笠木拓
LightNews LightNews
banner
fakefakefur.bsky.social
笠木拓
@fakefakefur.bsky.social
150 followers 130 following 250 posts
笠木拓（1987.06.26-）。歌人。歌集『はるかカーテンコールまで』（港の人、2019年）。富山市在住。
https://zenjitsutan.com/
Posts Replies Media Videos
Pinned
fakefakefur.bsky.social
笠木拓 @fakefakefur.bsky.social · Nov 25
文学フリマ東京41の新刊『日記に幕は下りません　ACT 2』から、笠木パート、今年9月の文学フリマ大阪のときの日記。
最初のページの右側は文フリ前日の9月13日、京都の宿で書いた部分です。
交換日記本『日記に幕は下りません』より引用。以下、4枚分の画像のテキスト。 　そのあともう一件お茶の約束があり、解散してから市バスに乗って、大学時代に住んでいたあたりをぶらぶら歩きました。いつ前を通っても甘い匂いを漂わせていたケーキ屋さんで、いちごのショートケーキを買いました。帰りのバスはなかなか進まず、紙箱の底にふれると、保冷剤の汗がじわじわとしみてきているのがわかります。川端四条のバス停、つまり南座の真ん前で停車したタイミングが、ちょうど終演直後だったらしく、上気した顔がどんどん流れ出てきます。 　その顔のどれもに、一人に一つの人生がある。 　眺めていたら、なぜか急に、閃光のように思い至りました。いえ、思い出しました。世界中どこでだってそうなのに。 　その途方もなさに胸が裂けるような、あたたかな灯がともるような。なつかしくてたまらない気持ちになりながら、けれども、安穏とこんな感慨にふけるのは罪ではないかとも思いながら、自分一人のためのケーキの箱を抱えて座ったまま、夜を運ばれていったのでした。 ９月16日（火） 　昨日は夕方まで京都を一人でぶらぶらして（髪も切ってきました）、富山の自宅に帰り着いたのは夜の九時前でした。連休明けにもう一日休みを取っていたので、今日は家でぐったりと過ごし、夕方になって外に出ました。おとといの日曜日、文学フリマ大阪の会場から自分宛てに着払いで発送した荷物を、ヤマト運輸の営業所で受け取り、そのあとコメダでこれを書いています。窓越しに夜気のつめたさがつたわり、外からは虫の声がとぎれることなく聞こえてきます。 　京都に宿を取ったのは、土地勘があること、万博のせいか大阪で良い条件の宿が見つからなかったことが理由でした。文フリ会場のインテックス大阪までは、阪急と大阪メトロ、ニュートラムを乗り継いで二時間弱。臨海エリアに立地して複数のホールを擁すること、床面積の広さ、天井の高さ、などビッグサイトと雰囲気はかなり似ています。 　昨冬の東京に比べれば通路が広く取られており、空間に余裕がありました。それでも、開場前に一般入場の待機列ができていて、開場後もどんどん人が増えてゆき、通路も見本誌コーナーも溢れんばかりでした。麻子さんが文フリに「商業」を感じる空気になってきた、と書いていたことが、今回からこの大きな箱に移った大阪にも当てはまる気がします。なんとなく気になったブースで試し読みをして、思いがけない掘り出し物を連れて帰る、みたいな楽しみ方をする余地は、やはりもうあまり残っていないように感じます。 　短歌同人誌「遠泳」の最終号となる四号が、今回の新刊でした。遠泳は学生短歌会の卒業生でつくった同人誌で、笠木がいちばん年長にあたります。一号を出したのが二〇一九年一月の文学フリマ京都だったので、足かけ六年で四冊。のんびりしたペースでしたが、自然消滅せず、最終号を出せたのが何よりでした。梅田でお疲れ様会をして、二軒目には行かず、その代わりみんなでタピオカミルクティーを買ってその場で立ち飲みして、解散。京都住まいの後輩二人と一緒に阪急電車に揺られながら、これからの話をしながら、窓を流れていく家々の灯を眺めながら、吉原幸子のこんな詩を思い浮かべていました。 山の　高いところに ぽつんと一つ　灯がついてゐるのは 人が　あそこにもゐるのだ 泣いたり　笑ったりして 幸せは罪ではない もう長いこと 夜の海をみても　心が騒がないのは 不幸でなくなった証拠だらうか 　　　　　吉原幸子「通過Ⅳ」より／『昼顔』 　短歌を、書くことを続けていれば、会えなくなることはない。だから、烏丸駅から地上に出て二人と別れたときも、正直なところそんなにさみしくもこわくもなかった。 　でも、同時に、そう言ってしまえるのは自分が単著も出していて、賞ももらい、ある程度の実績や立場をすでに得られているからだ、とも思います。こんなのは生存者バイアスで、「続けていれば会えるよ」は「どうして続けないの？」と背中合わせのやっかいな呪いだから、決して押しつけてはいけないはずです。 　そういう呪いをあえて選んで、手放して、それきりになったり、ふたたび手を伸ばしたり。多くは二足のわらじを履きながら、この不毛ないとなみを持ち寄る場所としての文学フリマから、呪いが脱臭されてしまわないことを願います。もしくは、ほかの場所で、べつな呪いの咲かせ方を探っていくしかないのでしょう。 交換日記本『日記に幕は下りません』より引用。以下、4枚分の画像のテキスト。 　そのあともう一件お茶の約束があり、解散してから市バスに乗って、大学時代に住んでいたあたりをぶらぶら歩きました。いつ前を通っても甘い匂いを漂わせていたケーキ屋さんで、いちごのショートケーキを買いました。帰りのバスはなかなか進まず、紙箱の底にふれると、保冷剤の汗がじわじわとしみてきているのがわかります。川端四条のバス停、つまり南座の真ん前で停車したタイミングが、ちょうど終演直後だったらしく、上気した顔がどんどん流れ出てきます。 　その顔のどれもに、一人に一つの人生がある。 　眺めていたら、なぜか急に、閃光のように思い至りました。いえ、思い出しました。世界中どこでだってそうなのに。 　その途方もなさに胸が裂けるような、あたたかな灯がともるような。なつかしくてたまらない気持ちになりながら、けれども、安穏とこんな感慨にふけるのは罪ではないかとも思いながら、自分一人のためのケーキの箱を抱えて座ったまま、夜を運ばれていったのでした。 ９月16日（火） 　昨日は夕方まで京都を一人でぶらぶらして（髪も切ってきました）、富山の自宅に帰り着いたのは夜の九時前でした。連休明けにもう一日休みを取っていたので、今日は家でぐったりと過ごし、夕方になって外に出ました。おとといの日曜日、文学フリマ大阪の会場から自分宛てに着払いで発送した荷物を、ヤマト運輸の営業所で受け取り、そのあとコメダでこれを書いています。窓越しに夜気のつめたさがつたわり、外からは虫の声がとぎれることなく聞こえてきます。 　京都に宿を取ったのは、土地勘があること、万博のせいか大阪で良い条件の宿が見つからなかったことが理由でした。文フリ会場のインテックス大阪までは、阪急と大阪メトロ、ニュートラムを乗り継いで二時間弱。臨海エリアに立地して複数のホールを擁すること、床面積の広さ、天井の高さ、などビッグサイトと雰囲気はかなり似ています。 　昨冬の東京に比べれば通路が広く取られており、空間に余裕がありました。それでも、開場前に一般入場の待機列ができていて、開場後もどんどん人が増えてゆき、通路も見本誌コーナーも溢れんばかりでした。麻子さんが文フリに「商業」を感じる空気になってきた、と書いていたことが、今回からこの大きな箱に移った大阪にも当てはまる気がします。なんとなく気になったブースで試し読みをして、思いがけない掘り出し物を連れて帰る、みたいな楽しみ方をする余地は、やはりもうあまり残っていないように感じます。 　短歌同人誌「遠泳」の最終号となる四号が、今回の新刊でした。遠泳は学生短歌会の卒業生でつくった同人誌で、笠木がいちばん年長にあたります。一号を出したのが二〇一九年一月の文学フリマ京都だったので、足かけ六年で四冊。のんびりしたペースでしたが、自然消滅せず、最終号を出せたのが何よりでした。梅田でお疲れ様会をして、二軒目には行かず、その代わりみんなでタピオカミルクティーを買ってその場で立ち飲みして、解散。京都住まいの後輩二人と一緒に阪急電車に揺られながら、これからの話をしながら、窓を流れていく家々の灯を眺めながら、吉原幸子のこんな詩を思い浮かべていました。 山の　高いところに ぽつんと一つ　灯がついてゐるのは 人が　あそこにもゐるのだ 泣いたり　笑ったりして 幸せは罪ではない もう長いこと 夜の海をみても　心が騒がないのは 不幸でなくなった証拠だらうか 　　　　　吉原幸子「通過Ⅳ」より／『昼顔』 　短歌を、書くことを続けていれば、会えなくなることはない。だから、烏丸駅から地上に出て二人と別れたときも、正直なところそんなにさみしくもこわくもなかった。 　でも、同時に、そう言ってしまえるのは自分が単著も出していて、賞ももらい、ある程度の実績や立場をすでに得られているからだ、とも思います。こんなのは生存者バイアスで、「続けていれば会えるよ」は「どうして続けないの？」と背中合わせのやっかいな呪いだから、決して押しつけてはいけないはずです。 　