#ノート小説部3日執筆
[#ノート小説部3日執筆 『一般道のストレット』]

前略。高速道路は今日も平和である。
「……渋滞っスかね」
「そのようです」
どうやら先は平和ではないらしい。通行規制も見える。
近くに合流があるため、この辺はよく混む地帯だ。ここで規制があったとなると、到着はかなり遅れるだろう。

カーナビを一瞥する。相当長い距離の渋滞のようだ。
「これなら、一旦降りた方がいいでしょうね」
「えっ!?道路の上っスけど……」
しまった。どうやら一緒に乗っている彼は、車に乗り慣れてないらしい。この言い方だと語弊がある。
「一般道に出るんですよ」
私はこういう言い換えが苦手だ。これが良いのかは分からない。 […]
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April 3, 2025 at 3:13 PM
[#ノート小説部3日執筆 『近くて遠い水面の歌は』]

合成半獣を有する研究室の場合、特殊な施設を用意する必要がある。
例えを上げるなら、飛空系なら高い天井、水生系ならプールといった具合だ。
「――別に、毎日水を浴びていろというわけではない。お前が使いたいのなら使えばいいと、それだけだ」
研究部長から説明を受けた海棘蛇(かいきょくじゃ)の合成半獣、研究コード:ルルイェは、ただぼんやりと水面を眺めた。

奥行きが軽く10mはあるほどの、やや大きなプールには、なみなみと水が張られている。
仕切りもなく自室から続いているその水場からは、独特の塩素臭が漂ってきている。 […]
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July 10, 2025 at 2:54 PM
[#ノート小説部3日執筆 『ネコを見に行こう』]

「あー、ネコ見に行きてぇ」
何を言うのだこの同居人は。私というものがいながら。自らに指を向け、ヤツに近付く。
「いや、ネコの合成半獣じゃなくて」
なんということだ。まさか我らが神をお忘れというのか、この同居人は。
四つ足の“我らが神”をそっと抱っこし、目の前に差し出す。
「いや、おネコ様じゃなくて」

「じゃあ何だというのだ」
あまりにも分からない。倉庫に行って、ネコ車を取ってくるしかないか?
そう思案していると、同居人はスマホ画面をこちらに向けた。
「“ネコ”って、こいつ。ファミレスの配膳ロボらしいんだ」 […]
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April 10, 2025 at 10:24 AM
[#ノート小説部3日執筆 『潮風、呼び声、サメの声』]

「漣里(れんり)せんせー、こんばんは!」
一人の子供が埠頭の向こうに手を振った。
「……はい、こんばんは」
その男性は静かに、子供に手を振り返した。船の少女でもないのに、悠々と水面に立ち、陸地を見つめている。

この追江(おいえ)港には、不思議な能力を持った者が多数存在している。彼、塩飽(しわく) 漣里もその一人だ。
『海を渡る』能力を持った彼は、その文字通り、海を歩いてやってくる。

「せんせー!おねがいごとがあるの!」
子供は埠頭の端まで行って、その男に呼びかけた。
「はい、どういったお願い事ですか?」 […]
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June 8, 2025 at 10:29 AM
[遅刻、申し訳ありません!【#ノート小説部3日執筆 】「オーロラ、犬の遠吠え、そしてサルミアッキ」(お題:サルミアッキ)]

***

そう遠くない未来。ヘルシンキ郊外にて。

サルミアッキを口に含むと、犬たちの声がよみがえる。 […]

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October 20, 2024 at 7:28 PM
[#ノート小説部3日執筆 『$[ruby アマい奴ら Treat]に$[ruby 報復 Trick]を。』]

「……ハロウィンってもしかして、言うほど楽しくない感じ?」
「そりゃあお前、警備の仕事なんて、9割退屈なんだから仕方ないだろ」 […]
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October 31, 2024 at 3:21 PM
[#ノート小説部3日執筆 『ペット……ではない。たぶん。』]

「ただいまぁ〜!みーこ、おるかぇー?」
電気のスイッチを入れながら、奥の暗い部屋に呼びかける。
するとそいつが、音もせずぬるりとやってくる。
部屋の影に馴染むような黒い肌、それ以上に黒くつややかな髪。金色の瞳だけが、その場所に浮かんでいる。
「ん、おかえり」
私が“みーこ”と呼ぶその黒猫は、それだけ言って、また部屋の暗闇に戻っていった。
「やー、相変わらずクールじゃの……」
そういうものだ。

ネコの合成半獣は、元の生き物よろしく気まぐれだ。やりたいことだけやって、他の時間は寝るか遊ぶかしかない。 […]
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July 24, 2025 at 1:33 PM
[#ノート小説部3日執筆 「……で、このどんぐり、どこから取ってきたんですか?」]

