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龍蛇かまぼこは多分煮込むものではない。
龍蛇かまぼこは多分煮込むものではない。
清々した気持ちと、何となしに寂しい気持ち。後者は姉の結婚が決まった時と似ているだろうか。
「あ。いつ返信来てたんだ?」
実家の年末は時間が間延びして、のんびりし過ぎかもしれない。
スマホを確認した江澄は結局例年と変わらなそうなスケジュールに頬を緩ませた。
俺が合わせると言ったのに。
あの人はやはり大人だ。
#曦澄こたつおでん
清々した気持ちと、何となしに寂しい気持ち。後者は姉の結婚が決まった時と似ているだろうか。
「あ。いつ返信来てたんだ?」
実家の年末は時間が間延びして、のんびりし過ぎかもしれない。
スマホを確認した江澄は結局例年と変わらなそうなスケジュールに頬を緩ませた。
俺が合わせると言ったのに。
あの人はやはり大人だ。
#曦澄こたつおでん
前に書いたまた別の話と辻褄合わない。いやそっちを変える手もあるけど。
前に書いたまた別の話と辻褄合わない。いやそっちを変える手もあるけど。
大学生になり、後学の為と叔父の手伝いをするようになった曦臣は年末の雑務の合間に休憩がてら江澄にメッセージを送った。
クリスマスイブの日の約束を社交辞令か何かだと思われていたら困る。それに、もたもたしていたらせっかくの冬が終わってしまう。
あの日ふたりでそうしたように、こたつでみかんを食べるのだ。
今度は【スーパーの特売のみかん】を。
首尾よく江澄からの返信は曦臣を喜ばせるものだった。
#曦澄こたつおでん
大学生になり、後学の為と叔父の手伝いをするようになった曦臣は年末の雑務の合間に休憩がてら江澄にメッセージを送った。
クリスマスイブの日の約束を社交辞令か何かだと思われていたら困る。それに、もたもたしていたらせっかくの冬が終わってしまう。
あの日ふたりでそうしたように、こたつでみかんを食べるのだ。
今度は【スーパーの特売のみかん】を。
首尾よく江澄からの返信は曦臣を喜ばせるものだった。
#曦澄こたつおでん
まだ、いつとは決まっていない約束の為だろう。江澄より忙しいはずの藍曦臣からのメッセージ。
家具店や家電店の初売り状況などきっと知らないだろうから代わりに調べておいてやってもいい。どうせ暇なのだ。
『しばらく実家です。バイトが入っている日以外はあなたの都合に合わせてもらって構わないです』
そう返信するとすぐにまた『ありがとう』と返って来た。
今頃藍家は一族が集まっているのだろう。酒を飲むのを禁じている一族の宴会とはどんなものなのだろう。
まだ酒を飲んでいい年齢ではないが将来酒豪になる予定の江澄は、自分はそんな宴席は御免だなと肩を竦めた。
#曦澄こたつおでん
まだ、いつとは決まっていない約束の為だろう。江澄より忙しいはずの藍曦臣からのメッセージ。
家具店や家電店の初売り状況などきっと知らないだろうから代わりに調べておいてやってもいい。どうせ暇なのだ。
『しばらく実家です。バイトが入っている日以外はあなたの都合に合わせてもらって構わないです』
そう返信するとすぐにまた『ありがとう』と返って来た。
今頃藍家は一族が集まっているのだろう。酒を飲むのを禁じている一族の宴会とはどんなものなのだろう。
まだ酒を飲んでいい年齢ではないが将来酒豪になる予定の江澄は、自分はそんな宴席は御免だなと肩を竦めた。
#曦澄こたつおでん
introduction
嫌な予感がした。
少しだけ風の強い日。日の高いうちに別れた李蓮花は特に変わった様子もなく狐狸精に僅かな肉を買って帰るのだと言っていた。
まだ未解決の事件に関わっていてしばらくはこの辺りに滞在しているはずだ。
しかし何度か黙って姿を消されている方多病にしてみれば李蓮花に対する信用などこの点に関して無に等しい。だが、強風に煽られて胸がざわつくのはそれとは違う。
理由などわからないし結果何もないのならそれでいい。否。何もない方がいい。
外套を羽織ると客棧を出た。次第に足が速まるのは仕方がないだろう。