そういう呪いをあえて選んで、手放して、それきりになったり、ふたたび手を伸ばしたり。多くは二足のわらじを履きながら、この不毛ないとなみを持ち寄る場所としての文学フリマから、呪いが脱臭されてしまわないことを願います。もしくは、ほかの場所で、べつな呪いの咲かせ方を探っていくしかないのでしょう。 交換日記本『日記に幕は下りません』より引用。以下、4枚分の画像のテキスト。 　そのあともう一件お茶の約束があり、解散してから市バスに乗って、大学時代に住んでいたあたりをぶらぶら歩きました。いつ前を通っても甘い匂いを漂わせていたケーキ屋さんで、いちごのショートケーキを買いました。帰りのバスはなかなか進まず、紙箱の底にふれると、保冷剤の汗がじわじわとしみてきているのがわかります。川端四条のバス停、つまり南座の真ん前で停車したタイミングが、ちょうど終演直後だったらしく、上気した顔がどんどん流れ出てきます。 　その顔のどれもに、一人に一つの人生がある。 　眺めていたら、なぜか急に、閃光のように思い至りました。いえ、思い出しました。世界中どこでだってそうなのに。 　その途方もなさに胸が裂けるような、あたたかな灯がともるような。なつかしくてたまらない気持ちになりながら、けれども、安穏とこんな感慨にふけるのは罪ではないかとも思いながら、自分一人のためのケーキの箱を抱えて座ったまま、夜を運ばれていったのでした。 ９月16日（火） 　昨日は夕方まで京都を一人でぶらぶらして（髪も切ってきました）、富山の自宅に帰り着いたのは夜の九時前でした。連休明けにもう一日休みを取っていたので、今日は家でぐったりと過ごし、夕方になって外に出ました。おとといの日曜日、文学フリマ大阪の会場から自分宛てに着払いで発送した荷物を、ヤマト運輸の営業所で受け取り、そのあとコメダでこれを書いています。窓越しに夜気のつめたさがつたわり、外からは虫の声がとぎれることなく聞こえてきます。 　京都に宿を取ったのは、土地勘があること、万博のせいか大阪で良い条件の宿が見つからなかったことが理由でした。文フリ会場のインテックス大阪までは、阪急と大阪メトロ、ニュートラムを乗り継いで二時間弱。臨海エリアに立地して複数のホールを擁すること、床面積の広さ、天井の高さ、などビッグサイトと雰囲気はかなり似ています。 　昨冬の東京に比べれば通路が広く取られており、空間に余裕がありました。それでも、開場前に一般入場の待機列ができていて、開場後もどんどん人が増えてゆき、通路も見本誌コーナーも溢れんばかりでした。麻子さんが文フリに「商業」を感じる空気になってきた、と書いていたことが、今回からこの大きな箱に移った大阪にも当てはまる気がします。なんとなく気になったブースで試し読みをして、思いがけない掘り出し物を連れて帰る、みたいな楽しみ方をする余地は、やはりもうあまり残っていないように感じます。 　短歌同人誌「遠泳」の最終号となる四号が、今回の新刊でした。遠泳は学生短歌会の卒業生でつくった同人誌で、笠木がいちばん年長にあたります。一号を出したのが二〇一九年一月の文学フリマ京都だったので、足かけ六年で四冊。のんびりしたペースでしたが、自然消滅せず、最終号を出せたのが何よりでした。梅田でお疲れ様会をして、二軒目には行かず、その代わりみんなでタピオカミルクティーを買ってその場で立ち飲みして、解散。京都住まいの後輩二人と一緒に阪急電車に揺られながら、これからの話をしながら、窓を流れていく家々の灯を眺めながら、吉原幸子のこんな詩を思い浮かべていました。 山の　高いところに ぽつんと一つ　灯がついてゐるのは 人が　あそこにもゐるのだ 泣いたり　笑ったりして 幸せは罪ではない もう長いこと 夜の海をみても　心が騒がないのは 不幸でなくなった証拠だらうか 　　　　　吉原幸子「通過Ⅳ」より／『昼顔』 　短歌を、書くことを続けていれば、会えなくなることはない。だから、烏丸駅から地上に出て二人と別れたときも、正直なところそんなにさみしくもこわくもなかった。 　でも、同時に、そう言ってしまえるのは自分が単著も出していて、賞ももらい、ある程度の実績や立場をすでに得られているからだ、とも思います。こんなのは生存者バイアスで、「続けていれば会えるよ」は「どうして続けないの？」と背中合わせのやっかいな呪いだから、決して押しつけてはいけないはずです。 　そういう呪いをあえて選んで、手放して、それきりになったり、ふたたび手を伸ばしたり。多くは二足のわらじを履きながら、この不毛ないとなみを持ち寄る場所としての文学フリマから、呪いが脱臭されてしまわないことを願います。もしくは、ほかの場所で、べつな呪いの咲かせ方を探っていくしかないのでしょう。 交換日記本『日記に幕は下りません』より引用。以下、4枚分の画像のテキスト。 　そのあともう一件お茶の約束があり、解散してから市バスに乗って、大学時代に住んでいたあたりをぶらぶら歩きました。いつ前を通っても甘い匂いを漂わせていたケーキ屋さんで、いちごのショートケーキを買いました。帰りのバスはなかなか進まず、紙箱の底にふれると、保冷剤の汗がじわじわとしみてきているのがわかります。川端四条のバス停、つまり南座の真ん前で停車したタイミングが、ちょうど終演直後だったらしく、上気した顔がどんどん流れ出てきます。 　その顔のどれもに、一人に一つの人生がある。 　眺めていたら、なぜか急に、閃光のように思い至りました。いえ、思い出しました。世界中どこでだってそうなのに。 　その途方もなさに胸が裂けるような、あたたかな灯がともるような。なつかしくてたまらない気持ちになりながら、けれども、安穏とこんな感慨にふけるのは罪ではないかとも思いながら、自分一人のためのケーキの箱を抱えて座ったまま、夜を運ばれていったのでした。 ９月16日（火） 　昨日は夕方まで京都を一人でぶらぶらして（髪も切ってきました）、富山の自宅に帰り着いたのは夜の九時前でした。連休明けにもう一日休みを取っていたので、今日は家でぐったりと過ごし、夕方になって外に出ました。おとといの日曜日、文学フリマ大阪の会場から自分宛てに着払いで発送した荷物を、ヤマト運輸の営業所で受け取り、そのあとコメダでこれを書いています。窓越しに夜気のつめたさがつたわり、外からは虫の声がとぎれることなく聞こえてきます。 　京都に宿を取ったのは、土地勘があること、万博のせいか大阪で良い条件の宿が見つからなかったことが理由でした。文フリ会場のインテックス大阪までは、阪急と大阪メトロ、ニュートラムを乗り継いで二時間弱。臨海エリアに立地して複数のホールを擁すること、床面積の広さ、天井の高さ、などビッグサイトと雰囲気はかなり似ています。 　昨冬の東京に比べれば通路が広く取られており、空間に余裕がありました。それでも、開場前に一般入場の待機列ができていて、開場後もどんどん人が増えてゆき、通路も見本誌コーナーも溢れんばかりでした。麻子さんが文フリに「商業」を感じる空気になってきた、と書いていたことが、今回からこの大きな箱に移った大阪にも当てはまる気がします。なんとなく気になったブースで試し読みをして、思いがけない掘り出し物を連れて帰る、みたいな楽しみ方をする余地は、やはりもうあまり残っていないように感じます。 　短歌同人誌「遠泳」の最終号となる四号が、今回の新刊でした。遠泳は学生短歌会の卒業生でつくった同人誌で、笠木がいちばん年長にあたります。一号を出したのが二〇一九年一月の文学フリマ京都だったので、足かけ六年で四冊。のんびりしたペースでしたが、自然消滅せず、最終号を出せたのが何よりでした。梅田でお疲れ様会をして、二軒目には行かず、その代わりみんなでタピオカミルクティーを買ってその場で立ち飲みして、解散。京都住まいの後輩二人と一緒に阪急電車に揺られながら、これからの話をしながら、窓を流れていく家々の灯を眺めながら、吉原幸子のこんな詩を思い浮かべていました。 山の　高いところに ぽつんと一つ　灯がついてゐるのは 人が　あそこにもゐるのだ 泣いたり　笑ったりして 幸せは罪ではない もう長いこと 夜の海をみても　心が騒がないのは 不幸でなくなった証拠だらうか 　　　　　吉原幸子「通過Ⅳ」より／『昼顔』 　短歌を、書くことを続けていれば、会えなくなることはない。だから、烏丸駅から地上に出て二人と別れたときも、正直なところそんなにさみしくもこわくもなかった。 　でも、同時に、そう言ってしまえるのは自分が単著も出していて、賞ももらい、ある程度の実績や立場をすでに得られているからだ、とも思います。こんなのは生存者バイアスで、「続けていれば会えるよ」は「どうして続けないの？」と背中合わせのやっかいな呪いだから、決して押しつけてはいけないはずです。 　そういう呪いをあえて選んで、手放して、それきりになったり、ふたたび手を伸ばしたり。多くは二足のわらじを履きながら、この不毛ないとなみを持ち寄る場所としての文学フリマから、呪いが脱臭されてしまわないことを願います。もしくは、ほかの場所で、べつな呪いの咲かせ方を探っていくしかないのでしょう。
Reposted by 笠木拓
bit-310.bsky.social
こちらの企画の新作グッズです📢
bsky.app/profile/bit-...
