だから君は笑っていてよ 「あんたみたいな人の方が結婚するにはいいのかもね」 って冗談が残って 苦手なビールをまたあおって流し込んだのは なんの意味もない嬉しさの破片 君ならもっと　あなたならもっと 今よりずっと　彼よりきっと 幸せになれるのに　どうしたって僕ら　頭で恋はできないよな 君が好きなその人の何倍も 僕は君を想ってるんだぜ 御多分にもれず僕も頭じゃ 無理だとわかってるけど 僕が好きなその人は 本当は笑顔が一番似合う人で 優しい人で　素直な人で あげればきりがないほどに　ああ 君が好きなその人の何倍も 僕は君を想ってるんだぜ 本当のバカはここにいるだろ だから君は笑っていてよ 僕を見て笑ってくれよ
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January 31, 2025 at 3:12 PM
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「ずっときみのお兄ちゃん」土井先生が山田先生のところにいた時の、終わりの頃の話
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。 以下は本文の内容です。 「父上が」 　困っておいでだよ、と続けるはずだった。違う、「お父上」だ、と言い間違いに気がつく前に、利吉、手拭いと桶に冷たい水を持ってきてあげなさい。向かいから声がかかる。土間の瓶の水ではなく、井戸から汲んだ冷たい水だぞ。 　思わず伏せた顔を上げることはできない。まだ床には涙が落ちて、喉は締め付けられてうめき声すら出ない。子どもの軽い足音が、ためらった後で走り去る。急がなくちゃ、という足音だ。ごめんね利吉くん、驚いたろ、ごめんな。私もこんなつもりはなくて、もっと交渉ごとのように笑って返せるはずだった。どうか、ここに置いていただけませんか。下男でいい。 　この家に寄せてもらってすぐの頃、山田様、と呼べば、山田様ァ？　嫌そうな声が返って、せめて山田殿にしてくれと鋭い印象のある唇の片端が軽口の調子で上がった。だからきっと許されないとは思った。最近、父上はよくお帰りになるんです。嬉しい！　と喜ぶのを聞きながら、やはりそうだ、と理解した。少しずつ外に慣れさせて、外で暮らすことができるよう訓練をされている。 　買い物にいく、荷物を持つ手伝いを頼む。さほど大きな荷物でもないのに市への供を促され、気配を少し抑えるように。視線に険がある。利き手に力を入れるな。他の誰にも聞こえないほどの声で短く告げられた。はい、とも返さずに曖昧に笑んだのは指摘されたことが意識してのものではなかったからだ。人の訪れのない山奥の家に暮らして一年ほど、久しぶりに外へと出れば何を警戒すればいいか分からなくなった。だから全てが害意のように思えた。子どもの頃はそうだった。優しい手も眼差しもあった。優しかった手や眼差しが害するものに変わることもあった。女はいい、子どももいい。男の幾人、幾十人、それが向けてきたものを 覚えている。受け流してやり過ごすことを覚えていたはずだったのに、この一年でもうすっかりと何もかもわからなくなって途方に暮れた。 　忍術学園の話を聞いていた。卒業生たちにそうするように、「まともな」忍者隊を紹介されるのだろう。拾った野犬をその辺に捨てるような方ではない。だが、と内心で続く。だが、だが、私は。 　だから、どうか、と頼むつもりだった。どうかここに置いてくださいませんか。下男でいい。部屋は納屋にでも移ります、筵を敷いて寝る。どうかここに。ここで利吉くんに兵法を、忍びの技を教えて山田殿のご不在の際の警護を致します。頭を下げて、そして言う。―――どうか、殿様。どうか。 　殿様、奥方様、と言い換えて利吉くん、ではなくこう呼ぶ。―――若様、若君。想像して少し笑った。私はやり直したいんだ。殿様と奥方様と若様が焼けず、死なず、いつまでも健やかに暮らす日々を隣に控えて見守って、もう戻らないものが満たされることを手前勝手に願っている。