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【レビュー】塗らなくても映える、組むだけで惚れる/「エアフィックス 1/72 ウェセックス HC.2」がもたらす最高のヘリ模型体験。 #キットレビュー #軍用機・旅客機 #nippper #プラモデル
【レビュー】塗らなくても映える、組むだけで惚れる/「エアフィックス 1/72 ウェセックス HC.2」がもたらす最高のヘリ模型体験。
 ヘリコプターの飛行機というと、僕はこれまで5機くらいしか組んだことがありません。そんなヘリコプタープラモ体験の中でもぶっちぎりに楽しくて、パーツを眺めるたびに「カッコ良すぎる!」と唸ってしまったのが、この「エアフィックス 1/72 ウェストランド ウェセックス HC.2」です。英国のプラモデルメーカー・エアフィックスが、2025年に完全新規金型で送り出してきたバキバキのプラモデルになります。  まずはこの本体パーツの佇まいを見てください。これまでのエアフィックスの良さでもあるメリハリある彫刻は健在なのですが、決して野暮ったさはなく、彫刻に深さもあることからさらに立体感が増しています。この存在感によって、パーツを眺めるだけ・パーツをそのまま貼って素組みするだけでも最高にかっこいいヘリコプターがあなたの机上に爆誕します。塗る人だけがスケールモデルのかっこよさを表現・体感できるヘリコプタープラモではありません。  こちらはキットのバージョンとは異なりますが、イギリス・ヘンドンのロイヤルエアフォースミュージアムで見たウェセックスHCC4。胴体先端にあるエアインテーク部分がチャームポイント。このヘリコプターはアメリカのシコルスキー S-58を、英国がライセンス生産したもの。運用しながらイギリス独自の改修が加えられ、多方面で活躍したことにより、英国でも認知度の高いヘリコプターとなったそうです。  キットは、ローターおよび機体尾部を折り畳んだ状態も選択可能。そのため展開状態と折り畳み状態用のパーツが混在するので、パーツ数は多く見えます。実際に組んでみると、使うパーツは限られてくるので、見た目よりもカロリーは低いです。  内部のパーツも素晴らしく、その中でもこの椅子はシートの皺の雰囲気まで表現されています。キャビン内に多数の椅子をセットした瞬間、このヘリコプターはこんなに人乗せられるんだ! と椅子が教えてくれるのです。  展開状態のローターは、自重で弛んだ形状で成形されています。この絶妙なカーブが、組み上がったヘリの色気を加速させます。  窓のクリアーパーツの透明度も抜群! 本体同様、クリアーパーツにもめっちゃメリハリある彫刻が施されています。これは塗り分ける人にとってもガイドになって嬉しいですね!  横並びの2人席の合いもピッタリ。コクピット内のパーツがカチカチと合わさっていくので、左右の胴体を貼り合わせるときもガタついたりしません。スイッチ部分のディテールも最高ですね。  そしてアイコンとも言えるエアインテークパーツは、別パーツとして分割されています。このパーツが、胴体にピタリと合わさって、まさにイギリス味を感じるへリコプターのシルエットが爆誕します。インテークのネットパーツは彫刻で表現されています。細かな彫刻によってパーツの情報量がここだけすごく上がっています。プラスチックのパーツだからこその味わいがある部分だなと思っていて、個人的にすごくかっこいいと思っているポイントです。  尾部の部分は折りたたみ箇所で分割されています。ここは接着面積が他のパーツに比べて狭いので、慎重に接着しましょう。  完成!! ローターや尾部の折り畳みのほかに、窓の開閉なども選択できるので思い思いのシルエットをや情景を追求できます。  でも、何よりもこの組んだだけでも非常に存在感あるプラモデルの佇まいに僕は一瞬でやられました。この状態で今部屋のお気に入りスポットに展示しています。2025年生まれの最新エアフィックスの旨みが凝縮されているプラモ。このヘリコプタープラモからエアフィックスの味を知ることができる幸せな人が1人でも増えることを願っています! 最高なのでぜひ!!
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November 9, 2025 at 12:00 PM
無責任なデカさが欲しい/Valom 1:72 Handley Page H.P.54 Harrow #キットレビュー #軍用機・旅客機 #nippper #プラモデル
無責任なデカさが欲しい/Valom 1:72 Handley Page H.P.54 Harrow
 たまに大きな飛行機が作りたくなる。綺麗に箱に収まったプラスチックの部品を言われるがままに組み立てるととんでもない大きさになって、ものすごい高揚感に包まれるのと「これはどこに置くのだろうか」と困惑するといった二つの感情に同時に襲われるのがたまらなく気分がいいのだ。無責任にそういうことをできてしまうというか。  Valomの1/72 Handley Page H.P.54 Harrowは翼がほとんと映らないくらいの構図で書かれた箱絵が印象的だった。予想もつかない大きさを期待させるのも良いと思って購入した。1/72というスケールで完成サイズがものすごく大きい飛行機のプラモデルを作るのは初めてで、パーツを見るとコックピットと機体の大きさのギャップに改めてデカさを感じた。  箱を開けてみるとプラスチックの色がとても綺麗なベージュ色。この色ってたまに東欧のプラモデルメーカーで見かけることがあるけど、箱を開けてみるまでわからないので出会えるとラッキー。それ以外にも、ものすごい小さいエッチングパーツとレジンでできたエンジンが入っていて、見た目は大きい飛行機だが細かい部分も再現していくぞという気持ちを感じる。  組み立てようとしてパーツを切って合わせてみるとちょっと変わった作り心地であることに気づく。切り欠きを頼りにパーツを合わせたり、薄く引いてあるスジ彫りが接着剤をいい感じに逃がしてくれたりと些細な工夫が組み立てをガイドしてくれている点がそれで、意味がわかると容量がつかめてくるのが新鮮だった。 言語や文化風習が異なる国の人と共通のテーマでコミュニケーションが取れたような感覚は「Valomへの理解が進んだ」と言いたくなるような気持ちにさせてくれる。  エッチングパーツがものすごく柔らかくて、シートベルトをシートに追従させるのはたやすいが、手元で操作するレバーは小ささもあってグニャグニャとした仕上がりになった。それでも「ここまで手を入れたんだ」と思える達成感はひとしおだった。 胴体に座席をつけてみると改めて実感するけど、この飛行機は本当に大きい。翼をつけたらとんでもないことになりそうだが、完成した姿を早く見たいし、「作ったはものの……」と部屋をそそくさと片付ける時間も楽しみである。
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November 7, 2025 at 11:00 AM
手のひらサイズの決定版!「HMA 1/144 グリペン」は、武装てんこ盛りのスゴイやつだった! #キットレビュー #軍用機・旅客機 #nippper #プラモデル
手のひらサイズの決定版!「HMA 1/144 グリペン」は、武装てんこ盛りのスゴイやつだった!