bit-310.bsky.social 山中千瀬 @bit-310.bsky.social · Sep 5
唐崎昭子名義でガザのかたとのグッズ制作チームに参加しています。ふたりのお子さんと避難生活を送るHaneenさんを一員とするチームで、スズリでの売上の一部（トリブン）はHaneenさんの収入になります。いま現在、Haneenさんのお子さんのひとりがひどく体調を崩されていて、緊急の支援が必要な状況です。可能なかたはグッズ購入による支援や、拡散にご協力ください。直接寄付の情報もつなげます。

支援額の割合が大きいスマホ壁紙（わたしも使っています）へのリンク
⬇️
suzuri.jp/TeamHaneen/d...

企画についてのXの投稿
⬇️
x.com/bit_310/stat...
チーム・ハニーンのスズリのデジタルコンテンツ一覧のスクショ。２つのシリーズがある チーム・ハニーンのスマホ壁紙をつかってる待受画面のスクショ
December 22, 2025 at 1:10 PM
Reposted by 笠木拓
bit-310.bsky.social
自画自賛ですが、めっちゃかわいいカレンダーの作画を担当しました。よかったらチェックしてみてください

suzuri.jp/TeamHaneen/1...
カレンダーのイメージ画像。1月は白猫とチューリップ。 カレンダーのイメージ画像。1月から6月。それぞれの月に季節の植物などと白猫のイラストがついている。 カレンダーのイメージ画像。7月から12月。
December 22, 2025 at 1:08 PM
Reposted by 笠木拓
hempandwillow.bsky.social
クィアと服飾がテーマのZINE『Dressed to the 9UEER -お気に召すまま-』読みました。短歌連作がひとつとエッセイが5つ入っていて、どれもすごくよかった、短歌連作の「馬手に鰭、弓手は翼」とアパレルで働いた体験談の「マイ・ファッション・ポリシー」と「保健室の先生仕事服を選ぶ」が好きでした。めちゃくちゃ自分語りしたくなる本だった！

体の線、なるほどすれ違う人に線審の目を向けられもする（笠木拓）
#Dto9UEER
December 13, 2025 at 1:50 PM
fakefakefur.bsky.social
左右社さんのテーマ別アンソロジー、新刊は『星のうた』⭐️
笠木の歌も一首引いていただいています。この写真から収録歌がわかる人にはわかるかもしれない。
「星の夜の深きあはれ」のおともにぜひどうぞ🌌
黒い表紙に、星に見立てた暗めの金色の箔押しがされている本『星のうた』と、隣に眼鏡をかけた少女（星見純那さん）のイラストが描かれたアクリルスタンド
December 14, 2025 at 9:08 AM
fakefakefur.bsky.social
読書日記、続くかわからないけどぽつぽつ書き始めている。
December 3, 2025 at 10:26 AM
fakefakefur.bsky.social
文学フリマの話は文学フリマで出した本にわりと書いたので、この流れで（？）そろそろほんとに「さよならTwitter」の文章を書こうかなという気持ちになっている。
fakefakefur.bsky.social 笠木拓 @fakefakefur.bsky.social · Nov 25
文学フリマ東京41の新刊『日記に幕は下りません　ACT 2』から、笠木パート、今年9月の文学フリマ大阪のときの日記。
最初のページの右側は文フリ前日の9月13日、京都の宿で書いた部分です。
交換日記本『日記に幕は下りません』より引用。以下、4枚分の画像のテキスト。 　そのあともう一件お茶の約束があり、解散してから市バスに乗って、大学時代に住んでいたあたりをぶらぶら歩きました。いつ前を通っても甘い匂いを漂わせていたケーキ屋さんで、いちごのショートケーキを買いました。帰りのバスはなかなか進まず、紙箱の底にふれると、保冷剤の汗がじわじわとしみてきているのがわかります。川端四条のバス停、つまり南座の真ん前で停車したタイミングが、ちょうど終演直後だったらしく、上気した顔がどんどん流れ出てきます。 　その顔のどれもに、一人に一つの人生がある。 　眺めていたら、なぜか急に、閃光のように思い至りました。いえ、思い出しました。世界中どこでだってそうなのに。 　その途方もなさに胸が裂けるような、あたたかな灯がともるような。なつかしくてたまらない気持ちになりながら、けれども、安穏とこんな感慨にふけるのは罪ではないかとも思いながら、自分一人のためのケーキの箱を抱えて座ったまま、夜を運ばれていったのでした。 ９月16日（火） 　昨日は夕方まで京都を一人でぶらぶらして（髪も切ってきました）、富山の自宅に帰り着いたのは夜の九時前でした。連休明けにもう一日休みを取っていたので、今日は家でぐったりと過ごし、夕方になって外に出ました。おとといの日曜日、文学フリマ大阪の会場から自分宛てに着払いで発送した荷物を、ヤマト運輸の営業所で受け取り、そのあとコメダでこれを書いています。窓越しに夜気のつめたさがつたわり、外からは虫の声がとぎれることなく聞こえてきます。 　京都に宿を取ったのは、土地勘があること、万博のせいか大阪で良い条件の宿が見つからなかったことが理由でした。文フリ会場のインテックス大阪までは、阪急と大阪メトロ、ニュートラムを乗り継いで二時間弱。臨海エリアに立地して複数のホールを擁すること、床面積の広さ、天井の高さ、などビッグサイトと雰囲気はかなり似ています。 　昨冬の東京に比べれば通路が広く取られており、空間に余裕がありました。それでも、開場前に一般入場の待機列ができていて、開場後もどんどん人が増えてゆき、通路も見本誌コーナーも溢れんばかりでした。麻子さんが文フリに「商業」を感じる空気になってきた、と書いていたことが、今回からこの大きな箱に移った大阪にも当てはまる気がします。なんとなく気になったブースで試し読みをして、思いがけない掘り出し物を連れて帰る、みたいな楽しみ方をする余地は、やはりもうあまり残っていないように感じます。 　短歌同人誌「遠泳」の最終号となる四号が、今回の新刊でした。遠泳は学生短歌会の卒業生でつくった同人誌で、笠木がいちばん年長にあたります。一号を出したのが二〇一九年一月の文学フリマ京都だったので、足かけ六年で四冊。のんびりしたペースでしたが、自然消滅せず、最終号を出せたのが何よりでした。梅田でお疲れ様会をして、二軒目には行かず、その代わりみんなでタピオカミルクティーを買ってその場で立ち飲みして、解散。京都住まいの後輩二人と一緒に阪急電車に揺られながら、これからの話をしながら、窓を流れていく家々の灯を眺めながら、吉原幸子のこんな詩を思い浮かべていました。 山の　高いところに ぽつんと一つ　灯がついてゐるのは 人が　あそこにもゐるのだ 泣いたり　笑ったりして 幸せは罪ではない もう長いこと 夜の海をみても　心が騒がないのは 不幸でなくなった証拠だらうか 　　　　　吉原幸子「通過Ⅳ」より／『昼顔』 　短歌を、書くことを続けていれば、会えなくなることはない。だから、烏丸駅から地上に出て二人と別れたときも、正直なところそんなにさみしくもこわくもなかった。 　でも、同時に、そう言ってしまえるのは自分が単著も出していて、賞ももらい、ある程度の実績や立場をすでに得られているからだ、とも思います。こんなのは生存者バイアスで、「続けていれば会えるよ」は「どうして続けないの？」と背中合わせのやっかいな呪いだから、決して押しつけてはいけないはずです。 　そういう呪いをあえて選んで、手放して、それきりになったり、ふたたび手を伸ばしたり。多くは二足のわらじを履きながら、この不毛ないとなみを持ち寄る場所としての文学フリマから、呪いが脱臭されてしまわないことを願います。もしくは、ほかの場所で、べつな呪いの咲かせ方を探っていくしかないのでしょう。 交換日記本『日記に幕は下りません』より引用。以下、4枚分の画像のテキスト。 　そのあともう一件お茶の約束があり、解散してから市バスに乗って、大学時代に住んでいたあたりをぶらぶら歩きました。いつ前を通っても甘い匂いを漂わせていたケーキ屋さんで、いちごのショートケーキを買いました。帰りのバスはなかなか進まず、紙箱の底にふれると、保冷剤の汗がじわじわとしみてきているのがわかります。川端四条のバス停、つまり南座の真ん前で停車したタイミングが、ちょうど終演直後だったらしく、上気した顔がどんどん流れ出てきます。 　その顔のどれもに、一人に一つの人生がある。 　眺めていたら、なぜか急に、閃光のように思い至りました。いえ、思い出しました。世界中どこでだってそうなのに。 　その途方もなさに胸が裂けるような、あたたかな灯がともるような。