奥までいれるのでかなり苦しそうな表情を見せる
鼻からも取る
「今日はお昼にリハビリで座ったから、たんが上がってきちゃったかな」
と看護師さんが言う
僕は驚いて聞き返した
「え？！　座ったんですか？」
「ええ、2分ぐらい頑張りました」

身体を起こすようなリハビリをしてくださっているのに
僕は泣きそうになり、妻に話しかけ続けた

「頑張ったね、頑張ったね」

妻の声を聞いたのは4年ぶりだった
何かの勘違いなのかもしれないけれど
確かに聞いたのだと思う

状況を確認し看護師の方に氷嚢を追加してもらった

少し落ち着いたかなと思い
もんたんの動画を見せるけれど、いつもは凄く集中して見るのに、今日は気もそぞろな感じだった
おだやかな感じではなかったけれど
赤毛のアンの読み聞かせを始めた
今日は第七章アンの祈りだ
頁をめくって2行ほど読み聞かせた頃不意に「うー」と言う声が聞こえて僕は朗読をやめ、しばらく妻に話しかけたけれど、苦しそうに眉間にしわを寄せて赤らんだ顔で何かを訴えようとしているような表情をずっと見せていた
看護師に声をかけ、声が出るような事があるのかと尋ねたけれど
気管切開をしているのでそれはありえないと言われた