 高速道路を滑走路代わりにして離着陸できてしまうという、スウェーデンが生んだコンパクトファイター「JAS39 グリペン」。その独特のデルタ翼とカナード翼が織りなすフォルムは本当に美しいです!  このグリペン、1/144スケールではこれまで「これぞ決定版!」と言えるキットになかなか恵まれていませんでした。しかしそんな中で誕生したHMA 1/144 グリペンは、まさに私の渇望を満たしてくれる、最高のキットになりました。今回は、デカールとパッケージが一新された「リニューアル版」を無塗装で素組みして、その魅力をじっくりとレビューします!  シャープ!そして薄い!「キリッ」としたパーツたち。パーツを眺めて驚くのがそのシャープさです。1/144スケールでは、どうしても厚ぼったくなりがちな主翼や各動翼の後縁が、しっかりと薄く成形されています。パーツの形状も全体的に「キリッ」としていてダルさを感じさせません。  機体表面のパネルラインも、くっきり、かつ繊細に彫刻されています。これは塗装派の皆さんにとっても嬉しいポイントですね。塗装後にスミ入れ塗料を流し込むだけで最高に映えること間違いなしです! またキャノピーも薄く透明度が高いので、コックピットの中もしっかりと見ることができ、完成後の満足度をグッと高めてくれます。 このキットを組んでいて僕が特に好きになったポイントは、武装パーツがめちゃくちゃ充実していることです!  1/144のキットだと、武装は「おまけ程度」だったり、そもそも付属しなかったりすることも珍しくありません。しかしHMAのグリペンでは、空対空ミサイルや対地ミサイルなど、3種類ものミサイルに加えて、偵察ポッドにセンタータンクも付属しているのです。「今回は空戦仕様でいこう」「いや、対地攻撃仕様も捨てがたい…」。そんな風に自分の好きな武装パターンを自由に選んで搭載できる。これは本当に楽しいです!  組み立てはサクサクと進み、あっという間に手のひらにすっぽりと収まる、可愛くて、それでいて凛々しいグリペンが完成しました。今回のリニューアル版は、デカールも刷新されています。たくさんのマーキングの中から、自分の好きな機体を選んで仕上げる楽しみも待っていますよ。ぜひ皆さんのお気に入りのグリペンを作ってください!
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November 6, 2025 at 11:00 AM
文学とプラモの交差点──F-86セイバーと楽しむ村上春樹の世界/「風の歌を聴け」 #キットレビュー #軍用機・旅客機 #nippper #プラモデル
文学とプラモの交差点──F-86セイバーと楽しむ村上春樹の世界/「風の歌を聴け」
 世の中に「飛行機やプラモデルについて書かれた本」はごまんと存在する。プラモをメインに据えたホビー雑誌は国内外の隔なく何タイトルも存在するし、写真集や資料本など数えきれない。しかし、文中で飛行機や戦車、プラモデルが登場するのは何も専門誌だけではない。小説を読んでいるとふとした場面で美しい銀翼の戦闘機が登場して、快晴の青と日光を受けてギラギラと輝く銀翼とのコントラストが頭から離れなくなってしまうこともある。村上春樹のデビュー作『風の歌を聴け』もそういった印象を与えてくれる小説だ。  『風の歌を聴け』は1970年の夏、大学生の僕が友人の「鼠」やジェイズ·バー、店主のジェイや様々な女の子たちとの出会いや別れを描いた小説で、村上春樹が発表した初めての作品だ。全部で40の章で構成される中、第31章で以下のようなシーンが登場する。  晴れわたった空を、何機かのジェット機が凍りついたような白い飛行機雲を残して飛び去るのが見えた。 「子供の頃はもっと沢山の飛行機が飛んでいたような気がするね。」(中略) 「P38?」 「いや、輸送機さ。P38よりはずっとでかいよ。とても低く飛んでいた時があってね、空軍のマークまで見えたな。・・・・・・あと覚えてるのはDC6、DC7、それにセイバージェットを見たことがあるよ。」  村上春樹『風の歌を聴け』講談社,2004年,114~115頁  「僕」と「鼠」がホテルのプールで空を見上げて昔の思い出に触れるシーンだ。これを読んだ私は、ふと模型棚の中にセイバーのキットを積んでいたのを思い出した。「フジミ 1/72 F-86-F40 バリューセット」。バリューセットの名の通り、各航空団のデカールにブルーインパルスのデカールをセットした何とも贅沢な一品。ブルーインパルスカラーも捨てがたいなぁ・・・・・・などと思いながら、先ほど読んだシーンを思い返す。  この綺麗な流線型の機体を組み立てて銀色に塗り、あのシーンのような青空に浮かべてみたらきっと清々しいだろうなぁとパーツを撫でてみる。塗装前の、組み立ててすらいない(主翼だけは過去の自分が組み立てていた)パーツのツヤ感と繊細な筋彫りが美しい。しれっと空対空ミサイル「AIM-9 サイドワインダー」が付属しているのも嬉しいポイント。ところどころに見えるバリも、このキットが長年愛されてきたことをうかがわせる。   『風の歌を聴け』以外にも、飛行機が登場する作品は多数ある。本を読み、作中に登場した飛行機のプラモを手元に置いて、作品世界に二度没入する。プラモ好きだからこそできる作品の読み解き方、ぜひお試しあれ。
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November 5, 2025 at 1:00 PM
【ブックレビュー】「映画に模型で対峙する」ということ/スケールアヴィエーション『王立宇宙軍 オネアミスの翼』特集号 #ロボット・アニメメカ #軍用機・旅客機 #雑誌と書籍 #nippper #プラモデル
【ブックレビュー】「映画に模型で対峙する」ということ/スケールアヴィエーション『王立宇宙軍 オネアミスの翼』特集号
 模型雑誌の特集と言ったらテーマに沿った作例の数がそろえば成立していると捉えるのが通例なんだけど、ちょっと今回の『王立宇宙軍』特集号はそういう次元じゃない完成度。好きなアニメの特集だからとかそういうことではなく、パラパラとめくっても気分よく、じっくり読んでも面白い「この先繰り返し読み返すことになる」一冊に仕上がっていると思う。  毎月出ることになる月刊誌における"偶発的にできてしまった傑作号"というわけではない。企画段階から「際立った特集をやるぞ」という気概で作られているのが石塚編集長の所信表明のようなイントロダクションからもそれがわかる。SA誌は誌面全体をシックな雰囲気にまとめてくる雑誌なので、表紙をめくってからこの所信表明のようなイントロまで気分を乱さずシームレスにつないでくれる。 また、他の雑誌の作例記事フォーマットに慣れていて、今回初めてSA誌を買う人は驚くかもしれないけれど、基本的に各作例にはいわゆる”担当モデラーによる製作文”は存在しない。  作例記事は完成写真をひとしきり見せた後に置かれる各部アップや製作途中写真とそれに対する短いキャプションで構成される。担当モデラー毎の「自分もこれには思い入れあるんですよ」といったタイプのテキストは全くない。パラパラと流し見したときに見える本文は、実は製作文ではなく「この作例がどういうモチーフのどういう魅力を表現するべく作られたものであるか」という編集部による解説文なのだ。 おかげで一貫した視座で各作例を読み解いていくことができる。あくまでも『王立宇宙軍』という映画を模型雑誌の特集として、当時映画を見ていない層まで含めた万人に向けてキュレーションするという態度でできているのだ。  「自分は好きだけど誰でも知ってるヒット作品とは言えないような立ち位置の作品」をどうやって提示するのか?しかも雑誌を丸々費やす規模の特集で……という難題に、今号はみごとに回答してみせている。好きなタイトルでも初見の感動には何を見てもかなわないとか、自分も歳をとったからとか、もう模型誌でこんな満足を得られないだろう……とあきらめていたところに青天の霹靂。模型雑誌ってメディアにまだまだ期待を抱いていいものなんだなと思えて、それが嬉しかった。 自分が紹介するまでもなく方々で評判であるがゆえ、月刊誌なのに重版までかかったそうだ。だから重版が並んでまだこの雑誌が書店の棚に刺さっているうちにもうひと押ししておきたいと思ったんだ。この映画が好きな人にはぜひ読んで欲しいし、まだ見ていなくてこの本を読んだなら映画を見てほしい。一本の映画とそれを模型を通して対峙し、一冊の紙の本にまとめる在り方というのを考えてみてほしい。これはそういう当てられかたをしてしまう熱量にあふれた号だから。