なつかしくてたまらない気持ちになりながら、けれども、安穏とこんな感慨にふけるのは罪ではないかとも思いながら、自分一人のためのケーキの箱を抱えて座ったまま、夜を運ばれていったのでした。 ９月16日（火） 　昨日は夕方まで京都を一人でぶらぶらして（髪も切ってきました）、富山の自宅に帰り着いたのは夜の九時前でした。連休明けにもう一日休みを取っていたので、今日は家でぐったりと過ごし、夕方になって外に出ました。おとといの日曜日、文学フリマ大阪の会場から自分宛てに着払いで発送した荷物を、ヤマト運輸の営業所で受け取り、そのあとコメダでこれを書いています。窓越しに夜気のつめたさがつたわり、外からは虫の声がとぎれることなく聞こえてきます。 　京都に宿を取ったのは、土地勘があること、万博のせいか大阪で良い条件の宿が見つからなかったことが理由でした。文フリ会場のインテックス大阪までは、阪急と大阪メトロ、ニュートラムを乗り継いで二時間弱。臨海エリアに立地して複数のホールを擁すること、床面積の広さ、天井の高さ、などビッグサイトと雰囲気はかなり似ています。 　昨冬の東京に比べれば通路が広く取られており、空間に余裕がありました。それでも、開場前に一般入場の待機列ができていて、開場後もどんどん人が増えてゆき、通路も見本誌コーナーも溢れんばかりでした。麻子さんが文フリに「商業」を感じる空気になってきた、と書いていたことが、今回からこの大きな箱に移った大阪にも当てはまる気がします。なんとなく気になったブースで試し読みをして、思いがけない掘り出し物を連れて帰る、みたいな楽しみ方をする余地は、やはりもうあまり残っていないように感じます。 　短歌同人誌「遠泳」の最終号となる四号が、今回の新刊でした。遠泳は学生短歌会の卒業生でつくった同人誌で、笠木がいちばん年長にあたります。一号を出したのが二〇一九年一月の文学フリマ京都だったので、足かけ六年で四冊。のんびりしたペースでしたが、自然消滅せず、最終号を出せたのが何よりでした。梅田でお疲れ様会をして、二軒目には行かず、その代わりみんなでタピオカミルクティーを買ってその場で立ち飲みして、解散。京都住まいの後輩二人と一緒に阪急電車に揺られながら、これからの話をしながら、窓を流れていく家々の灯を眺めながら、吉原幸子のこんな詩を思い浮かべていました。 山の　高いところに ぽつんと一つ　灯がついてゐるのは 人が　あそこにもゐるのだ 泣いたり　笑ったりして 幸せは罪ではない もう長いこと 夜の海をみても　心が騒がないのは 不幸でなくなった証拠だらうか 　　　　　吉原幸子「通過Ⅳ」より／『昼顔』 　短歌を、書くことを続けていれば、会えなくなることはない。だから、烏丸駅から地上に出て二人と別れたときも、正直なところそんなにさみしくもこわくもなかった。 　でも、同時に、そう言ってしまえるのは自分が単著も出していて、賞ももらい、ある程度の実績や立場をすでに得られているからだ、とも思います。こんなのは生存者バイアスで、「続けていれば会えるよ」は「どうして続けないの？」と背中合わせのやっかいな呪いだから、決して押しつけてはいけないはずです。 　そういう呪いをあえて選んで、手放して、それきりになったり、ふたたび手を伸ばしたり。多くは二足のわらじを履きながら、この不毛ないとなみを持ち寄る場所としての文学フリマから、呪いが脱臭されてしまわないことを願います。もしくは、ほかの場所で、べつな呪いの咲かせ方を探っていくしかないのでしょう。 交換日記本『日記に幕は下りません』より引用。以下、4枚分の画像のテキスト。 　そのあともう一件お茶の約束があり、解散してから市バスに乗って、大学時代に住んでいたあたりをぶらぶら歩きました。いつ前を通っても甘い匂いを漂わせていたケーキ屋さんで、いちごのショートケーキを買いました。帰りのバスはなかなか進まず、紙箱の底にふれると、保冷剤の汗がじわじわとしみてきているのがわかります。川端四条のバス停、つまり南座の真ん前で停車したタイミングが、ちょうど終演直後だったらしく、上気した顔がどんどん流れ出てきます。 　その顔のどれもに、一人に一つの人生がある。 　眺めていたら、なぜか急に、閃光のように思い至りました。いえ、思い出しました。世界中どこでだってそうなのに。 　その途方もなさに胸が裂けるような、あたたかな灯がともるような。なつかしくてたまらない気持ちになりながら、けれども、安穏とこんな感慨にふけるのは罪ではないかとも思いながら、自分一人のためのケーキの箱を抱えて座ったまま、夜を運ばれていったのでした。 ９月16日（火） 　昨日は夕方まで京都を一人でぶらぶらして（髪も切ってきました）、富山の自宅に帰り着いたのは夜の九時前でした。連休明けにもう一日休みを取っていたので、今日は家でぐったりと過ごし、夕方になって外に出ました。おとといの日曜日、文学フリマ大阪の会場から自分宛てに着払いで発送した荷物を、ヤマト運輸の営業所で受け取り、そのあとコメダでこれを書いています。窓越しに夜気のつめたさがつたわり、外からは虫の声がとぎれることなく聞こえてきます。 　京都に宿を取ったのは、土地勘があること、万博のせいか大阪で良い条件の宿が見つからなかったことが理由でした。文フリ会場のインテックス大阪までは、阪急と大阪メトロ、ニュートラムを乗り継いで二時間弱。臨海エリアに立地して複数のホールを擁すること、床面積の広さ、天井の高さ、などビッグサイトと雰囲気はかなり似ています。 　昨冬の東京に比べれば通路が広く取られており、空間に余裕がありました。それでも、開場前に一般入場の待機列ができていて、開場後もどんどん人が増えてゆき、通路も見本誌コーナーも溢れんばかりでした。麻子さんが文フリに「商業」を感じる空気になってきた、と書いていたことが、今回からこの大きな箱に移った大阪にも当てはまる気がします。なんとなく気になったブースで試し読みをして、思いがけない掘り出し物を連れて帰る、みたいな楽しみ方をする余地は、やはりもうあまり残っていないように感じます。 　短歌同人誌「遠泳」の最終号となる四号が、今回の新刊でした。遠泳は学生短歌会の卒業生でつくった同人誌で、笠木がいちばん年長にあたります。一号を出したのが二〇一九年一月の文学フリマ京都だったので、足かけ六年で四冊。のんびりしたペースでしたが、自然消滅せず、最終号を出せたのが何よりでした。梅田でお疲れ様会をして、二軒目には行かず、その代わりみんなでタピオカミルクティーを買ってその場で立ち飲みして、解散。京都住まいの後輩二人と一緒に阪急電車に揺られながら、これからの話をしながら、窓を流れていく家々の灯を眺めながら、吉原幸子のこんな詩を思い浮かべていました。 山の　高いところに ぽつんと一つ　灯がついてゐるのは 人が　あそこにもゐるのだ 泣いたり　笑ったりして 幸せは罪ではない もう長いこと 夜の海をみても　心が騒がないのは 不幸でなくなった証拠だらうか 　　　　　吉原幸子「通過Ⅳ」より／『昼顔』 　短歌を、書くことを続けていれば、会えなくなることはない。だから、烏丸駅から地上に出て二人と別れたときも、正直なところそんなにさみしくもこわくもなかった。 　でも、同時に、そう言ってしまえるのは自分が単著も出していて、賞ももらい、ある程度の実績や立場をすでに得られているからだ、とも思います。こんなのは生存者バイアスで、「続けていれば会えるよ」は「どうして続けないの？」と背中合わせのやっかいな呪いだから、決して押しつけてはいけないはずです。 　そういう呪いをあえて選んで、手放して、それきりになったり、ふたたび手を伸ばしたり。多くは二足のわらじを履きながら、この不毛ないとなみを持ち寄る場所としての文学フリマから、呪いが脱臭されてしまわないことを願います。もしくは、ほかの場所で、べつな呪いの咲かせ方を探っていくしかないのでしょう。 交換日記本『日記に幕は下りません』より引用。以下、4枚分の画像のテキスト。 　そのあともう一件お茶の約束があり、解散してから市バスに乗って、大学時代に住んでいたあたりをぶらぶら歩きました。いつ前を通っても甘い匂いを漂わせていたケーキ屋さんで、いちごのショートケーキを買いました。帰りのバスはなかなか進まず、紙箱の底にふれると、保冷剤の汗がじわじわとしみてきているのがわかります。川端四条のバス停、つまり南座の真ん前で停車したタイミングが、ちょうど終演直後だったらしく、上気した顔がどんどん流れ出てきます。 　その顔のどれもに、一人に一つの人生がある。 　眺めていたら、なぜか急に、閃光のように思い至りました。いえ、思い出しました。世界中どこでだってそうなのに。 　その途方もなさに胸が裂けるような、あたたかな灯がともるような。なつかしくてたまらない気持ちになりながら、けれども、安穏とこんな感慨にふけるのは罪ではないかとも思いながら、自分一人のためのケーキの箱を抱えて座ったまま、夜を運ばれていったのでした。 ９月16日（火） 　昨日は夕方まで京都を一人でぶらぶらして（髪も切ってきました）、富山の自宅に帰り着いたのは夜の九時前でした。