_前略、研究所の職員たちで広い公園に来た。
被験体ちゃんたちのレクリエーションのため、落ち葉や木の実を拾うのだ。やっぱり秋といったら、落ち葉や木の実でハンドメイドをやるものだ。 […]
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November 3, 2024 at 3:11 PM
#あなたの評判良かった4選がみたい

ノート小説部3日執筆から、リアクション多くいただいたものっ​:itumo_arigatou:​​:blobcat_yay:​

**『わたしがなんでリアクションシューターをやっているかって? それはね……』**

※リンク先、Fediverseネタの一種の二次創作 […]
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October 6, 2024 at 10:37 AM
[#ノート小説部3日執筆 「科学の発展に、犠牲はつきものです。違いますか?」(お題:マッドサイエンティスト)]

はい。インタビューですね。
ワタクシ、八雲製薬██研究室長の██ ██と申します。よろしくお願いします。

ええと、どこから話せばいいでしょうか。 […]
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December 5, 2024 at 4:12 PM
[#ノート小説部3日執筆 「蛇と狐のリトルネッロ」]

_蛇の恨みは長く続く。たとえそれが何年、何十年と前であっても。そしてその恨みは、草の根を伝い、同胞たちに広がっていく。時が経てば経つほどに、その恨みは強く、濃くなっていく。
だからこそ、早いうちに対処する必要がある。そうすれば、怪我の一つ程度で済むからだ。

「……なわけで、菓子折り持ってくんだけどさ。なに持っていくべき?」
蛇は訊ねた。世間知らずの箱入り息子だったので、こういうのは他者に訊く癖がある。
「柿の種」
狐は答えた。冗談かもしれないし、菓子折りの“菓子”の部分しか聞いていないからかもしれない。 […]
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April 30, 2025 at 4:04 PM
[#ノート小説部3日執筆 『“頭痛薬”の話』]

_一般に“頭痛薬”と言えば、頭痛を鎮めてくれる薬のことを言う。
そういうものの大半は、正式な名を鎮痛薬としており、頭に限らず色々な部位の痛みに作用するものである。

さて問題は、いま私が飲んだこの薬だ。ラベルにはたしかに“頭痛薬”と書いてある。しかし、飲めども頭痛が治まるわけでは無い。
むしろ逆で、飲むと頭痛が起こる。一回に飲める数は最大三錠。
適量を飲めば、我慢できる程度の頭痛を引き起こすだけの薬である。しっかり飲むと、高熱が出たときぐらいの激痛がじわじわ続く。 […]
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May 8, 2025 at 2:31 AM
[#ノート小説部3日執筆 『ポイント・ネモより、愛を込めて』]

_遠い海。静かな水面。
ここはポイント・ネモ。……を模した心象空間。

誰一人いない空間で、空間の主、留里洋平は、深い水底で目を開けた。
「……あぁ、そういうこともあるよな」
軽い諦めの言葉を吐きながら、洋平はゆっくりと身体を起こした。青い長髪が、海の中に広がって、波に溶けていくような感覚さえある。

本来、心象空間に入ることはごく稀だ。 […]
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July 6, 2025 at 2:01 PM
[#ノート小説部3日執筆 『ちょっとDancing〜!』]

「え〜っ!?今年は男子も踊るのかァ!?」
前略。そろそろ体育祭の時期だ。

昨今の男女平等を鑑みてなのか、体育祭の演目も変わりつつある。今年は男子と女子とで、違うダンスをするらしい。
どちらもダンスであることには変わらないが、女子は毎年行っているので、統率感がある。しかし男子はというと……。

「振り付けなんて覚えられやしねーよ……」
「これ恥ずぃよな……マジでやんなきゃダメ?」
「おみずおいしい」
そもそもやる気がない。仕方がないことではあるが。

「ホラ、覚えるために動け〜。最初からやるぞ〜」 […]
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June 15, 2025 at 12:31 PM
[#ノート小説部3日執筆 『水蛇のエレゲイア』]

前略。ヒマである。
病み上がりというのもあるが、兄さんたち(役職名)は一向に仕事を回してくれない。臨時の仕事は、こういう時に限って来ない。本職の方は、祝日だからそもそも営業もしてない。
だからといって家に帰ると、留守番の妹たちから、やんわり『それならどこかで遊んでこい』アピールを受けるので、肩身が狭い。 […]
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March 27, 2025 at 9:54 AM
[#ノート小説部3日執筆 『狐は飛んでいく』]