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October 30, 2025 at 1:00 PM
ハセガワのA-10を無人機にするために手に入れた意外な武器の話 #軍用機・旅客機 #nippper #プラモデル
ハセガワのA-10を無人機にするために手に入れた意外な武器の話
 わたしがA-10を初めて知ったのは、往年のSLG『大戦略』だった。ゲームの序盤から比較的安くで生産できて、特異なシルエットから放つガトリング砲で敵地上兵器をなぎ払う姿をよく覚えている。ただ大戦略でA-10は花形になりきれなかった。都市を占領して使える軍資金が増えれば、A-10は戦闘ヘリによる物量作戦に取って代わられる。A-10はいつも戦場の名脇役で終わってしまい、わたしのなかではまさに「記録よりも記憶に残る攻撃機」だった。  ハセガワの1/72A-10Cを手に入れたのは、近所の模型屋の閉店セールでだった。しかしいざ組むとなると、想像以上に解像度が低い。「A-10ってどんな戦闘機だったっけ?」。ああでもない、こうでもないと調べるうちにハセガワがUAV仕様のオリジナルのA-10をキット化していることを知る。空想兵器なら自由にやれる、腹が決まった。  ハセガワのA-10を作っていて最初に気づいたのは「兵装のスカスカ感」だ。説明書通りに組むとなにがどうあっても物足りない。しばしランナーを眺めていると、説明書に「このパーツは使いません」とある箇所に大量の爆弾パーツが残っていることに気付いた。そこで余剰パーツを切り出し、A-10の実物画像を参考にすべてのハードポイントを埋めた。唯一付属していなかったECMジャマーだけ、同じくハセガワのエアクラフトウェポンから持ってきたのは小さなコダワリだ。  UAV化の要でもあるキャノピーの改修は山場だった。風防を外し、どう塞ぐか。イメージはあるが、適した部品が見つからない。三日ほど考え続けた末、画像検索でたった1件ヒットしたなかにヒントはあった。「カニスプーン」。善は急げと近所の100円ショップに走る。物は試しと被せてみたら奇跡的にピタリとはまった! さらには被せたヘッドの重みがちょうどよく、機首側に重りを入れずとも尻もちをつかなくなったのはありがたい偶然の産物だった。  大戦略のなかではただただ青かったA-10を今回はスプリッター迷彩にした。A-10に関する知識が大戦略で止まっていたからこそ自由にやれた。ゲームの盤上で戦場を駆け巡ったわたしのA-10は、わたしのなかだけにある。  庭の砂利のうえに置くと、迷彩が周囲に溶け込み見えなくなった。これには正直驚いた。何事もやってみないとわからない。偶然に左右されながらも「やってみたい」という思いにだけ忠実に作ったオリジナルのA-10。自分だけの誕生秘話である。
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October 29, 2025 at 11:00 AM
擬人化元の会社が「ボロボロの会社を高値で売りつけるのに成功した」とか言われているのでMD組は(弊擬設定では合併後もボ一イングに食われるまで旅客機部門のDと軍用機部門のMとして2人でひとつの存在やってた)両方自分の弱さを隠すのがうまいのですが、内訳は主(株主・オーナー)から虐待(企業擬人としては「経営のことちゃんと考えてくれない」などが虐待に含まれるという認識がある)されるようになっていく中でうまい取り繕い方を身につけたDとそんなDを模倣しているMです。
October 28, 2025 at 2:44 PM
全日本模型ホビーショーの衝撃。完全新作「タミヤ 1/72 F-14D トムキャット」が待ちきれない!!! #イベント #軍用機・旅客機 #nippper #プラモデル
全日本模型ホビーショーの衝撃。完全新作「タミヤ 1/72 F-14D トムキャット」が待ちきれない!!!
 この部分がですね……と説明のために取り出したF-14が、あれよあれよという間に細分化されていく。接着剤をつけていないのに、カウルのサイドにしっかりついている主脚。コクピットなどの最小単位までバラして、また組み立てる。段差ひとつない構造、精度、航空機模型の常識が破壊されていく……。  タミヤがホビーショーに隠し玉を持ってきた。設営日のタミヤブースには、厳重なパーテーションがなされていたという。F-14は、航空機メーカーが勝負をしたいときに選ぶモチーフ。『TOPGUN』で主役を張った映画スターであり、これはけんたろうの主観ではあるが、画になる角度がとても多い"美人"なのである。何なら戦闘機なら零戦の次に人気と言っても差し支えないだろう。  F-14D、ということは2006年に退役した晩期の姿ということになる。エンジンはより新しいF110へと換装され、コクピットを第四世代戦闘機のように液晶のグラスコクピット化し、もはやあまり撃つ相手もいない空対空ミサイルフェニックスの変わりにレーザー誘導爆弾を装備、それにともないターゲッティングポッドを装備、さらに翼のミサイル取り付け部のパイロンも高機能なものに換装、と空軍のF-16、F-15に引けを取らないような性能になった姿なのだ。  タミヤは当然のようにそのあたりの差異は心得ている。2016年から1/48のF-14を発売していて、そのときに現代的ジェット戦闘機のプラモのひとつの到達点を築いて居るからだ。全体のシルエットはもちろん、隙間ない精度から生まれる翼の可変時への本体変化部差し替え、接着がキレイに決まるパーツ分割、クリアーパーツへの大きなのりしろなど、実機の再現性だけでなく組み立てへの配慮が行き届いていた。自分は当時「世界で唯一"組める"ジェット戦闘機」と絶賛していたほどだった。  F-35シリーズでは1/48を先行して発売し、1/72では単なる縮小にせず美味しいところを魅せていくという考え方だったが、今作は10年越しの濃縮還元版。翼の開閉は連動し、本体側のシーリングも差し替えで再現。1/72では上面翼の根本パネルライン1枚分を差し替えメンバーに加えてしっかり強度を確保しに行くちょっとした気の利いた変更も入っている。  同梱のミサイルのなかでは中サイズのスパローミサイルはなんと翼まで一体化され、組み立てのなかで大変なところは整理が進む。インテークは実機の境目同様に奥側を分割し、パーツを縦に抜くことで合わせ目がないトンネル状態になっている。そのうえでカウルや本体と内外のパーツがピッタリ合わさるので、私はそれを見ながらこんな精度と設計はタミヤしかできないと感嘆したのである。  さらに恐るべしはマーク類を5種用意。展示された黒いヴァンパイアーズのF-14は兵装試験の部隊ながら、ミサイル装着部はグレーという、特別カラーあるあるな部分も再現。そして、今回特徴的なのはマーキングを選んだ段階でミサイル兵装も選択される形式。部隊と年代が紐づいたうえでそのころの兵装もいっしょにパッケージングされている。フェニックスミサイルは2004年に一足先に退役したのもあって、5パターンのマークを選べばそのまま武装が決定されるようになった。戦闘機の兵装で悩むことはけっこう多いので、ここが先に決まっているのは実は偉大なのだ。  個人的に毎回タミヤのF-14、ひいては航空機で痺れるのは、ディテールが何なのか理解したうえで強弱をつけたり、表面の表現を変えるところだ。ここは動翼だからスジを太くする、パネルラインだから細くする……そういった機能を理解したうえで刻まれたディテールが本物を縮小したかのように機能する。1/72でもそのディテールが炸裂。翼の上面で別パーツのように反射する部分が見えるが、これは実機ではスポイラーで立ち上がる部分で、同じパーツでも翼とは曲率を変えた表現になっている。これがタミヤらしい機微のある、本物らしさを捉えた表現である。  デカールによる可変翼可動部の汚れ表現や、ディテールとデカールの組み合わせで立体感を強調するコクピット、意外とそのままデカールを貼るだけでなんとかなりそうな成形色……。精度だけでなく、作ることに気を回したサポートも充実している。やはり「"完成できる"ジェット戦闘機プラモデル」はここにある。発売日は未定ながらもうすぐ出せる雰囲気もありつつ、3スケール揃い踏みパネルの年号には2026年表記。まだ10月半ば、たった数ヶ月かもしれないが待ち切れない……! 新しいF-14とともに、ジェット戦闘機プラモデルがもっと楽しくなる時代が来ることは間違いない。