連休明けにもう一日休みを取っていたので、今日は家でぐったりと過ごし、夕方になって外に出ました。おとといの日曜日、文学フリマ大阪の会場から自分宛てに着払いで発送した荷物を、ヤマト運輸の営業所で受け取り、そのあとコメダでこれを書いています。窓越しに夜気のつめたさがつたわり、外からは虫の声がとぎれることなく聞こえてきます。 　京都に宿を取ったのは、土地勘があること、万博のせいか大阪で良い条件の宿が見つからなかったことが理由でした。文フリ会場のインテックス大阪までは、阪急と大阪メトロ、ニュートラムを乗り継いで二時間弱。臨海エリアに立地して複数のホールを擁すること、床面積の広さ、天井の高さ、などビッグサイトと雰囲気はかなり似ています。 　昨冬の東京に比べれば通路が広く取られており、空間に余裕がありました。それでも、開場前に一般入場の待機列ができていて、開場後もどんどん人が増えてゆき、通路も見本誌コーナーも溢れんばかりでした。麻子さんが文フリに「商業」を感じる空気になってきた、と書いていたことが、今回からこの大きな箱に移った大阪にも当てはまる気がします。なんとなく気になったブースで試し読みをして、思いがけない掘り出し物を連れて帰る、みたいな楽しみ方をする余地は、やはりもうあまり残っていないように感じます。 　短歌同人誌「遠泳」の最終号となる四号が、今回の新刊でした。遠泳は学生短歌会の卒業生でつくった同人誌で、笠木がいちばん年長にあたります。一号を出したのが二〇一九年一月の文学フリマ京都だったので、足かけ六年で四冊。のんびりしたペースでしたが、自然消滅せず、最終号を出せたのが何よりでした。梅田でお疲れ様会をして、二軒目には行かず、その代わりみんなでタピオカミルクティーを買ってその場で立ち飲みして、解散。京都住まいの後輩二人と一緒に阪急電車に揺られながら、これからの話をしながら、窓を流れていく家々の灯を眺めながら、吉原幸子のこんな詩を思い浮かべていました。 山の　高いところに ぽつんと一つ　灯がついてゐるのは 人が　あそこにもゐるのだ 泣いたり　笑ったりして 幸せは罪ではない もう長いこと 夜の海をみても　心が騒がないのは 不幸でなくなった証拠だらうか 　　　　　吉原幸子「通過Ⅳ」より／『昼顔』 　短歌を、書くことを続けていれば、会えなくなることはない。だから、烏丸駅から地上に出て二人と別れたときも、正直なところそんなにさみしくもこわくもなかった。 　でも、同時に、そう言ってしまえるのは自分が単著も出していて、賞ももらい、ある程度の実績や立場をすでに得られているからだ、とも思います。こんなのは生存者バイアスで、「続けていれば会えるよ」は「どうして続けないの？」と背中合わせのやっかいな呪いだから、決して押しつけてはいけないはずです。 　そういう呪いをあえて選んで、手放して、それきりになったり、ふたたび手を伸ばしたり。多くは二足のわらじを履きながら、この不毛ないとなみを持ち寄る場所としての文学フリマから、呪いが脱臭されてしまわないことを願います。もしくは、ほかの場所で、べつな呪いの咲かせ方を探っていくしかないのでしょう。
November 29, 2025 at 2:47 PM
Reposted by 笠木拓
hempandwillow.bsky.social
今なら前作の『日記に幕は下りません』無印とあわせてお求めいただくことも可能です。また、夏に文学フリマ香川2で発行した『海へ』も絶賛取扱い中です。チェックしてみてくださいね👀
痛覚 powered by BASE
柳川麻衣の私家版書籍を頒布しています。略歴：1979年生まれ。2004年より文学フリマを中心に作品を発表。2020年、女同士が法的に結婚できる日本でルームシェアする女性たちを描いた「ついの棲みか」でpixivノベル大賞～2020Spring～・百合部門を受賞。商業作『友達以上、推し未満』『オフィスに百合は咲きません』（電子書籍）、主な私家版書籍に『ロータス』（2012）『わかれについてのエトセトラ...
wordsinpain.base.shop
November 26, 2025 at 11:34 AM
Reposted by 笠木拓
hempandwillow.bsky.social
【お知らせ】
『日記に幕は下りません ACT 2』BASEに登録しました！試し読み的にいちばん最初（2021年5月）のやりとりをまるごと載せています。どうぞよろしくお願いいたします📚
日記に幕は下りません ACT 2 | 痛覚 powered by BASE
歌人の笠木拓さんと柳川麻衣の交換日記『日記に幕は下りません』の2冊目です。1冊目は2019年11月から2020年10月までの一年間でしたが、今回は2021年から2025年まで、ゆったりめのペースでのやりとりになりました。間隔もまちまちで、大胆に日付が飛んだかと思うとしれっと再開したりしています。2年目を迎えた「コロナ禍」がなし崩し的に「明け」ていく様子、そのなかで読んだ本や観た映画や舞台のことなど...
wordsinpain.base.shop
November 26, 2025 at 11:30 AM
Reposted by 笠木拓
hempandwillow.bsky.social
文学フリマ東京41新刊『日記に幕は下りません ACT 2』より、柳川の担当箇所を抜粋します。6月15日付ですが、今年の5月の文学フリマ東京40を振り返っている箇所です。
ようです。カレンダーどおりの休みなので土日はいつもの土日でしかなく、とはいえ土曜日は広島に住む友人と坂出駅で待ち合わせして瀬戸大橋記念公園で遊び、日帰りして日曜日は「列車の展望室から見る絶景」を絵と文章で表現する二人展「幻想夜行展」（展示を記念して発行されたアンソロジー『夢幻軌道案内』に書かせていただいたご縁もあり）にお邪魔し、かなり満喫しているのでは……という気もします。月曜日はへろへろになりながら最低限の仕事をし、今日は久しぶりにとくに予定がないので、セーターをまとめて洗濯したり、アニメ『忍たま乱太郎』を見逃し配信で観たりしています。 　午後は散歩ルートに迷って、関口教会に行きました。ひと月ほど前に観た『教皇選挙』や、現実世界でのフランシスコ教皇の逝去のニュースに引っ張られたのだと思います。池袋西武のリブロをはじめ、『ロータス』の作中でモデルにした場所は多くがなくなったり変わったりしてしまいましたが、関口教会はそのままのかたちで残っている数少ない舞台のひとつです。 ６月15日（日） 　真夏かと思うほど暑くなったかと思えば雨で冷え込む、の繰り返しで、冷房と暖房を 一日おきに交互につける、みたいな日々が春先からずっと続いていた気がします。関東甲信と北陸は十日に梅雨入りのニュースを聞き、東京はゆうべは嵐で、明けて晴れるとともに暑くなってきました。 　文学フリマ東京にかまけて五月をまるまる飛ばしてしまいました。東京ビッグサイトとはいえ、昨年の十二月に比べたらかなりゆったりした配置の南館で、新作も作れず、全体的にまったりと終わったにもかかわらず、イベントに参加するとそれだけでエネルギーをもっていかれてしまうようです。以前は場から受け取るエネルギーも大きかったのですが、だんだん疲労のほうが勝るようになってきました。文学フリマ東京は会場が拡大するたびに雰囲気が変わり、東京ビッグサイト開催になって決定的に「商業」を感じる空気になってきたこと、そして私自身も変わったのだと思います。あたりまえのように参加してきたイベントですが、関わり方を考えるタイミングが来たと感じています。 　昨年末の文学フリマ東京のあとのごはんの席でも、四月にかさぎさんと高野フルーツパーラーでパフェを食べたときにもそんな話をしていた気がしますが、このところずっと二次創作を読んだり書いたりすることに必死になっていて、文学フリマ東京でも何の脈絡もなく『トワイライト・ウォリアーズ』の二次創作小説を無料配布したり、先週末 はとつぜん降ってわいたまた別のジャンルの二次創作小説を書いたりしていました。そんなものを書いているひまに書くべきものが幾つもあるはずでは……という脳内ツッコミも聞こえていて、そのうちのひとつはこの日記だったわけで、ほんとうにごめんなさい。 　あとから振り返って書くなどの「ズル」をしようとも思ったものの、やはり日記は「その日のうちに記す」からこそ「日記」というところがあり、「一日の終わり」という厳しい締切をなかなか守れずに来てしまいました。 　 　つらいニュースばかり聞こえてきます。ロシアのウクライナ侵攻はいまだに収束しておらず、ガザの状況も悪くなりつづけているように見えます。イスラエルは虐殺をやめないばかりか、イランを攻撃しました。 　アメリカでは十四日のトランプ大統領の誕生日の軍事パレードに合わせて、No Kingsというスローガンで全米各地で抗議デモが行われたようです。