ケイネすけ
kaynethkay.bsky.social
ケイネすけ
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記録用。当面は自我を持たない読書ツイート置き場にします。
大半のポストはTwitterからの転載・マイナーチェンジです。
萬屋直人『旅に出よう、滅びゆく世界の果てまで。』

"喪失病"によって痕跡も残さず人々が消えていき荒廃した世界で、だだっ広い北の大地をスーパーカブで旅する少年少女。見渡す限りの草原のなか世界の果てを目指して地平線の向こうまで伸びる道路を辿る旅路は設定に似合わぬ牧歌的な空気を纏う。

世界が滅びる原因である"喪失病"は、記録や写真を含めた全ての存在の証がこの世界から消え失せてしまうという残酷なもの。旅のキーアイテムである日記帳は、全てが消えてしまう世界で生きた証を残そうという意志を象徴するようで作品テーマそのものだし、ルールハックじみた記載法も登場して面白い。
February 17, 2024 at 5:12 PM
入間人間『世界の終わりの庭で』

文明が衰退した世界で遺跡から発掘された機械人形の少女が語る、時代も場所もこえた長い物語。ラーメン屋で小説を書く少女、拾った「腕」に話しかける実験など、どこにつながるんだ?と訝しむような断章的物語が二人の出会いの物語として収束していくのは美しい構成。第一章のあれこれが最終章を読むと様々な繋がりとともに円環をなしていることがわかるのは面白かった。
February 17, 2024 at 5:10 PM
300文字が上限なの、日常ポストには不要な長さだけどちゃんとした作品感想を呟こうとするとめちゃくちゃ助かる。Twitterで細切れに呟いた感想を流れに沿ってひとつにまとめたりもできる。
February 10, 2024 at 12:20 AM
Reposted by ケイネすけ
わたしたちの怪獣/久永実木彦
最近で一番刺さった粒揃いの短編集。
怪獣・時空旅行・吸血鬼・ゾンビ
鬱屈し、絶望した日々を送る登場人物の元に突然現れ、世界を破壊していく非日常。壊れていく世界を前にして自らの内面と重ね合わせながら、自分なりに現状を打破しようともがく、幻想的で細やかな心情描写に心惹かれます。その手段はヤケクソにも逃避にも見えるしどんどん世界はぶっ壊れていくけれど、登場人物達が思い思いの方法で世界と向き合う姿は小さくとも希望や救いを感じさせる不思議な読後感。
February 9, 2024 at 3:47 AM
荒木あかね『此の世の果ての殺人』

小惑星が日本に衝突しいずれ滅びる世界。ほとんどの人が国外へ逃亡するなか何らかの事情で街に残ったわずかな人々を凶悪な殺人鬼が襲う。

まず「最後の日に隕石が落ちる地に行くため自動車教習を受ける主人公」の時点で掴みはバッチリ。終わりを悲観した人々が絶望や狂騒に取り込まれるフェーズをこえ、終末が迫る状況のなか淡々と日々の営みを続ける人々が描かれるなかで、身に迫る具体的脅威として殺人犯が跋扈するギャップが印象的。ミステリ面では正義や秩序の不在をテーマにしながら、滅びかけた世界でなお残る人間の良心を見せつけるラストが眩しい。
February 9, 2024 at 2:10 PM
こうして並べてみると本当に世界か人類が滅亡する話ばかり読んでるな今年
February 7, 2024 at 2:55 PM
柴田勝家『走馬灯のセトリは考えておいて』

虚構と現実の境が溶けていくような六篇をおさめたSF短編集。とにもかくにも表題作が圧倒的すぎる。生者も死者も区別なく、今は死者となったバーチャルアイドルにペンライトを振る。テクノロジーが死生観まで塗り替えていくような結末に胸が熱くなる。
February 7, 2024 at 2:45 PM
ジョン・ウィンダム『トリフィド時代』

一夜にして視覚を失った人類に、即死攻撃を放つ歩くクソデカ植物の脅威が迫りくる。真綿で首を絞められるように人類文化が緩徐に滅んでいく様に、瞬間的な滅びとは異なる凄みを感じる。
資源のために全世界で栽培していた謎の植物がある日を境に……というプロットは古典的ながら(古典だからね)、それが直接の脅威にはならずあくまでも「視覚を失った人類」をさらに追い詰めるダメ押しの一手だったのはかなり捻られてる。前半はほとんど話に関係してこないからね、歩くクソデカ殺人植物。
February 7, 2024 at 2:38 PM
松崎有理『シュレーディンガーの少女』

65歳で死ぬことが定められた世界、デブに人権がない世界、数学が禁止された世界など様々なディストピアを生き抜く少女や老女を描いた短編集。表題作、"量子自殺"のアイデアを現実の世界とは位相がズレた平行世界の物語に持ち込むのは面白いアイデアだった。

ディストピアといっても全体的に戯画的で、深刻さよりもユーモアが先立つような印象がある。デブが飯を食ったら死ぬデスゲームが突然始まるし、「異世界数学」とか完全に学習漫画のノリ。ワンアイデアのショートショート集のような読み味で気軽に読める。
February 7, 2024 at 2:34 PM
瑞智士記『展翅少女人形館』

人類が球体関節人形しか出産できなくなった世界。ピレネーの奥地、人里離れた修道院に隔離された世界最後の人間の少女四人による愛憎入り混じった倒錯した人間模様が描かれる。全編通じてあざといまでの百合とフェティシズムに溢れ、好きな人にはたまらないのかも。