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October 20, 2025 at 1:00 PM
【工具レビュー】モデルアート監修!ステルス機専用の水性ホビーカラー「ライトニンググレー」が新発売!/ライトニンググレー2レビュー #軍用機・旅客機 #筆塗り #水性塗料 #塗料 #nippper #プラモデル
【工具レビュー】モデルアート監修!ステルス機専用の水性ホビーカラー「ライトニンググレー」が新発売!/ライトニンググレー2レビュー
 スケール模型雑誌「モデルアート」が監修した、ステルス機を塗るのにぴったりの専用色「水性ホビーカラー ライトニンググレー1」、「ライトニングレー2」が発売となりました! 水性ホビーカラーを愛用しているフミテシとしては嬉しい限り! 専用色ってやっぱり安心できるので、この塗料のおかげでステルス機の世界へと気軽に飛び込んでいけますね。前回の「1」に引き続き、今回は「2」の特徴をレビューします!  GSIクレオスHM02 水性ホビーカラー MODEL Art ステルス機カラー ライトニンググレー2  「ライトニンググレー2」の最大の特徴はメタリック塗料であること。ソリッドなグレーの他に、F-35の表面に見えるうっすらとした粒子感あるグレーを、メタリック塗料で表現しようと開発されました。実機の雰囲気を塗料で表現するために、メタリック感はとってもマイルドになっていて、まもなくソリッドな塗料になっちゃうんじゃないの!? ってくらい抑えられています。  蓋を開けてみると、アイスクリームのクッキー&クリームのような表情でお出迎え。しっかりとグレーになるまで撹拌してから使用します。  塗料を出してみると……「え? 本当にメタリック塗料なの???」と一瞬ドキッとします。塗料を少し垂らしてみると、メタリックの粒子がキラキラと見えてきました。そこまでしないとはっきりとメタリックの粒子が見えてこない塩梅で調整しているのです。  まずはグレーのパーツに筆塗りをしてみます。確かにパーツの角などに金属粒子が多く引っかかって、キラキラと輝いているのがわかります。  エアブラシで均等に吹き付けてみると……とっても綺麗なライトグレー……。  曲面の多いズゴックに吹き付けてみます。曲面に反射している光も柔らかく、メタリック塗料でありながら、半光沢よりもつや消し寄りのツヤ感になっている印象。タミヤのフラットアルミのメタリック感をさらにマイルドにした塗料といった感じです。関節のグレーなどに使用すると、マイルドなメタリック感がアクセントになってくれそうですね。  本塗料を監修したモデルアートの記事を読むと、F-35に使うなら、塗装した上から半光沢でコートしてあげるとより実機の雰囲気に近くなるそうです。最後の1手が大事な塗料なんですね。  半光沢でコート。すると先ほどよりも光を反射するようになり、メタリックの粒子感もより目に入ってくるようになります(それでもまだかなりマイルド)。この絶妙なニュアンスが表現できるからこそ、ステルス機らしい塗面を表現できる「ライトニンググレー2」は、これまでのメタリック塗料には無かった表情を、調色無しで楽しめます。ぜひ1本手元に置いて、あなたの好きな模型に塗ってみてください。  
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October 19, 2025 at 12:00 PM
花金だ!仕事帰りに買うプラモ。現代の最強艦載機を最新キットで気軽に味わえる幸せ「タミヤ 1/72 ロッキード マーチン F-35C ライトニングII」 #キットレビュー #軍用機・旅客機 #花金プラモ #nippper #プラモデル
花金だ!仕事帰りに買うプラモ。現代の最強艦載機を最新キットで気軽に味わえる幸せ「タミヤ 1/72 ロッキード マーチン F-35C ライトニングII」
 週末の模型ライフが楽しくなっちゃうプラモを、フミテシの独断と偏見でお届けする「花金プラモ」。今週は、今現在1/72スケール飛行機模型において最高の組みやすさとかっこよさを体感できるプラモデル「タミヤ(TAMIYA) 1/72 ウォーバードコレクション No.94 ロッキード マーチン F-35C ライトニングII」をご紹介します。タミヤ 1/72 F-35シリーズのトリを飾る存在です。  急にこのF-35Cを作りたくなった理由が先日、編集長のからぱたとライターのけんたろうと事務所で打ち合わせをしていた時に出た「F-35Cって謂わば現代版の最強トムキャットなんよ」って言葉……。確かに艦載機(機体各部を航空母艦上で運用するために開発した機体。船に乗せるって大変だ!)だし、1機でさまざまな役割もこなせる。しかもステルス機……。そんな風に見ていると、このF-35Cの魅力をもっと知りたいと思えてきたのです。だったら、「タミヤのプラモを組むのが一番早い」。そう、知りたいモチーフがあったらプラモを組む……これはタミヤが教えてくれた最短の方法なのです。  F-35Cのキットの中には印刷物がたくさん! 説明書の他に、機体解説の冊子も入っています。F-35ってA型(空軍向けが通常の滑走路で使う)、B型(STOVL(短距離離陸/垂直着陸)を可能にしたタイプ)、そして今回のC型と3タイプあるのですが、この冊子ではC型を中心に他のタイプと何が異なっているのか? F-35の艦載機仕様ってどんな特徴があるの? ということが記載されています。組む前に読んでも組んでから読んでも、F-35Cという飛行機と仲良くなれるようになっています。  ステルス機の表面は、通常の飛行機とは異なる表情を見せています。しかも意外と塗り分けのパターンが細かいです。それをサポートしてくれる秘密兵器として、原寸のカラー塗装図がセットされます。コピーしてカットすればマスキングシートにもなりますし、筆塗りでF-35Cを塗る時は、塗り分け箇所を指差し確認して筆を進めていけます(タミヤのくっきりとしたディテールなら、筆塗り時もマスキングはほぼいらないでしょう)。さらにキャノピーなどのクリアーパーツ塗装を一気に快適にしてくれるマスクシールも付属! これはありがたいですね。  本キットは初手から僕たちに翼を畳むのか、展開するのかという「嬉しい選択」をもたらしてくれます。胴体と主翼の間に設けられた小さな桁。これをカットすると「畳んだ状態」、カットしない場合は「展開状態」になります。個人的にはF-35Cならではの翼をたたんだ状態を作りたいので、今回はカットしました。おかわりしたら、展開状態を作ろうと思います。F-35Cは他のタイプよりも大面積の翼となっているので、展開状態はその迫力をより楽しめます。  翼を畳んだ状態を選択すると、かっこいいヒンジパーツを使用できます。細かな彫刻がいけてますね!  折りたたんだ翼を、しっかりと固定できるように、翼内部には専用パーツがセットされます。この切り欠きが軸穴となり、翼をしっかりと支えてくれます。左右を間違えないように「R」と刻まれているのも嬉しいですね。  1/72スケールですが、内側の構造も見ながら本体を貼り合わせていけます。エアインテークからのメインノズルまでの道をあなた自身の手でシンプルに体感できるのです。  そして内側のパーツが入っていても、外側はピッタリと合う精度。さらに翼の各パーツをセットするために用意された無数の切り欠きもピッタリと合わさり、この後の工程になる翼パーツの取り付けにも一切支障は出ませんでした。気持ち良すぎる組み味です。  内側の取り付け軸に「スコン」とハマるとがっちりと固定される脚部。誰もが正位置で、強固に取り付けられるおもてなしがされています。  この未来的形状のパーツは、お腹側に搭載されるステルス性を備えたガンポッド。最新装備に触れられるのも、最新鋭機のプラモならではですね。  動翼部分も差し込むだけで正位置が確保されます。絶妙にカーブした曲面など、F−35の複雑な三次曲面と、主翼各部の動きが織りなす美しい姿を本キットは味わえます。  コクピットは最後の工程にやってきます。F-35Cの形が完成してから、アニキを搭乗させる瞬間はまさに完成の儀式。しかもシートやパイロット、計器盤は接着しなくてもある程度固定されるので、塗装した後に接着することも可能となっています。  艦載機ならではの翼の折り畳み、着艦・発艦をサポートする力強い脚などF-35Cならではの魅力満載な本キット。本格的に運用が開始されれば、「これからの空母の景色」を担っていくことになるでしょう。ぜひこの週末は、タミヤの1/72 F-35Cを楽しんでください。最高に楽しい飛行機模型です。それでは!