今週末からニューヨークに旅行する予定で、ロスアンジェルスに州兵や海兵隊が派遣されたことによる混乱をはらはらしながら見守っていました。旅行を決めたのは昨年の十月ごろで、そのときはまだ第二次トランプ政権が誕生することはないだろうという楽観的な予測もあり、 まさか半年足らずでアメリカがこんなふうになっていくとは思ってもいませんでした。 　日本脫出したし　皇帝ペンギンも皇帝ペンギン飼育係りも 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　塚本邦雄『日本人靈歌』 　でも、日本を脱出して、いったいどこへ？ 　旅先で観劇予定の『ハミルトン』を配信で予習して、王を拒絶し「アメリカは移民によって建国された」というメッセージを強く含むこのミュージカルを、いまブロードウェイで観るというのはすごい巡り合わせだな、しっかりと観てこよう、という前向きな気持ちにもなりつつ。やはり憂鬱は完全には晴れません。 　あんなに書きあぐねていたのに、書きはじめるとどこまでもだらだらと書いてしまいます。あらためてこの日記を読み返して、自分のいる場所がどんどん変わっていったことに驚きました。新宿へ行くたびに小田急がないことに驚いて、駅の構内であたふたしてしまうし。 　過去に「夢中だった」と書いたもののほとんどを手放してしまった気がします。自分
November 26, 2025 at 11:26 AM
fakefakefur.bsky.social
あらためて見るとしまやさんが会場直接搬入の箱に入れてくれてた飛び出る〈新刊〉ポップの存在感すごいな。これ今までもあったっけ？　初めてかも。
fakefakefur.bsky.social 笠木拓 @fakefakefur.bsky.social · Nov 23
【て-82】みなそこすなどけい
設営完了です！
November 25, 2025 at 1:19 PM
fakefakefur.bsky.social
文学フリマ東京41の新刊『日記に幕は下りません　ACT 2』から、笠木パート、今年9月の文学フリマ大阪のときの日記。
最初のページの右側は文フリ前日の9月13日、京都の宿で書いた部分です。
交換日記本『日記に幕は下りません』より引用。以下、4枚分の画像のテキスト。 　そのあともう一件お茶の約束があり、解散してから市バスに乗って、大学時代に住んでいたあたりをぶらぶら歩きました。いつ前を通っても甘い匂いを漂わせていたケーキ屋さんで、いちごのショートケーキを買いました。帰りのバスはなかなか進まず、紙箱の底にふれると、保冷剤の汗がじわじわとしみてきているのがわかります。川端四条のバス停、つまり南座の真ん前で停車したタイミングが、ちょうど終演直後だったらしく、上気した顔がどんどん流れ出てきます。 　その顔のどれもに、一人に一つの人生がある。 　眺めていたら、なぜか急に、閃光のように思い至りました。いえ、思い出しました。世界中どこでだってそうなのに。 　その途方もなさに胸が裂けるような、あたたかな灯がともるような。なつかしくてたまらない気持ちになりながら、けれども、安穏とこんな感慨にふけるのは罪ではないかとも思いながら、自分一人のためのケーキの箱を抱えて座ったまま、夜を運ばれていったのでした。 ９月16日（火） 　昨日は夕方まで京都を一人でぶらぶらして（髪も切ってきました）、富山の自宅に帰り着いたのは夜の九時前でした。連休明けにもう一日休みを取っていたので、今日は家でぐったりと過ごし、夕方になって外に出ました。おとといの日曜日、文学フリマ大阪の会場から自分宛てに着払いで発送した荷物を、ヤマト運輸の営業所で受け取り、そのあとコメダでこれを書いています。窓越しに夜気のつめたさがつたわり、外からは虫の声がとぎれることなく聞こえてきます。 　京都に宿を取ったのは、土地勘があること、万博のせいか大阪で良い条件の宿が見つからなかったことが理由でした。文フリ会場のインテックス大阪までは、阪急と大阪メトロ、ニュートラムを乗り継いで二時間弱。臨海エリアに立地して複数のホールを擁すること、床面積の広さ、天井の高さ、などビッグサイトと雰囲気はかなり似ています。 　昨冬の東京に比べれば通路が広く取られており、空間に余裕がありました。それでも、開場前に一般入場の待機列ができていて、開場後もどんどん人が増えてゆき、通路も見本誌コーナーも溢れんばかりでした。麻子さんが文フリに「商業」を感じる空気になってきた、と書いていたことが、今回からこの大きな箱に移った大阪にも当てはまる気がします。なんとなく気になったブースで試し読みをして、思いがけない掘り出し物を連れて帰る、みたいな楽しみ方をする余地は、やはりもうあまり残っていないように感じます。 　短歌同人誌「遠泳」の最終号となる四号が、今回の新刊でした。遠泳は学生短歌会の卒業生でつくった同人誌で、笠木がいちばん年長にあたります。一号を出したのが二〇一九年一月の文学フリマ京都だったので、足かけ六年で四冊。のんびりしたペースでしたが、自然消滅せず、最終号を出せたのが何よりでした。梅田でお疲れ様会をして、二軒目には行かず、その代わりみんなでタピオカミルクティーを買ってその場で立ち飲みして、解散。京都住まいの後輩二人と一緒に阪急電車に揺られながら、これからの話をしながら、窓を流れていく家々の灯を眺めながら、吉原幸子のこんな詩を思い浮かべていました。 山の　高いところに ぽつんと一つ　灯がついてゐるのは 人が　あそこにもゐるのだ 泣いたり　笑ったりして 幸せは罪ではない もう長いこと 夜の海をみても　心が騒がないのは 不幸でなくなった証拠だらうか 　　　　　吉原幸子「通過Ⅳ」より／『昼顔』 　短歌を、書くことを続けていれば、会えなくなることはない。だから、烏丸駅から地上に出て二人と別れたときも、正直なところそんなにさみしくもこわくもなかった。 　でも、同時に、そう言ってしまえるのは自分が単著も出していて、賞ももらい、ある程度の実績や立場をすでに得られているからだ、とも思います。こんなのは生存者バイアスで、「続けていれば会えるよ」は「どうして続けないの？」と背中合わせのやっかいな呪いだから、決して押しつけてはいけないはずです。 　そういう呪いをあえて選んで、手放して、それきりになったり、ふたたび手を伸ばしたり。多くは二足のわらじを履きながら、この不毛ないとなみを持ち寄る場所としての文学フリマから、呪いが脱臭されてしまわないことを願います。もしくは、ほかの場所で、べつな呪いの咲かせ方を探っていくしかないのでしょう。 交換日記本『日記に幕は下りません』より引用。以下、4枚分の画像のテキスト。 　そのあともう一件お茶の約束があり、解散してから市バスに乗って、大学時代に住んでいたあたりをぶらぶら歩きました。いつ前を通っても甘い匂いを漂わせていたケーキ屋さんで、いちごのショートケーキを買いました。帰りのバスはなかなか進まず、紙箱の底にふれると、保冷剤の汗がじわじわとしみてきているのがわかります。川端四条のバス停、つまり南座の真ん前で停車したタイミングが、ちょうど終演直後だったらしく、上気した顔がどんどん流れ出てきます。 　その顔のどれもに、一人に一つの人生がある。 　眺めていたら、なぜか急に、閃光のように思い至りました。いえ、思い出しました。世界中どこでだってそうなのに。 　その途方もなさに胸が裂けるような、あたたかな灯がともるような。なつかしくてたまらない気持ちになりながら、けれども、安穏とこんな感慨にふけるのは罪ではないかとも思いながら、自分一人のためのケーキの箱を抱えて座ったまま、夜を運ばれていったのでした。 ９月16日（火） 　昨日は夕方まで京都を一人でぶらぶらして（髪も切ってきました）、富山の自宅に帰り着いたのは夜の九時前でした。連休明けにもう一日休みを取っていたので、今日は家でぐったりと過ごし、夕方になって外に出ました。おとといの日曜日、文学フリマ大阪の会場から自分宛てに着払いで発送した荷物を、ヤマト運輸の営業所で受け取り、そのあとコメダでこれを書いています。窓越しに夜気のつめたさがつたわり、外からは虫の声がとぎれることなく聞こえてきます。 　京都に宿を取ったのは、土地勘があること、万博のせいか大阪で良い条件の宿が見つからなかったことが理由でした。文フリ会場のインテックス大阪までは、阪急と大阪メトロ、ニュートラムを乗り継いで二時間弱。臨海エリアに立地して複数のホールを擁すること、床面積の広さ、天井の高さ、などビッグサイトと雰囲気はかなり似ています。 　昨冬の東京に比べれば通路が広く取られており、空間に余裕がありました。それでも、開場前に一般入場の待機列ができていて、開場後もどんどん人が増えてゆき、通路も見本誌コーナーも溢れんばかりでした。麻子さんが文フリに「商業」を感じる空気になってきた、と書いていたことが、今回からこの大きな箱に移った大阪にも当てはまる気がします。