_こやゃ、こんこや、こんこんこ。
山道を越えて、どんどん上へ。上り坂を登りきったら、もっと上へ。峠に来たら、次の峠へ。

富士の山がなんだって?新高(にいたか)、次高(つぐたか)なんだって?海の向こうの鋭兵霊峰(エベレスト)だって、この山には及ばない。
もっともっと高い山を、空より高い山を行く。ひーこら言ってられないよ。夜の時間は短いんだ。

もっと上へ、空より上へ。
青く澄んだ空の色が、だんだん黒く、深くなる。呼吸なんてしてらんないよ。ぼくらには時間がないんだ。

辿り着いた。山頂だ。目下は雲が、ふわふわ浮いている。 […]
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April 23, 2025 at 4:24 PM
[#ノート小説部3日執筆 「世間話をしよう。アトランティスの遺跡と、ついでに、ぼくのことを」]

_前略。ここはアトランティス遺跡。
かつては栄光あった王国。今は水底に沈む遺骸。
そんな遺跡は、現代で水の上へと引き揚げられ、跡地すべてが博物館となっている。

「まったく、夢のない話だよ。これだからニンゲンってヤツは」
パイプに火をつけながら、ダイアリングアリゲーターの合成半獣は零した。
少女と言うにはやや憚られる年齢だが、好奇心のみで行動する様は少女と言って過言ではない。
※ダイアリングアリゲーター 大型のワニによく似た生物。恐竜を再生する実験の過程で、遺伝子合成によって生み出された。 […]
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July 31, 2025 at 9:55 AM
[「何が彼の者を狂わせたか」 #ノート小説部3日執筆 お題:マッドサイエンティスト #七神剣の森 スピンオフ :seibun_hyouji:男女CP、死にまつわる表現]

「……君が俺とずっと生きてくれるなら、何でも良かったんだ」
貴方は最期までそう泣き言を漏らしていましたね。 […]
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December 5, 2024 at 8:49 AM
[#ノート小説部3日執筆 『メジロの脱走、てっこっこ』]

てっこ、てっこ、てっこっこ。メジロは元気にてっこっこ。

メジロはね、お花を吸いにきたの。
お散歩のときに、よさそうな梅の木を見つけたの。先生たちには内緒なのよ? […]
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February 20, 2025 at 7:54 AM
[#ノート小説部3日執筆 「いろいろと、変わっていくもの。です。」]

……暇、です。
もう10時です。そろそろお腹が空く、です。おやつは食べました。さすがに菓子パンでお腹は膨れませんね。 […]
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November 28, 2024 at 6:09 AM
[「小さき者の視座」 #ノート小説部3日執筆 お題:鯨]

──深い。
ずっと、潜っている。
何も見えない。
俺は恐らく、この生き物自体じゃない。
この生き物の中に捕らえられた何かだ。
何か? 俺、何だったっけ。
きっと小さな、取るに足らない、餌のようなもの。 […]
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December 7, 2024 at 11:51 PM
[#ノート小説部3日執筆 「新人いびりのタランテラ」]

_[注意:90日以上経過したデータです!_
10/03 ██:██ 貸出
10/06 ██:██ 返却

11/30 ██:██ 処分]

「……間に合わなかったか」
欲しい資料があったが、だいぶ前に処分されていたらしい。いや、予約も下調べもしていなかった自分が悪いのだけど。

どうしても仕事で必要になってしまった。だが執務室の棚には無かった。だから、特殊貯蔵庫ならあるかと思ったんだ。

古い記録は処分されてしまう。それ自体は諸行無常というか、仕方ないことだ。ただ、古い情報にしか存在しないデータというものもあって。 […]
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April 17, 2025 at 3:02 PM
[#ノート小説部3日執筆 『道の無い者より、敬礼を』※人の死に関する描写あり]

_大晦日、暮れ過ぎ。北の街である雪見神楽は、その名に相応しい大雪だ。そんな中、オレは現世最後の恩人への、最期の運び物を終わらせた。 […]
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January 5, 2025 at 7:12 AM
[#ノート小説部3日執筆 「日常とは、甘く苦いもの。」]

今日も事務局は平和だ。少なくともこの部屋内だけは。そしてこういうときは、だいたい仕事がやってくる。
こんな風に。
「――ごめんね、アイくん。今空いてるかな」 […]
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October 20, 2024 at 2:03 PM
[#ノート小説部3日執筆 『関奈義大学 異種共存史学の授業ログより抜粋』]

ごきげんよう諸君。授業を始めよう。
まあ、余談を最初に置くのは変わらないが。安心してくれ、今回は短いぞ。

まず、人間は、常に別の生き物と共に生きている。諸君の身近なものであれば、ペットであるとかだろうな。 […]
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March 6, 2025 at 7:01 AM