父上、母上、と呼ぶ身分ではなくなり、だからこそ見上げて仰いで美しいものとして眺められる。私のものではない、私が守るもの。今の私になら守れるものだ。 　できる、と思っていた。けれど、父上、と誤って声にした瞬間に己でも律せないものが溢れた。泣くなど、どれほどしていないだろう。泣けば小突かれる、蹴られる、嘲笑される。取るに足りないものと思わせてはいけない。けれど武張れば逆に煽ることとなる、穏やかに笑むだけでいい。曖昧に笑うだけでいい。そんな上面のやり方をいつの間にか身につけていたはずだった。 　しかしまだ涙は止まらずに、どうにか喉から声を絞り出す。申し訳ございません。 「泣くほどいやか？　悪い話ではない。あー、私は元 々はそのつもりではなかったが」 「私が勧めたのです。教師に向いているみたい。あなたより良い先生になるかもしれませんね、と」 　柔らかな優しい声が言う。昼前に呼ばれて、改まった顔で言われた。どうだ、忍術学園で教師にならんか。いやです！　と子どもの声が抗議する。お兄ちゃんも父上みたいに忍術学園に行っちゃったらいやです！　だから宥めようと思って笑顔を向けた。利吉くん、お父上が困っておいでだよ。それを言い間違えた。―――父上が。 　父上、母上。心の中で呼ぶ。火の匂い、血の匂い、焼ける匂い、土の匂い、泥の匂い、最後の記憶がそれに結びついている。生きなさいと逃がされた。下男でいいのです、私はもう何もいりません、この暮らしだけがあればいい。満たされている、脅かすものはもうない。どうか、と床に頭を擦り付けるはずだった。けれど心は穏やかなばかりではない場所へと引き戻される。 「職員は給与の他に朝食と昼食が出る」 「……こどもたちも」 　うん？　上がる語尾に促される。 「子どもたちも、飢えることなく食べられますか」 「食えるねえ、じゃんじゃん食っとる。米をおかわりして食う。お残しはゆるしまへん、だ」 　誰かの真似なのだろう、変えられた声音に誰かを知らずとも笑う。そこに親しみがあったからなのだろう。 「教えを請えば代償を求められますか」 「生徒は授業料を払ってんだ、それ以外にはない」 　文字は読めるのか？　よし、難しい本を一緒に読もうか。ほら、漢字を教えてやろう。拾ってきた書き付けを眺めていたら肩を抱かれた。しばらくは何もなく教えてくれたが、ある宵に酒の匂いと共に顔を覗き込まれた。―――分かってんだろ？ 「殴られることありますか。打擲され、取るに足りな いものと扱われることは」 「叱ることくらいはある。だが、それだけだ。打擲なあ、そんなことがあれば私たちがそいつを袋叩きにするよ」 　涙はようやくおさまってきた。息を吐く。忍術学園は六年制で一年に組は三つ、外の子どもたちと比べて数はどれほど少ないことだろう。けれど、少なくともその子どもたちは守られ、きっと愛されて育つ。殴らない、奪わない手の大人になる。 　ほら、これで明日の分も足りるかな。領内つつがなく通り過ぎられますよう。端近まで出て門付へ手ずから米と心付けを渡した父上と母上のように、何があってもどんなことをされても、形ばかりでもいい。せめてすこしでも善きものでありたいと願い、汚泥の中に歯を食いしばって過ごしたのは、きっとこうあるためだったのだ。 　わたしは善きものでありたい。 「山田殿」 　顔を上げる。座り直し、改めて頭を下げる。お話、謹んでお受けいたします。うん、と満足げに返った。それがいいだろう。なあ、そうだよな。ええ、そうですとも。 「お兄ちゃん！」 　お水、おみずと手拭い。たたた、と急いで駆け寄る足音と共に顔を覗き込まれた。利吉くん、と笑めば緊張にこわばっていた顔が緩む。 「ごめんね、私も忍術学園の先生になるよ」 　いやです！　頬をふくらませてむくれた顔に最後の涙の粒が落ちて、ごめんね。抱きしめて心の中で言う。君を若様と呼ばないことにした。だから私は下男にはならないし、ずっときみのお兄ちゃんだよ。ごめんね、利吉くん。きみを大切にさせてくれてありがとう。
January 22, 2025 at 3:47 AM
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綺麗事