なんとなく気になったブースで試し読みをして、思いがけない掘り出し物を連れて帰る、みたいな楽しみ方をする余地は、やはりもうあまり残っていないように感じます。 　短歌同人誌「遠泳」の最終号となる四号が、今回の新刊でした。遠泳は学生短歌会の卒業生でつくった同人誌で、笠木がいちばん年長にあたります。一号を出したのが二〇一九年一月の文学フリマ京都だったので、足かけ六年で四冊。のんびりしたペースでしたが、自然消滅せず、最終号を出せたのが何よりでした。梅田でお疲れ様会をして、二軒目には行かず、その代わりみんなでタピオカミルクティーを買ってその場で立ち飲みして、解散。京都住まいの後輩二人と一緒に阪急電車に揺られながら、これからの話をしながら、窓を流れていく家々の灯を眺めながら、吉原幸子のこんな詩を思い浮かべていました。 山の　高いところに ぽつんと一つ　灯がついてゐるのは 人が　あそこにもゐるのだ 泣いたり　笑ったりして 幸せは罪ではない もう長いこと 夜の海をみても　心が騒がないのは 不幸でなくなった証拠だらうか 　　　　　吉原幸子「通過Ⅳ」より／『昼顔』 　短歌を、書くことを続けていれば、会えなくなることはない。だから、烏丸駅から地上に出て二人と別れたときも、正直なところそんなにさみしくもこわくもなかった。 　でも、同時に、そう言ってしまえるのは自分が単著も出していて、賞ももらい、ある程度の実績や立場をすでに得られているからだ、とも思います。こんなのは生存者バイアスで、「続けていれば会えるよ」は「どうして続けないの？」と背中合わせのやっかいな呪いだから、決して押しつけてはいけないはずです。 　そういう呪いをあえて選んで、手放して、それきりになったり、ふたたび手を伸ばしたり。多くは二足のわらじを履きながら、この不毛ないとなみを持ち寄る場所としての文学フリマから、呪いが脱臭されてしまわないことを願います。もしくは、ほかの場所で、べつな呪いの咲かせ方を探っていくしかないのでしょう。 交換日記本『日記に幕は下りません』より引用。以下、4枚分の画像のテキスト。 　そのあともう一件お茶の約束があり、解散してから市バスに乗って、大学時代に住んでいたあたりをぶらぶら歩きました。いつ前を通っても甘い匂いを漂わせていたケーキ屋さんで、いちごのショートケーキを買いました。帰りのバスはなかなか進まず、紙箱の底にふれると、保冷剤の汗がじわじわとしみてきているのがわかります。川端四条のバス停、つまり南座の真ん前で停車したタイミングが、ちょうど終演直後だったらしく、上気した顔がどんどん流れ出てきます。 　その顔のどれもに、一人に一つの人生がある。 　眺めていたら、なぜか急に、閃光のように思い至りました。いえ、思い出しました。世界中どこでだってそうなのに。 　その途方もなさに胸が裂けるような、あたたかな灯がともるような。なつかしくてたまらない気持ちになりながら、けれども、安穏とこんな感慨にふけるのは罪ではないかとも思いながら、自分一人のためのケーキの箱を抱えて座ったまま、夜を運ばれていったのでした。 ９月16日（火） 　昨日は夕方まで京都を一人でぶらぶらして（髪も切ってきました）、富山の自宅に帰り着いたのは夜の九時前でした。連休明けにもう一日休みを取っていたので、今日は家でぐったりと過ごし、夕方になって外に出ました。おとといの日曜日、文学フリマ大阪の会場から自分宛てに着払いで発送した荷物を、ヤマト運輸の営業所で受け取り、そのあとコメダでこれを書いています。窓越しに夜気のつめたさがつたわり、外からは虫の声がとぎれることなく聞こえてきます。 　京都に宿を取ったのは、土地勘があること、万博のせいか大阪で良い条件の宿が見つからなかったことが理由でした。文フリ会場のインテックス大阪までは、阪急と大阪メトロ、ニュートラムを乗り継いで二時間弱。臨海エリアに立地して複数のホールを擁すること、床面積の広さ、天井の高さ、などビッグサイトと雰囲気はかなり似ています。 　昨冬の東京に比べれば通路が広く取られており、空間に余裕がありました。それでも、開場前に一般入場の待機列ができていて、開場後もどんどん人が増えてゆき、通路も見本誌コーナーも溢れんばかりでした。麻子さんが文フリに「商業」を感じる空気になってきた、と書いていたことが、今回からこの大きな箱に移った大阪にも当てはまる気がします。なんとなく気になったブースで試し読みをして、思いがけない掘り出し物を連れて帰る、みたいな楽しみ方をする余地は、やはりもうあまり残っていないように感じます。 　短歌同人誌「遠泳」の最終号となる四号が、今回の新刊でした。遠泳は学生短歌会の卒業生でつくった同人誌で、笠木がいちばん年長にあたります。一号を出したのが二〇一九年一月の文学フリマ京都だったので、足かけ六年で四冊。のんびりしたペースでしたが、自然消滅せず、最終号を出せたのが何よりでした。梅田でお疲れ様会をして、二軒目には行かず、その代わりみんなでタピオカミルクティーを買ってその場で立ち飲みして、解散。京都住まいの後輩二人と一緒に阪急電車に揺られながら、これからの話をしながら、窓を流れていく家々の灯を眺めながら、吉原幸子のこんな詩を思い浮かべていました。 山の　高いところに ぽつんと一つ　灯がついてゐるのは 人が　あそこにもゐるのだ 泣いたり　笑ったりして 幸せは罪ではない もう長いこと 夜の海をみても　心が騒がないのは 不幸でなくなった証拠だらうか 　　　　　吉原幸子「通過Ⅳ」より／『昼顔』 　短歌を、書くことを続けていれば、会えなくなることはない。だから、烏丸駅から地上に出て二人と別れたときも、正直なところそんなにさみしくもこわくもなかった。 　でも、同時に、そう言ってしまえるのは自分が単著も出していて、賞ももらい、ある程度の実績や立場をすでに得られているからだ、とも思います。こんなのは生存者バイアスで、「続けていれば会えるよ」は「どうして続けないの？」と背中合わせのやっかいな呪いだから、決して押しつけてはいけないはずです。 　そういう呪いをあえて選んで、手放して、それきりになったり、ふたたび手を伸ばしたり。多くは二足のわらじを履きながら、この不毛ないとなみを持ち寄る場所としての文学フリマから、呪いが脱臭されてしまわないことを願います。もしくは、ほかの場所で、べつな呪いの咲かせ方を探っていくしかないのでしょう。 交換日記本『日記に幕は下りません』より引用。以下、4枚分の画像のテキスト。 　そのあともう一件お茶の約束があり、解散してから市バスに乗って、大学時代に住んでいたあたりをぶらぶら歩きました。いつ前を通っても甘い匂いを漂わせていたケーキ屋さんで、いちごのショートケーキを買いました。帰りのバスはなかなか進まず、紙箱の底にふれると、保冷剤の汗がじわじわとしみてきているのがわかります。川端四条のバス停、つまり南座の真ん前で停車したタイミングが、ちょうど終演直後だったらしく、上気した顔がどんどん流れ出てきます。 　その顔のどれもに、一人に一つの人生がある。 　眺めていたら、なぜか急に、閃光のように思い至りました。いえ、思い出しました。世界中どこでだってそうなのに。 　その途方もなさに胸が裂けるような、あたたかな灯がともるような。なつかしくてたまらない気持ちになりながら、けれども、安穏とこんな感慨にふけるのは罪ではないかとも思いながら、自分一人のためのケーキの箱を抱えて座ったまま、夜を運ばれていったのでした。 ９月16日（火） 　昨日は夕方まで京都を一人でぶらぶらして（髪も切ってきました）、富山の自宅に帰り着いたのは夜の九時前でした。連休明けにもう一日休みを取っていたので、今日は家でぐったりと過ごし、夕方になって外に出ました。おとといの日曜日、文学フリマ大阪の会場から自分宛てに着払いで発送した荷物を、ヤマト運輸の営業所で受け取り、そのあとコメダでこれを書いています。窓越しに夜気のつめたさがつたわり、外からは虫の声がとぎれることなく聞こえてきます。 　京都に宿を取ったのは、土地勘があること、万博のせいか大阪で良い条件の宿が見つからなかったことが理由でした。文フリ会場のインテックス大阪までは、阪急と大阪メトロ、ニュートラムを乗り継いで二時間弱。臨海エリアに立地して複数のホールを擁すること、床面積の広さ、天井の高さ、などビッグサイトと雰囲気はかなり似ています。 　昨冬の東京に比べれば通路が広く取られており、空間に余裕がありました。それでも、開場前に一般入場の待機列ができていて、開場後もどんどん人が増えてゆき、通路も見本誌コーナーも溢れんばかりでした。麻子さんが文フリに「商業」を感じる空気になってきた、と書いていたことが、今回からこの大きな箱に移った大阪にも当てはまる気がします。なんとなく気になったブースで試し読みをして、思いがけない掘り出し物を連れて帰る、みたいな楽しみ方をする余地は、やはりもうあまり残っていないように感じます。 　