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October 10, 2025 at 3:00 AM
【工具レビュー】水で洗えてエアブラシ塗装もOK!VICホビーの水性エマルジョン塗料の実力を検証 #工具 #軍用機・旅客機 #塗料 #nippper #プラモデル
【工具レビュー】水で洗えてエアブラシ塗装もOK!VICホビーの水性エマルジョン塗料の実力を検証
 あの、モアイみたいな顔が書かれた塗料……VICホビーのエマルジョン塗料が冴える時代。水だけで塗装が試しめる、非常に塗りやすい水性塗料です。  おお、F-2のいい感じの濃淡色が出ている。これは結構アリなんじゃないですか!? これが水性塗料で楽しめます。空気圧を強くして吹き付けるなら、容器から直接注いだだけで、エアブラシ塗装もできちゃうし、エマルジョン系塗料ってすごいですね。  時代は水性塗料戦国時代。さまざまなメーカーがしのぎを削り、新しい水性塗料を開発しています。ところで、家電量販店に結構前から並んでいる、この塗料。見たことありませんか? こちらはVICホビーというメーカーの水性塗料です。今回は航空自衛隊のF-2でよく見る塗料4色がまとまったセットを買ってみました。  モアイ……じゃなくて、これ中世の兜なんですね。顎元には鎖垂れが覆っています。VICホビーのWebサイトでは似た中世の兜をかぶったキャラクターが描かれていて、こちらはグレートヘルム(バケツみたいな頭)で製品のキャップ部分を模しています。バラ売りだと容量が12mlなのですが、セット売りだと16mlです。  このVICホビーの塗料の特徴のひとつがこのキャップ。どの製品も、横に開く方式で、押すことで一滴から出すことができ、注ぎやすいスタイルになっています。  ボトルから取り出した濃度は筆塗り向きで、エアブラシを使う場合はVICカラー用薄め液を使います。推奨は少しずつ入れる、というものですがエアブラシでも数滴入れて気持ち流れやすくするというぐらいで良いでしょう。少しのアルコール系溶剤で流れを良くしてエアブラシで吹きやすく、そして食いつきを少し向上させます。  エマルジョン系は最初は膜を作る方向で薄く塗るのがセオリー。ただこれはかなり薄めに溶いたので本当に透けるぐらいで膜を構築しています。0.1Mpa/hレベルの出力を持つコンプレッサーがあれば、塗料1に対して溶剤0.5以下でも全然吹いていけます。  水性塗料なのでツールの洗浄が水でできるのもラクなところ。ドバドバ注いでしっかり洗いましょう。吸収のよい紙などに吹き付けて、エアブラシ内の流路もキレイに。塗料が固まらないように、吹き終わったらすかさず洗浄するのがポイントです。  ライトグレーは先端のレドーム部分に使われる色です。一気に吹きすぎないようにまずは膜をつくる、そして乾燥後にくるむという手順をしっかり踏みましょう。エマルジョン系なので、先端の針のようなピトー管が金属に置き換わっていても塗料を乗せることができます。  ホワイトは脚庫の内側の色です。ほんのりうす緑がかった色で、青の上だとさすがに数回塗って発色させます。薄膜を作ってしまえば、その後は比較的早い。乾燥は塗膜の厚みによりますが、エアブラシの層を作るなら30分も待てば良さそうです。表面が水分っぽいツヤでなくなり、表記通りの半ツヤになるのもひとつの判断ポイントです。  濃い青も発色しやすく、淡い青の上だとさらにキレイになります。F-2セット4色で、とてもキレイにまとまった塗装ができました。F-2の色って整備状態や見た場所の天候によっても結構印象が変わるのですが、これは塗装して間もないキレイ側な印象。私の好きなタイプの色です。  結構ラインナップも豊富で、近年ではキャラクター向きの色、メカスペースカラーも用意しています。そしてミリタリー系の塗色はなかなかすごいものがあるので、棚で探してみると思わぬ出会いがあるでしょう。臭いがなく、使いやすいボトル、豊富でちょうどよい調整のカラーと、結構強力な塗料ですね。
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October 6, 2025 at 11:01 AM
チェンソーマン映画の飛行機のシーン何?って感想を見かけるけど、あれはレゼが祖国を想ってるシーンだと思う
ピンポンでウェンガが故郷を想う時に入る飛行機と同じ感じ
1回目は工作員である自分を再確認する空想シーン(超低空を飛ぶ軍用機)で、2回目は任務失敗で故郷に自分の居場所がなくなったことをその時上空を通った旅客機を見て想ってる(自分は乗れない関係ないという意味で高高度を飛んでる)
October 5, 2025 at 3:16 PM
【レビュー】飛行機模型としての魅力が嬉しいバンダイスピリッツ「風の谷のガンシップ」プラモデルを徹底解説! #キットレビュー #ロボット・アニメメカ #軍用機・旅客機 #ジブリ #nippper #プラモデル
【レビュー】飛行機模型としての魅力が嬉しいバンダイスピリッツ「風の谷のガンシップ」プラモデルを徹底解説!
 展開状態と収納状態を選択できる緻密な彫刻の着陸脚のパーツを見た瞬間に「あ、精密な飛行機模型だ!」という気持ちが一気に膨らみました。バンダイスピリッツの1/72スケールモデル、「風の谷のガンシップ」です。求めやすい価格でいつでも模型店の棚にあるからこそ、なんとなく買わないでいたのがすごくもったいない。そう言えば『風の谷のナウシカ』のプラモデルは「メーヴェとナウシカ」しか作ったことがありませんでした。  考えてみれば、メーヴェというのは「動力付きの小さな全翼機の上に人間が乗る」というかなりプリミティブで恐ろしい乗り物。あくまで風を利用して飛ぶ凧のような機体だから、車輪の付いた着陸脚はなくてヒゲのようなスキッド(橇)で地面に接しています。ガンシップはメーヴェと比べるとれっきとした飛行機に見えます。現代ジェット戦闘機と比べたらずいぶん小柄ですが、それでも設定の全幅18m(模型では25cmでジャスト1/72スケールなのがわかります)と零戦の1.5倍はあります。  着陸脚の複雑な造形に加え、さらに飛行機模型らしさを演出してくれるのがパイロットフィギュアです。前席に乗るナウシカと後席のミト爺は指先ほどのサイズで、1/20スケールのメーヴェで豊かな造形を見せてくれたナウシカとは対象的な小ささ。前席は左右の張り出した丸窓からも中が覗けるのでナウシカは両腕を分割して全身が再現されていますが、ミト爺は腰から下を大胆に省略して機体内部に据え付ける設計となっています。  コクピットを組み立て、左右に分割された胴体で挟み込み、そこに主翼を突き刺して完成……という流れもきわめて飛行機模型的。架空のものであってもあくまで飛行機を模型にしているんだから飛行機模型っぽい体験になるのは当たり前、と言ってしまえばそれまでなのですが、しかしバンダイスピリッツの色分け済みプラスチックと接着剤を使わないスナップフィットで細かいパーツを取り付けていくのはなんだか新鮮です。  完成してみると薄黄色のポテッとした機体が目の前に現れます。表面のディテールはそこまで多くないのでどうしてものっぺりとした印象になってしまいますが、しかし飛行機模型を作ったことがある人ならばスミ入れや汚しと言った味付けでより飛行機らしい表情に仕上げる方法を知っているはずです。もちろんそうでない人にとっても、いまならさまざまなツールやマテリアルで実感のある表面仕上げの方法が用意されています。安価でシンプルな構成でありながら、飛行機模型らしい組み味と良好なフォルムが手早く味わえるプラモデルとして、もっとたくさんの人に作られ、さまざまな仕上げで語られるべきプラモデルだと感じました。みなさんも、ぜひ。
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October 5, 2025 at 1:00 PM
【レビュー】SWS 1:32 メッサーシュミット Bf 109 G-4/模型と実機のエンジニアリングを体感する緻密な内容に感激! #キットレビュー #軍用機・旅客機 #nippper #プラモデル
【レビュー】SWS 1:32 メッサーシュミット Bf 109 G-4/模型と実機のエンジニアリングを体感する緻密な内容に感激!
