「仲代達矢か、皇太子か」には、「彼が男を愛することを後めたい気持なしに考えられる女達つまり性的に自由な女達に人気があるということです」というフレーズも出てきて、「男を愛する」主体をまず「彼が」と読んで、（1959年の時点でいわゆる「腐女子」目線？先鋭的だ）と刮目しかけ、おそらくは「男を愛することを後ろめたい気持なしに考えられる女達」に「彼」が「人気がある」ってことか、と考え直したのですが、「彼が男を愛することを、後ろめたい気持なしに考えられる女達」でも意味は問題なく通るように書いてある気もします。

じぶんも文学はつねに実学だと思っていたが、あまりにも文化に対して敬意を払わないひとが増えた実感。部屋の灯がひとつひとつ消えていってる家にいる気分に陥りそう。

『あのこと』の、アンヌが教授に言う強烈なセリフ「女がかかる主婦になる病気になっていました」は原作になくて、映画脚本のオリジナルっぽい。あっぱれ。

『アザーズ』は中学生当時観たきりだけど、一番印象に残ってるのは、幼いきょうだいが勇気出して夜道を歩くとき「（怖いから）何かお話して」という弟と、適当にあやす姉のたくましさ。なんでもないシーンだけど、似たような細部がデビュー作にもあって作家性を感じられキュンとなる