綺麗事を吐くその口が　君の事を苦しめるから 同じことばかりの日々に ああ　意味を求めて寄り添い合うの ひしめき合うカラーフィルターの奥で笑ってる 散々恨んだ狡猾さが 今、自分なりの生き方なのに 潔癖な思考に縛られたままで 強がるくせに唇を噛む 分かってない素振りをしてばかり 綺麗事を吐くその口が嫌いだから歌を歌うんだ 諦めているその顔が僕の事を曇らせる こんな声だって伝わらなくて もっと完璧な言葉を紡ぎたくて ずっと欲張って きっと間違えて 今日も転げ落ちる 不完全な朝 本音も言えない日常にはただ「理想なんて」と嘲け笑う声 言い返す言葉も選べずに　ただ増していく痛み…
綺麗事
綺麗事を吐くその口が　君の事を苦しめるから 同じことばかりの日々に ああ　意味を求めて寄り添い合うの ひしめき合うカラーフィルターの奥で笑ってる 散々恨んだ狡猾さが 今、自分なりの生き方なのに 潔癖な思考に縛られたままで 強がるくせに唇を噛む 分かってない素振りをしてばかり 綺麗事を吐くその口が嫌いだから歌を歌うんだ 諦めているその顔が僕の事を曇らせる こんな声だって伝わらなくて もっと完璧な言葉を紡ぎたくて ずっと欲張って きっと間違えて 今日も転げ落ちる 不完全な朝 本音も言えない日常にはただ「理想なんて」と嘲け笑う声 言い返す言葉も選べずに　ただ増していく痛み 虚勢を張る衝動で隠して　綺麗なままで生きてたいのか 諦めを塗り重ねて　「本当」が見えなくなってしまうんだ 綺麗事を吐くその口が 綺麗事を吐くその口が 綺麗事を吐くその口が嫌いだから歌を歌うんだ 諦めているその顔が君の事を苦しめる こんな声だって伝わらなくて もっと完璧な言葉を紡ぎたくて ずっと欲張って きっと間違えて それでも歌おう 不完全だから
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January 21, 2025 at 5:04 PM
beth-luv-eve.bsky.social
#君があまりにも優しく笑うからの続きをみんながどう書くのか見てみたい

君があまりにも優しく笑うから、本当は痛いのなんて嘘なんじゃないかって、一瞬だけ思ってしまった。
でも本当は知っている。君は優しい笑顔なんてもう取れなくて、どちらかというと力無く頬を緩めるばかりな事。だってそうだ、元気な時の君はもっとはつらつと、楽しそうに笑うはずだから。
「大丈夫だよ」なんて口では強がっているが、きっと本当はずっと辛かったのだろう。孤独に耐え、苦痛に耐え、どれほどの長い時間を過ごしたのだろう。

夜間診療、開いてて本当に良かったね。
しばらくゆっくり休んで、今度こそ腸炎完治させようね。
January 9, 2025 at 3:10 PM
tsukimi-punk-repo.bsky.social
個人的めちゃツボったのが。
客＼京都来てー／
客＼神戸も来てー／
細「おま！神戸は、神戸が大阪来りゃ良いじゃん！俺たち車で何時間かけて来てると思ってるんだよ…！！」
客＼滋賀はー？／
細「滋賀は、UVERworldがいるな！」
神戸が来い！とか、ウーバーとか、いちいち返しがオモロくて、ずっと笑ってた。
でも、未だにクッソ安いチケ代で、色々削って大阪まで来てくれてるの、ホンマありがとうしかない！！
もっとチケ代上げてくれて良いのに…。新幹線のグリーン車で来てくれて良いのに…。でも、きっとそんなバンドマンになりたくないんやろうな…。
January 8, 2025 at 4:01 PM
hpink.bsky.social
（2/2）