 Bf109という戦闘機は、35,000機以上が生産された世界最多の戦闘機です。その中でもG型は最多生産型であり、過渡期に登場したG-4というタイプは短命ながら多彩なバリエーションを持ちました。偵察機転用や武装ゴンドラの装着、砂漠用フィルターを備えたTrop仕様。SWSのキットは、そのR6と呼ばれた仕様を徹底取材のうえで模型化しています。説明だけ聞けば「資料性の高い再現」ですが、実際に組んでみると「なるほど、これを伝えたいのか」と納得する瞬間が次々に訪れます。 >SWS 1/32 メッサーシュミット Bf 109 G-4  キットを組んでいくと、戦闘機の歴史的な数値や性能の羅列ではなく設計上の合理性そのものが迫ってきます。エンジン、砂塵フィルター、主翼構造、キャノピー、防弾ガラス、モーターカノン。パーツはかなり多いのですが、ひとつひとつのユニットをを組むたびに、実機の設計者がどう問題を解決し、どう合理的に積み上げたのかがわかります。  組んだら見えなくなってしまうのに、エンジンの中にピストンが再現されている……というのは1/32スケールのSWSシリーズでも定番と言って良い設計ですが、しかし何度体験してもニヤニヤしてしまいます。SWSのBf109G-4を開けて手を動かした瞬間に出てきたのが、このDB601エンジンの内部再現。倒立V型水冷12気筒という文字列は知っていても、「実際に組み上げるとこんな感じになるのか……!」と腑に落ちます。図解を見ても理解しづらい構造が、プラスチックパーツを組むと指先を通して実感に変わるのです。  そんなエンジンとまさに一体となってこの戦闘機のキャラクターを教えてくれるのがプロペラシャフトを貫くモーターカノンです。部品を積み上げるうちに、銃弾がどこを通って発射されるのかが見えてきます。  コックピットは合理主義の極致です。三分割されたキャノピー、正面に位置する防弾ガラスの厚み、そして窓枠の頑丈さ。後部燃料タンクから伸びる確認用パイプはクリアパーツで表現され、見慣れない細い管を差し込んで「あ、燃料をチェックするためにここにあったのか」と気づく瞬間があります。ボークスが「整然とした合理主義」と表現するのも納得で、操作に直結する要素だけが残された計算された空間に、設計者の冷徹な才能が宿っているように感じられました。  主翼に取り掛かると、もはや模型を組んでいると言うより構造実験をしているかのよう。胴体に接合される主桁を中心に、魚の骨のようなリブが並んでいて、そこに外板を貼る工程を追体験できます。Bf109のF型以降では、ラジエターの冷却と揚力の調整を兼ねる特殊なクラムシェル型のフラップが採用され、用途に応じてふたつの動作方法が選択できる複雑な機構を持っています。このキットではその仕組みが開閉選択式で再現されているので、「型式ごとの特徴」として語られがちな(しかも外観からではわかりにくい!)仕組みもバッチリ身につきます。  胴体下のパネルの裏側に軽量化のためのパンチング状の凹みがきっちり再現されていることや、翼桁の結合部が涙滴型バルジ内部に収まるのを「なるほど」と確かめられるのもこのキットならでは。外観の特徴が内部の構造と直結していたり、外観からは窺い知れない密やかな努力が内部に隠されていたり……と、完成写真では伝わらない、手を動かした人間にだけ与えられる理解がそこかしこにあるのです。  砂漠仕様のフィルターは「ドム・トローペンの脚にくっついてるアレ」の元ネタ。脚の横から突き出した異様な部品は、単なる外形のアクセントではなく、開閉式の給気口と長い筒状のフィルターの組み合わせとしてしっかりとした説得力があります。部品を手に取り「砂を吸い込ませないためにこういう工夫をしたのか」と理解できる。戦地の環境に合わせた設計変更を、模型を通じて追体験できることにこそ意味があります。  また、キャノピーを組んだときに感じた透明度の高さも、単なる“きれい”で終わりません。ウインドシールド中央は防弾ガラスが重ねられ、座席後部やパイロット頭部直後には鋼板が、燃料タンク後方の第2隔壁にはアルミ合金を多数重ねた防弾板が装備された構造が手元に現れると「これでパイロットを守っていたのか」と腑に落ちます。パーツの透明度の高さは、工学的な仕組みを理解させるための条件にすら思えてきました。  組みながらずっと考えさせられるのは、プラスチックという素材の制約です。部品には最低限の厚みが必要で、強度や組みやすさも保たなければならない。その中でエンジンをカウルに収め、フレームを干渉させずに配置し、しかも実機の構造に近づける。設計者は金型の制約を逆手に取りながら「本物を伝える」方向に突き進んでいるのです。  図面を読むよりも鮮烈に、「Bf109G-4ってこういう飛行機だったんだ!」と理解できる。知識を知識のまま与えるのではなく、模型を介して体に刻ませる。これこそがSWSの思想であり、ボークスが「エンジニアリングへの敬意」を謳う理由なのだと、改めて理解したのでした。 >SWS 1/32 メッサーシュミット Bf 109 G-4  
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October 4, 2025 at 1:00 PM
「あの頃の苦手な接着」と向き合うプラモ/AVISの1:48 ネメス パラソル #キットレビュー #軍用機・旅客機 #nippper #プラモデル
「あの頃の苦手な接着」と向き合うプラモ/AVISの1:48 ネメス パラソル
 「プラモデルにおいて接着剤を使うのは苦手」という、かつて抱いていた先入観は、小学生のときに小さなバイクのプラモデルをうまく作れなかった経験からきている。流し込み式接着剤の存在なんて知らず、すぐに固まらない接着剤を使って作ったものの、最後まで完成しなかった記憶がある。そこからはたまに作ったとしても接着剤は使わないものばかりだった。 しかし今となっては、自分もなんなくプラモデルを接着して作る側だ。だからつい、「今は道具が進化している」と言いたくなる。それにプラモデル自体も進歩が目覚しいので、貼るにしてもスムーズにできてしまう。  ただ、「あの頃できなかったこと」が本当に克服できているかというと、正直かなり怪しい。うわぁ……となる瞬間にちゃんと向き合えているのかすら分からない。それは、言葉にできない防衛本能がプラモ売り場で働き、箱から伝わる雰囲気だけで「これはやめておこう」と逃げてしまっているからだろう。 それでも惹かれたのが、AVISの1/48 ネメス パラソルだった。限定500個という印字に加え、QRコードを読み込むと実機の動画が見られる。エンジンがかかり飛んでいく姿を見て、すっかり心を奪われて購入してしまった。  箱を開けると、少し不安になる姿が現れる。しかし同時に、世界中のプラモデルが同じ進化をしてきたわけではないことにも気づかされる。流し込み式接着剤を前提とした設計ではないことも、なんとなく分かる。そして、無意識に避けていたものだということも、パーツを見るだけでよく分かる。苦手なことに直面したときほど、「自分で自分を理解していたから避けていたんだな」と思う瞬間はない。 パーツをできる限り整形して貼り合わせる。隙間ができたり、どうやってもハマらないものが出てきたりして頭の奥が少しグシャッとなる感覚に襲われる。それでも、設計者がやらせたいことはなんとなく伝わってくる。隙間に瞬間接着剤を流し込んだり、合わないパーツは削ったりしながら形にしていく。  正直大変な作業だけども地道に進めてふと振り返ると、当時はゲームオーバーだと思っていた場面に対して、自分なりに対処しながら工程を進めていることに気づく。苦手だったものと対峙してなんとか乗りこなしていこうというポジションをギリギリ取っている感覚だ。 ネメス パラソルは作るのに手間がかかり、完成はまだ遠い。「未完成で終わるかもしれない」と思うときに他の飛行機とは違う円形の翼が輝いてくるのだから、モチーフのユニークさというのは大事なことだなと感じる。それに当時できなかった接着作業やパーツ処理を辛抱強くやることで、あの頃の「できなかったこと」を乗り越えた気になれ、とても楽しい。