短歌同人誌「遠泳」の最終号となる四号が、今回の新刊でした。遠泳は学生短歌会の卒業生でつくった同人誌で、笠木がいちばん年長にあたります。一号を出したのが二〇一九年一月の文学フリマ京都だったので、足かけ六年で四冊。のんびりしたペースでしたが、自然消滅せず、最終号を出せたのが何よりでした。梅田でお疲れ様会をして、二軒目には行かず、その代わりみんなでタピオカミルクティーを買ってその場で立ち飲みして、解散。京都住まいの後輩二人と一緒に阪急電車に揺られながら、これからの話をしながら、窓を流れていく家々の灯を眺めながら、吉原幸子のこんな詩を思い浮かべていました。 山の　高いところに ぽつんと一つ　灯がついてゐるのは 人が　あそこにもゐるのだ 泣いたり　笑ったりして 幸せは罪ではない もう長いこと 夜の海をみても　心が騒がないのは 不幸でなくなった証拠だらうか 　　　　　吉原幸子「通過Ⅳ」より／『昼顔』 　短歌を、書くことを続けていれば、会えなくなることはない。だから、烏丸駅から地上に出て二人と別れたときも、正直なところそんなにさみしくもこわくもなかった。 　でも、同時に、そう言ってしまえるのは自分が単著も出していて、賞ももらい、ある程度の実績や立場をすでに得られているからだ、とも思います。こんなのは生存者バイアスで、「続けていれば会えるよ」は「どうして続けないの？」と背中合わせのやっかいな呪いだから、決して押しつけてはいけないはずです。 　そういう呪いをあえて選んで、手放して、それきりになったり、ふたたび手を伸ばしたり。多くは二足のわらじを履きながら、この不毛ないとなみを持ち寄る場所としての文学フリマから、呪いが脱臭されてしまわないことを願います。もしくは、ほかの場所で、べつな呪いの咲かせ方を探っていくしかないのでしょう。
November 25, 2025 at 12:30 PM
fakefakefur.bsky.social
来年こそ地方文フリに出てみようかな。
November 25, 2025 at 2:43 AM
fakefakefur.bsky.social
文学フリマ東京41とその前後の3日間ありがとうございました。
November 24, 2025 at 1:39 PM
fakefakefur.bsky.social
帰宅
November 24, 2025 at 1:38 PM
fakefakefur.bsky.social
ここ数回のざっっくりした所感なんだけど、ブース出す側が同人活動なのに引けを取らないくらい、一般来場者も「活」になってきている気がする。
November 23, 2025 at 8:54 AM
fakefakefur.bsky.social
月がすっごく細くて良いのでみんなみて！
November 23, 2025 at 8:42 AM
fakefakefur.bsky.social
お腹空きの助
November 23, 2025 at 8:40 AM
fakefakefur.bsky.social
このポストは滑りスマホ（動く歩道の上でスマホをさわる行為）によりお送りしております。
November 23, 2025 at 8:39 AM
fakefakefur.bsky.social
撤収〜
November 23, 2025 at 8:27 AM
fakefakefur.bsky.social
【て-82】みなそこすなどけい
設営完了です！
文学フリマのブースの写真。卓上に冊子が並んでいる。
November 23, 2025 at 3:10 AM
fakefakefur.bsky.social
みんな即売会でブースに敷くいい感じの布どこで見つけてきてるんですか？
November 23, 2025 at 12:48 AM
fakefakefur.bsky.social
本日です！
お待ちしています
fakefakefur.bsky.social 笠木拓 @fakefakefur.bsky.social · Nov 15
11月23日(日)文学フリマ東京41＠東京ビッグサイト

【て-82】みなそこすなどけい

おしながきです。
【て-82】みなそこすなどけい （南3・４ホール）　　 文学フリマ東京41 2025年11月23日（日） @ 東京ビッグサイト 　 《新刊》 『日記に幕は下りません　Act 2』　交換日記　文庫判・120頁・800円 ☆柳川麻衣さんとの交換日記本の２冊目です。 　2021年から2025年にかけての日々をゆったりとしたペースで綴っています。 ☆解説はライター、アナーカ・フェミニストの高島鈴さん！ 『Dressed to the 9ueer ―お気に召すまま』クィア×服飾アンソロジー　300円 ★短歌連作「馬手に鰭、弓手は翼」10首で参加しています。 ☆メンバーは笠木拓、桔乃一三千、左久間瑠音、食べ機、並木満、山城周。企画は桔乃さんと山城さんです。文フリ初売り。 《既刊》 『日記に幕は下りません』交換日記　文庫判・172頁・800円 ☆交換日記本の第1弾。2019年11月から2020年10月までの1年間の日記です。 『遠泳　4号』短歌同人誌　B6判・36頁・500円 ★短歌連作「薄ら氷」13首を載せています。 ☆メンバーは笠木拓、北村早紀、坂井ユリ、中澤詩風、松尾唯花 ☆４号は東京初売り！　既刊2号、3号も持っていきます。 『A面直方体』短歌朗読カセットテープ　1000円　※再生機器なくてもDLして聴けます！ ★短歌連作「私淑」11首の自作朗読で参加しています。 ☆メンバーは岡野大嗣、笠木拓、北虎あきら、谷川由里子、千種創一、初谷むい 『イミテーション・リリィ』小説　文庫判・76頁・400円 ☆笠木の個人誌。連作短編小説集です。
November 22, 2025 at 11:42 PM
Reposted by 笠木拓
hempandwillow.bsky.social
2冊並べるとこんな感じ📚
2冊の文庫サイズの本が並べられている。 赤い緞帳の柄にチケット風の図柄 「笠木拓　柳川麻衣 日記に幕は下りません 2019. NOVEMBER - 2020.OCTOBER」 青い緞帳の柄にチケット風の図柄 「笠木拓　柳川麻衣 日記に幕は下りません　Act2 2021 MAY - 2025 SEPTEMBER」
November 22, 2025 at 6:21 AM
Reposted by 笠木拓
hempandwillow.bsky.social
『日記に幕は下りません ACT 2』ひとあし先にうちに届いた〜！！今回はブルー系の表紙に本文を「牡丹色」で刷っています。明日の #文学フリマ東京41 て-82【みなそこすなどけい】さんで手に入れてくださいね✨✨
青の緞帳の柄にチケット風の図柄 「笠木拓　柳川麻衣 日記に幕は下りません　Act 2 2021. MAY - 2025.SEPTEMBER」 本を開いたところ。赤色で刷られた本文が見えている。
November 22, 2025 at 6:15 AM
Reposted by 笠木拓
fakefakefur.bsky.social
11月23日(日)文学フリマ東京41＠東京ビッグサイト

【て-82】みなそこすなどけい

おしながきです。
【て-82】みなそこすなどけい （南3・４ホール）　　 文学フリマ東京41 2025年11月23日（日） @ 東京ビッグサイト 　 《新刊》 『日記に幕は下りません　Act 2』　交換日記　文庫判・120頁・800円 ☆柳川麻衣さんとの交換日記本の２冊目です。 　2021年から2025年にかけての日々をゆったりとしたペースで綴っています。 ☆解説はライター、アナーカ・フェミニストの高島鈴さん！ 『Dressed to the 9ueer ―お気に召すまま』クィア×服飾アンソロジー　300円 ★短歌連作「馬手に鰭、弓手は翼」10首で参加しています。 ☆メンバーは笠木拓、桔乃一三千、左久間瑠音、食べ機、並木満、山城周。企画は桔乃さんと山城さんです。文フリ初売り。 《既刊》 『日記に幕は下りません』交換日記　文庫判・172頁・800円 ☆交換日記本の第1弾。2019年11月から2020年10月までの1年間の日記です。 『遠泳　4号』短歌同人誌　B6判・36頁・500円 ★短歌連作「薄ら氷」13首を載せています。 ☆メンバーは笠木拓、北村早紀、坂井ユリ、中澤詩風、松尾唯花 ☆４号は東京初売り！　既刊2号、3号も持っていきます。 『A面直方体』短歌朗読カセットテープ　1000円　※再生機器なくてもDLして聴けます！ ★短歌連作「私淑」11首の自作朗読で参加しています。 ☆メンバーは岡野大嗣、笠木拓、北虎あきら、谷川由里子、千種創一、初谷むい 『イミテーション・リリィ』小説　文庫判・76頁・400円 ☆笠木の個人誌。連作短編小説集です。
November 15, 2025 at 4:06 PM