17世紀スペインの魔女裁判に端を発する奇妙な現象が現代へと続き奇妙な世界設定へと繋がっていくのは非常に惹き込まれる一方で、世界観は良くも悪くも少女たちの物語を彩るための舞台装置に徹しており、閉じた世界のフェティッシュな女女関係を楽しむのがメインコンテンツっぽい読み味。
February 7, 2024 at 2:29 PM
野宮有『どうせ、この夏は終わる』

数ヶ月後に隕石が衝突して終わることが約束されている世界の、最後のひと夏の青春ラブストーリー。諦念が漂う終末の空気感のなか、かつて諦めた夢を再度追う者や恋愛に一歩踏み出す者たちの姿を群像劇として描き出す。

状況設定そのものはベタながら、各章の登場人物たちの物語を繋ぎ合わせドキュメンタリー映画として「映画で世界を救う」ことを試みる最終章が素晴らしい。いいですよね、暗闇のなかで輝く人間の希望。「だからこそ、この時代は美しいのだ」という作中の台詞には首がもげそうになるほど頷いてしまう。
February 7, 2024 at 2:21 PM
SFマガジン2024.02 間宮改衣「ここはすべての夜明けまえ」
"融合手術"を受けて不老の機械の肉体を得た女が、終わった世界でつらつらと語り続ける半生記。愛されないこと、愛されたいと願うこと、誰かの愛情を搾取すること。痛みに満ちた生を送った存在は、痛みから解放された肉体で何を思うのか。

身体性というSF的テーマを通じて私小説的純文学を志向したような印象を受ける作品。愛らしい25歳の姿のまま時を止めたことで、最後まで愛する立場に立てなかったことが彼女の悲劇だったのかもしれないなと。どこか非人間的な達観が漂うひらがなの口語文体が独特の離人感を醸し出していて引き込まれた。
February 7, 2024 at 2:16 PM
逸木裕『世界の終わりのためのミステリ』

人類が姿を消した世界で、<オリジン>である人間の精神をコピーしたヒューマノイドたちが放浪する近未来。本筋は<オリジン>から移植された心を巡る日常の謎ミステリ。機械でありながら精神は人間であり、人間の頃の記憶も持っているという点が新鮮。

上手いなぁと思ったのは、ヒューマノイドたちが<オリジン>と記憶を共有するのは精神をコピーした時点までで、その後の双方の生は分たれたままいつの間にか世界が滅ぶ。第二話なんかは自らの謎を解くミステリでもあり、人間とヒューマノイドとしての肉体の差がもたらすすれ違いはなかなか面白かった。
February 7, 2024 at 2:12 PM
番外編:古泉迦十『火蛾』はいかに本格ミステリたりうるか

Twitterで話題!『火蛾』とは第17回メフィスト賞を受賞し、23年の時を経てついに文庫化された幻のミステリ。イスラム教×ミステリという異端の組み合わせが、夢と幻の狭間から宗教的真理の一端を読者に投げかけ深淵へと引き摺り込むような怪作です。
February 7, 2024 at 2:04 PM
Reposted by ケイネすけ
火蛾 古泉迦十

12世紀の中東。
聖者たちの伝記録編纂を志す詩人のファリードは、伝説の聖者の教派につらなるという男を訪ねる。
男が語ったのは、アリーのという若き行者の《物語》──姿を顕さぬ導師と四人の修行者だけが住まう《山》の、
閉ざされた穹盧の中で起きた連続殺人だった!

宗教ミステリの傑作、語ることすら烏滸がましい。その言葉が比喩じゃなく使える随一の作品。あの何処か遠く乾いた砂の海、その先に見た酷く明るい光を見て歩き出してしまう。いつまでも俺はこの本に縛られ続けてるしその面影を追いながら生きている。そしてなんと作者の新作が出るそうですよ!観賞に浸ってる場合じゃねえ!!
February 7, 2024 at 1:49 PM
酉島伝法『奏で手のヌフレツン』

世界は球面の内側に張り付き、太陽は108本の脚で地に刻まれた黄道を這い回る。異様な世界観のなか繰り広げられる非日常の日常、年代記のように綴られる人々の生活に静かにしかし確実に忍び寄る破滅の予兆。奇想世界とエンタメの融合が素晴らしすぎる。

例によって冒頭からフルスロットルかつ説明ゼロで叩きつけられる造語と異常な世界描写の数々に脳がバグりそうになりながら、読み進めるにつれて少しずつ世界の習俗に馴染んでいくような感覚がたまらない。
本当にすごいもんを読んだ。これを超える本に今年出会えるのか……?
February 7, 2024 at 1:53 PM
飛鳥部勝則『黒と愛』

和洋折衷のトンチキ建造物での密室殺人がメインかと思いきや、早々に場面が転換しとある少女を巡る愛憎渦巻く群像劇へと展開していくのは予想外だった。人間の暗黒面への黒く輝く憧憬がこれでもかと詰まった一作であり、少女の呪いを解くジュブナイル小説でもある。

「奇傾城殺人事件」のパートも派手派手でよかったけれど、個人的には「亡霊圏」が本当に好み。どこまで意図的なものかわからないけれど、同じくゴシックに取り憑かれた少女と彼女を見守る少年を描いた『GOTH』との共通点や相違点が随所にみられて、セットで読むといろいろと思うところがある。
February 7, 2024 at 1:46 PM
読書記録 2024年1月1日から
February 7, 2024 at 1:44 PM