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October 3, 2025 at 11:00 AM
モデルアート監修! ステルス機専用の水性ホビーカラー「ライトニンググレー」が新発売!/ライトニンググレー1レビュー #軍用機・旅客機 #筆塗り #水性塗料 #塗料 #nippper #プラモデル
モデルアート監修! ステルス機専用の水性ホビーカラー「ライトニンググレー」が新発売!/ライトニンググレー1レビュー
 スケール模型雑誌「モデルアート」が監修した、ステルス機を塗るのにぴったりの専用色「水性ホビーカラー ライトニンググレー1」、「ライトニングレー2」が発売となります! 水性ホビーカラーを愛用しているフミテシとしては嬉しい限り! 専用色ってやっぱり安心できるので、この塗料のおかげでステルス機の世界へと気軽に飛び込んでいけますね。  ライトニングレーという名前が示す通り、昨今各メーカーから発売された戦闘機プラモ「F-35 ライトニングII」に合わせた色となっています。色味の違いのほかに、1はソリッドなグレーで、2はメタリックグレーなのが大きな違いとなっています。今回はまず「ライトニングレー1」をピックアップしてみましょう。  実際に塗料を出してみると、絶妙なウォームグレー。混色して作るにはかなりハードルが高い色味に思えます。この色が蓋を開けるだけで塗れちゃうなんて最高です。  まずは気軽に筆塗り。グレーなので隠蔽力も強くとても塗りやすいです。「ステルス機のグレーを俺は好きなメカに塗っているんだぜ」って思うと、いつもとは違うワクワク感を味わえます。メカのメインカラーにしても良いですし、関節やフレームに塗っても良い色味だと感じます。  エアブラシでのコントロールも非常にしやすいです。塗料の艶感は「半光沢」に仕上がるので、塗りぱなしでもかなり良い質感に仕上がります。  水性ガンダムカラーにも似たグレーはすでにラインナップされているのですが、F-35を塗るグレーという専用色としての立ち位置とスケールモデル専門誌であるモデルアートが監修しているという安心感は絶大。今まで「ステルス機のグレーって難しそう(実際光によってさまざまな見え方がします)」と思っていたあなたの背中を確実に押してくれるでしょう。ぜひゲットして欲しいグレーです。次はライトニンググレー2のレビューでお会いしましょう〜。
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September 18, 2025 at 11:01 AM
“寄りすぎ写真”が模型を楽しむ可能性を広げる!最新刊『スーパーホーネット・フォトディテールブック』レビュー #軍用機・旅客機 #雑誌と書籍 #nippper #プラモデル
“寄りすぎ写真”が模型を楽しむ可能性を広げる!最新刊『スーパーホーネット・フォトディテールブック』レビュー
 ステルス機が世界で開発されるいっぽうで、まだまだ頼りになるハイテク機が世界にはたくさんいます。F/A-18シリーズの改良機であるE型、F型、そして電子戦を担当するEA-18Gと、スーパーホーネットファミリーはそのマルチロールな性能でまだまだ現役。『トップガン マーヴェリック』で飛行機側の主役として映画スターにもなりました。  そんなスーパーホーネットの現在を知る一冊がこの『スーパーホーネット・フォトディテールブック』です。  中身はF/A-18E・F型からの機体解説にはじまり、機体各部にかなりクローズアップした写真が詰まっています。よくある全体写真では見られないような、かなり近づいた写真がたくさんです。  スーパーホーネットを作ると、いつもこのコクピット前にボコッと突き出た四角い箱なに? って思いませんか? これの名前から役割、そしてあだ名に至るまで、詳細な解説があります。なるほど!  コクピット後ろだけをこんなに丹念に写す必要あるぅ!? しかしこの写真を見たあとで、プラモデルのこの部分を見ると、メーカーがどんな意志でディテールを作ったのかわかることでしょう。  スジ彫りというかディテールって不思議なもので、遠くから見るとあまり見えないけど、近くによるとよく見えます。この3枚の機首側面の写真が顕著なのですが、寄るとスジ彫りに関係ないリベットが見えてきますが、機首全体の写真だとスッキリしていて見えない。このあたりのディテールの映り方の機微がわかると、ディテールアップするにしてもどのぐらいにするべきか、という勘が養われるでしょう。  それこそ先日のリベットマーキングツールもモデルカステン製でしたが、ラインのどっち側にリベットを打つのか、みたいな情報が入っています。機首の左右に広がるLEX、こちらのパネルラインとネジ位置の関係性は必見でしょう。ていうかここのパネル可動部だったのかよというスポイラーの存在が驚き。  EA-18Gグラウラーの話ももちろんあります。敵のレーダーなどをジャミングして飛行隊を支援しながら、対レーダーミサイルを放り込むスーパー知恵者です。翼のちょっとした変化を丹念に写真に収めていて、スーパーホーネットとの違いもあっという間に知識にできます。  あまり見すぎるとプラモデルが完成しなくなるのが資料のアブないところですが、プラモデルはプラモデル、実機は実機と分けつつも、見ておくことでより楽しめる、完成品に意識できることも多いものです。色や汚れ方はまず参考になるし、脚のパーツ周りのくっつき方は結構わからないことも多いので実機の写真が助けになります。またスーパーホーネットを見ておくことで、キャラクターモデルでもスジ掘りでパネルをつくるときに少し説得力がアップすることでしょう……! ぜひゲットして、あなたのプラモライフに役立ててください!
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September 16, 2025 at 1:00 PM
最新サンプルレビュー!HMAの「LED付き格納庫 タイプA」であなたの模型を光輝くステージへとご招待!! #キットレビュー #軍用機・旅客機 #情景 #nippper #プラモデル
最新サンプルレビュー!HMAの「LED付き格納庫 タイプA」であなたの模型を光輝くステージへとご招待!!