あの、飄々として本心を見せない李蓮花の顔が浮かび、方多病を急かす。
introduction
嫌な予感がした。
少しだけ風の強い日。日の高いうちに別れた李蓮花は特に変わった様子もなく狐狸精に僅かな肉を買って帰るのだと言っていた。
まだ未解決の事件に関わっていてしばらくはこの辺りに滞在しているはずだ。
しかし何度か黙って姿を消されている方多病にしてみれば李蓮花に対する信用などこの点に関して無に等しい。だが、強風に煽られて胸がざわつくのはそれとは違う。
理由などわからないし結果何もないのならそれでいい。否。何もない方がいい。
外套を羽織ると客棧を出た。次第に足が速まるのは仕方がないだろう。
あの、飄々として本心を見せない李蓮花の顔が浮かび、方多病を急かす。
高校までと打ち込んだ剣道の防具も竹刀も、部屋の隅に鎮座している。運動神経を買われて他のスポーツの助っ人に駆り出されることはあるが久しぶりに竹刀を素振りすれば普段使わない筋肉が早速疲労を訴えた。
少しも埃っぽくないのは毎日窓を開け、掃除されているからだろう。今更ながら家族の有り難みを実感した。
実家に帰ったからと言って、地元で友だちと会う約束がある訳でもなく、ただ恒例だからという理由で初詣には行こうと思っていた。
有名なところでなくていい。すぐ近くの神社だって、大晦日と三賀日はなかなかの賑わいを見せるのだ。
#曦澄こたつおでん
高校までと打ち込んだ剣道の防具も竹刀も、部屋の隅に鎮座している。運動神経を買われて他のスポーツの助っ人に駆り出されることはあるが久しぶりに竹刀を素振りすれば普段使わない筋肉が早速疲労を訴えた。
少しも埃っぽくないのは毎日窓を開け、掃除されているからだろう。今更ながら家族の有り難みを実感した。
実家に帰ったからと言って、地元で友だちと会う約束がある訳でもなく、ただ恒例だからという理由で初詣には行こうと思っていた。
有名なところでなくていい。すぐ近くの神社だって、大晦日と三賀日はなかなかの賑わいを見せるのだ。
#曦澄こたつおでん
南京町の方は一回だけ行ったことあるけどあんまり見て歩けなかった。
南京町の方は一回だけ行ったことあるけどあんまり見て歩けなかった。
きっと実家を出て初めての冬だから寂しさがあるだけ。ちょっとしたホームシックのようなものだ。
大学とバイトは忙しくてそんな感傷に浸る時間もない。借りた部屋に帰った時に、自分で灯りを点ける瞬間だけが、少し苦手だ。
しばらく不在になるからと冷蔵庫もほぼ空だった。
早めに実家に帰るかなあと、江澄はカップ麺の為にお湯を沸かしながらぼんやりと思った。
そう言えは新年の売り出しに家電もあるからこたつを見に行くのもいいかもしれない。藍曦臣との約束を思い出して、ひとりで笑う。
あの人はカップ麺なんて、食べたことなさそうだ。
#曦澄こたつおでん
きっと実家を出て初めての冬だから寂しさがあるだけ。ちょっとしたホームシックのようなものだ。
大学とバイトは忙しくてそんな感傷に浸る時間もない。借りた部屋に帰った時に、自分で灯りを点ける瞬間だけが、少し苦手だ。
しばらく不在になるからと冷蔵庫もほぼ空だった。
早めに実家に帰るかなあと、江澄はカップ麺の為にお湯を沸かしながらぼんやりと思った。
そう言えは新年の売り出しに家電もあるからこたつを見に行くのもいいかもしれない。藍曦臣との約束を思い出して、ひとりで笑う。
あの人はカップ麺なんて、食べたことなさそうだ。
#曦澄こたつおでん
ただふと、同居とは言えすぐ藍忘機のところへ行ってしまう(いちゃつくなら家には来るなと言ったのは江澄だ)魏無羨を送り出した後、二人分のつもりで作った大量のおでんを前に他に誰かこれを一緒に食べられる相手がいたらな、と思うのだ。
そんな時に、何故か自分を気遣って訪ねて来るようになったのが藍曦臣だった。
つい先日、正に大量のおでんを仕込んだ後にも彼はやって来たのだがその時は一緒に食べることに思い至らなかった。
手土産の高級みかんを向かい合わせで食べながらクリスマスイブを過ごすことになったのだった。
#曦澄こたつおでん