　カブルーが言ったのと同時に、窓の外に大きな花火が上がる。年始を喜ぶ歓声も聞こえる。悪食王万歳、ライオス王万歳、メリニ国に栄光あれ！ 　私はワインに口をつける前に、それを聞きながら、じっと青い目の男を眺める。その目に、自分の不格好な姿が映っていることを確認して、そしてとてつもなく嬉しくなる。 「なぁ、カブルー、乾杯は後にしよう。それよりももっと楽しいことをしよう」 「楽しいことって？」 「分かっているくせに。さぁ、グラスを寄越すんだ」 　私はそう言って、カブルーからワインを奪って、彼をベッドに引きずり込む。窓の外では、つい最近ヤアドが楽師に作らせた、ライオスを讃える歌が流れている。朗々と歌う歌手の声はおごそかだったが、でも、この部屋からはどこか遠いもののように思えた。だって王が主催する宴に、宰相補佐がいないとなっては格好がつかないのに、カブルーはそれを捨てて私のところにやって来たのだから。宰相補佐のカブルーではなく、ただの私の男としてのカブルーとなって。 「どうして笑ってるんです？」 「さぁ？　気になるんならお前が確かめるといい」 　私は笑って、彼の唇を噛む。するとカブルーは仕方ないなと口元をほころばせて、私の身体に手を這わせ始めた。熱っぽい手のひらは、私を簡単に追い詰める。まるで酔っ払っているみたいだ。すごく身体の芯が熱くて、火照っていて、どうしようもなくなっている。 「ミスルンさん……」 　青い瞳が細められ、彼は唇を重ねてくる。そし て言葉にはしないで、熱っぽく私に愛を注ぐ。 　こういう時、カブルーはよく約束をねだった。俺が死ぬまででいいから一緒にいてくださいって、そんなふうに、どこか卑屈になって、私に愛を求めた。確かにカブルーはきっと私を置いてゆく。そして私は彼を恨むだろうが、きっと、いや絶対に離れられやしないんだろう。どれだけの苦しみが待っていたとしても、私はそれよりもずっと、この熱病みたいな愛にうなされていたいから。 「今年も側にいてくださいね。来年も、再来年も、ずっとずっと」 「さぁ、私も忙しいからな」 「意地悪言わないでったら」 　私たちはくすくす笑い合いながら、庭園の楽団の音楽に身を任せつつ唇を重ねる。ずっと側にいてくれか。そんなふうに望まれて、嬉しいなんて私も大概だな。いつか終わることが分かっていて、それでもずっと年下のこの男に求められることが嬉しいだなんて、私も甘い男だな。甘ったるくて、歯が溶けてしまいそうだ。 　でも、カブルーの口付けは言葉より甘く、私をとろけさせていった。彼の言葉一つで、私は動けなくなってしまった。 　なぁ、カブルー。私はお前が望まなくなっても、お前の側にいたいと思うよ。お前が他の誰かに奪われることがあっても、見守っていたい。この世界の全てから、お前を守ってやりたい。お前はそんなものを望まないだろうが、私にだって、故郷を捨てる覚悟はあるんだ。 　私は愛しい男の唇を求めて、彼を受け入れる。年が明けて、一番に見たのがこの男であることを、一番にキスをしたのがこの男であることを、私は 心から喜ぶ。カブルー、カブルーと名前を呼びながら、ミスルンさんとささやく、追い詰められて熱っぽい声を聞きながら、身体を重ねていることを喜び、ずっとお前の側にいるよと、私は彼の耳元につぶやく。カブルーはそれに笑い、私を抱きしめる。私はそれに、彼にしがみつく。 　ずっと一緒にいたい。そう心から思いながら、私はカブルーの背中に手をやって、口付けを続ける。年明け早々馬鹿げているとは思うけれど、今日はお祭り騒ぎだ。ちょっとくらい宰相補佐が姿を消したって、きっと皆は大目に見てくれるだろう。この国にとって大切な男が私だけのものになったって、きっと。
December 31, 2024 at 2:25 AM
petora3peto.bsky.social
そんな俺に目を見開いた後、嬉しそうに笑ってくれたカブ/ルーの、再会後初めて俺にむけてくれた笑顔を、きっと俺は生涯忘れる事はないと思う。

おしまい。

長いんじゃ！読んでくださりありがとうございました！！
きっとこの後チル達に「お前らはやる事がいちいち極端なんだよ！！！！」とか怒られるんだと思います。
後、ライと別れた後恋人がいたってカブは言ってましたが普通に嘘です。ずっとメソ…とライに未練たらたら過ぎて新しい恋とか無理でした。よかったねカブ。
結婚後もカブはライに「あんたはもっと俺を好きになれ！！独占欲みせろ！！」ってねだります。数年かけてカブの面倒臭い独占欲とか執着心とか理解→
December 31, 2024 at 1:10 AM