ただふと、同居とは言えすぐ藍忘機のところへ行ってしまう(いちゃつくなら家には来るなと言ったのは江澄だ)魏無羨を送り出した後、二人分のつもりで作った大量のおでんを前に他に誰かこれを一緒に食べられる相手がいたらな、と思うのだ。
そんな時に、何故か自分を気遣って訪ねて来るようになったのが藍曦臣だった。
つい先日、正に大量のおでんを仕込んだ後にも彼はやって来たのだがその時は一緒に食べることに思い至らなかった。
手土産の高級みかんを向かい合わせで食べながらクリスマスイブを過ごすことになったのだった。
#曦澄こたつおでん
とは言え。
この縁も細く頼りないものになった実感はあった。少なくとも、江澄には。
悪態吐きつつ、ずっと一緒にいたけれどお互いいつかは大人になる。そのことにほんの少し寂しさを覚えているなんて、目の前で藍忘機と通話している魏無羨に絶対に言う訳はないけれど。
(俺も恋人でも出来れば)
なんて、張り合ってどうする。
#曦澄こたつおでん
とは言え。
この縁も細く頼りないものになった実感はあった。少なくとも、江澄には。
悪態吐きつつ、ずっと一緒にいたけれどお互いいつかは大人になる。そのことにほんの少し寂しさを覚えているなんて、目の前で藍忘機と通話している魏無羨に絶対に言う訳はないけれど。
(俺も恋人でも出来れば)
なんて、張り合ってどうする。
#曦澄こたつおでん
あまりに単刀直入だったろうか。
しかし回りくどいのも嫌だ。
江澄は家の用事で藍家の面々と会った時、小声で藍曦臣に訊いてみた。
「うん?忘機たちのことですか?」
後輩の江澄相手に敬語を使う曦臣は、距離感がいまいちわからない人だった。
「いいも悪いも、本人たちが決めることで、いくら家族でも口出し出来ることではないと……私は思うのだけれど」
「そう、ですか」
藍家は厳しい家だから、藍忘機が魏無羨と付き合うだなんて許さないのではと勝手に考えていた。
魏無羨を心配した訳ではない、決して。
藍家の双璧と謳われる兄の方は、案外弟に甘いのかもしれない。
#曦澄こたつおでん
あまりに単刀直入だったろうか。
しかし回りくどいのも嫌だ。
江澄は家の用事で藍家の面々と会った時、小声で藍曦臣に訊いてみた。
「うん?忘機たちのことですか?」
後輩の江澄相手に敬語を使う曦臣は、距離感がいまいちわからない人だった。
「いいも悪いも、本人たちが決めることで、いくら家族でも口出し出来ることではないと……私は思うのだけれど」
「そう、ですか」
藍家は厳しい家だから、藍忘機が魏無羨と付き合うだなんて許さないのではと勝手に考えていた。
魏無羨を心配した訳ではない、決して。
藍家の双璧と謳われる兄の方は、案外弟に甘いのかもしれない。
#曦澄こたつおでん
そう言って体育館を出る藍曦臣に江澄が何か言いたそうにしたけれど、これから表彰式もあるだろう彼は顧問に呼ばれて行ってしまった。
会話とは言えない程度に交わした言葉。
知らず、曦臣は笑みを浮かべて車に乗り込んだ。
それからしばらくして、忘機が魏無羨と恋人として付き合いたいのだという相談を受けた。高校3年の大事な時期。しかし彼らの真剣さは伝わったので曦臣なりに見守ることにした。
同時に、束の間の再会を果たした江澄とは顔を合わせる機会が増えた。その度に江澄は複雑な表情を浮かべたけれど、実は親しい友の少ない曦臣は彼と会うのが次第に楽しみになっていた。
#曦澄こたつおでん
そう言って体育館を出る藍曦臣に江澄が何か言いたそうにしたけれど、これから表彰式もあるだろう彼は顧問に呼ばれて行ってしまった。
会話とは言えない程度に交わした言葉。
知らず、曦臣は笑みを浮かべて車に乗り込んだ。
それからしばらくして、忘機が魏無羨と恋人として付き合いたいのだという相談を受けた。高校3年の大事な時期。しかし彼らの真剣さは伝わったので曦臣なりに見守ることにした。
同時に、束の間の再会を果たした江澄とは顔を合わせる機会が増えた。その度に江澄は複雑な表情を浮かべたけれど、実は親しい友の少ない曦臣は彼と会うのが次第に楽しみになっていた。
#曦澄こたつおでん