 丹精込めて作り上げた自慢の模型、「どうせなら最高にカッコよく飾りたい!」と思うのは、誰もが抱く願いですよね。今日ご紹介するのは、そんな願いを驚くほど簡単に、そして劇的に叶えてくれる最高のアイテムです。それはHMAから発売予定(好評予約受け付け中!)の「LED付き格納庫 タイプA」! 今回は製品サンプルをご紹介します! あなたの机の上があっという間にリアルなジオラマ空間に変身しますよ!!  このキットは、壁用と床用の複数枚のプラスチック製パネルで構成されています。これをパチパチと組み合わせていくだけで、格納庫の基本形がみるみるうちに出来上がります。難しい接着や加工は必要ありません。  パーツ精度も高く、簡単に噛み合います。そして接続用パーツで固定されるので、ガタつきもありませんよ。  「でも、LED付きってことは、配線とか電子工作が大変なんじゃ…?」と思った方、ご安心ください。このキットの最高のポイントは、各パネルにLEDライトと配線が、最初からすべて組み込まれていることなんです! 私たちが行う作業は、パズルのように組み上げたパネルの裏側で、それぞれの配線をまとめて、基盤に差し込んでいくだけ。ハンダごてや、専門的な知識は一切不要。これなら誰でも安心して光る格納庫を完成させることができますね。  そしていよいよ点灯の瞬間です。電源は、私たちの生活にもすっかりお馴染みになった「USB Type-C」を採用しています。  ケーブルを差し込んでスイッチを入れると…どうでしょう!各パネルに2個ずつ、合計22個ものLEDが一斉に点灯し、格納庫の内部をまばゆい光で照らし出します。薄暗い格納庫の中に、整備中の機体が浮かび上がる…。そんなドラマチックな情景が、スイッチ一つであなたのものになります。電源がUSBなので、コンセントから電源を取るのはもちろん、モバイルバッテリーを使えるのも大きな魅力。模型の展示会などで、電源が確保しづらい場所でも、自分の作品だけをスポットライトで照らし出すことができます。展示会でも大活躍間違いなしです!  格納庫のサイズは、1/72スケールの現用ジェット戦闘機なら写真のように2機は余裕で置けるくらいの広さがあります。  試しに同じHMAから発売されている1/144のヘルハウンドを置いてみましたが、スケール感が強調されてこれもまたリアルな雰囲気です。さらにこのキットはプラスチック製なので、楽しみは組み立てるだけでは終わりません。自分の好きな色で塗装したり、サビや油汚れといったウェザリングを施したりすることで、あなただけのオリジナルの格納庫を作り上げることができます。あなたの自慢の作品を光り輝く最高のステージに飾ってみましょう!
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September 13, 2025 at 11:01 AM
英国かぶれの午後半休はプラモデルとともに/最高のタイミングで触れるタミヤのF-35B #キットレビュー #軍用機・旅客機 #nippper #プラモデル
英国かぶれの午後半休はプラモデルとともに/最高のタイミングで触れるタミヤのF-35B
 「お先に失礼しまーす。」 月曜の正午すぎ、足早にオフィスを後にし、ランチを求め街を彷徨うサラリーマンを右に左に避けながら駅へ。ゆりかもめに乗って向かうのは東京国際クルーズターミナル。午後半休を取ってでも絶対に見ておきたい空母が、たった数日間だけ寄港しているのだ。  駅を出て、解体作業の進む旧・船の科学館の脇を進む。船着場へ向かう遊歩道に出た瞬間、数百メートル先にありながら、あまりにも存在感のある ”彼” の姿が目に飛び込んでくる。もうこの時には、容赦なく照りつける日差しと36度を超す気温は、自分の中では些細なことになっていた。  ついに見ることができた。イギリス海軍空母 プリンス・オブ・ウェールズ。8月に横須賀基地へ寄港した際、実は当日の朝まで見に行くつもり満々で準備をしていたのだが、急なトラブルが重なり横須賀には行けなくなってしまった。それ故に、「東京への寄港もあるよ」というニュースが目に入った時には心が躍った。なんせ、ヘタすればもう一生見ることができないと思っていたくらいだったからだ。艦体に近付いてからしばらくは写真を撮るのも忘れ、その凜とした姿をただ眺めることしかできなかった。  飛行甲板から海に落ちるんじゃないかというほどギリギリの場所に、複数のF-35Bが駐機している。自分自身、F-35シリーズを生で見るのは初めての体験。これまで目にしてきたどの戦闘機とも異なる、複雑な三次曲面で構成されたボディワーク。有機的な第一印象を受けた一方で、各部のエッジは触れただけで皮膚を裂きそうなほど薄く尖っていた。 短時間ながら、素晴らしい体験だった。さっきまでの非日常な光景を思い浮かべながら、再びゆりかもめに乗車する。まだ、この余韻を楽しんでいたい。せっかくの午後半休なんだ。こんな時に気軽に立ち寄れる場所...パブがあるじゃないか!  ちょうど乗り換え駅の改札を出てすぐにHUBがあることを思い出し、久しぶりに利用することに。カウンターで1Pintのハブエールとスナックを注文してから椅子に腰掛けると、身体がかなり火照っていたことに気がついた。このタイミングで流し込むビールの美味さ、やめられないよね。  1杯目を飲み干してからギネスビールも追加注文し、心地よい酩酊感に身を包まれていた。店を出てすぐの家電量販店に吸い込まれ、迷うことなくホビーフロアへ向かう。この最高のタイミングで、ずっと気になっていたあのキットを買おう。酒を飲みながらそう決めたのだ。  手に取ったのは「タミヤ 1/72 ロッキードマーチン F-35B ライトニングⅡ」。ついさっきまで目の前にあった第5世代ステルス戦闘機を、その日のうちに自分の手で触れてカタチや内部構造を知りつくすことができる。プラスチックモデルというプロダクツの素晴らしさをあらためて噛み締めた。  帰宅してシャワーで汗を洗い流し、髪を乾かすのも後回しにして箱を開けてみる。F-35Bを上下で2枚おろしにした大型パーツが存在感を放つ一方で、細かく華奢なパーツたちもランナーに点在している。一瞬、それらのパーツの組み付けに不安を感じたものの、流石はタミヤ。細かなパーツをしっかり保持できる機構や、接着剤を流し込むための糊代といった工夫から、世界中のユーザーに対する思いやりと、自社がリリースする製品に対する圧倒的な自信が伝わってくる(これを自分はよく ”タミヤの包容力” と表現したりする)。  デカールを確認すると、左下に「ROYAL AIR FORCE」という今一番嬉しい文字が。実機を見てきたからには、イギリス軍仕様で作りたくなってしまうよね。イギリスの他にもアメリカ、イタリアの各軍に所属する仕様を再現できる分のマーキングに加え、キャノピーやフェアリングの塗装に役立つマスクシール、両面フルカラー印刷の立派なマーキング指示書も同封されている。  タミヤの1/72ウォーバードコレクションといえば比較的あっさりしたキット構成のイメージがあったので、意外さに驚きつつも「これだけ充実していれば4,000円を越す価格設定でも安すぎる」と感じたのであった。 「なんて贅沢な午後半休だったんだ。」この記事を勢いで書いている今もそう思う。F-35Bのキットが完成したら、撮ってきたプリンス・オブ・ウェールズの写真と一緒に飾ろう。眺めるたびに、汗だくで都内を歩き回ったこの夏の日のことを鮮明に思い出すハズだ。
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September 8, 2025 at 1:00 PM
バリエーションを味わう月光3兄弟、どれ選ぶ!?/タミヤの1:48『月光11型 前期生産型』 #キットレビュー #軍用機・旅客機 #nippper #プラモデル
バリエーションを味わう月光3兄弟、どれ選ぶ!?/タミヤの1:48『月光11型 前期生産型』
 最近知ったことのひとつが、「タミヤの月光には3種類が存在する」ということ。 日本機好きのみなさんには常識なのでしょうが、わたしにとっては新発見でした。正確にいえば、3種どれも見覚えはあったんです。それでも、意識が向いていないと「3種ある」なんて思い至らなかったんですね。 実はこのところ旧海軍機がマイブームで、以前はさほど気にとめなかった暗緑色の機体が急に魅力的に思えてきました。すると通い慣れたプラモ屋さんでもこうした発見が続出するから不思議です。  さて、「3種ある」と知ったからこそ、それぞれの違いを区別できるというもの。それぞれを見比べ、作るなら絶対これ! と決めていた「11型 前期生産型」をようやく入手できました。コブのような胴体後部の段、長いエンジン排気管──初期型特有の垢ぬけきらない姿のバージョンです。 これを含む月光3兄弟ですが、基本構成はもちろん共通。一部のパーツ群が差し替わることで、実機の改良過程3タイプがそれぞれ模型になっています。キットには実機解説が封入されていたので、進化の道筋もばっちりおさらいできましたよ。  機体を組みあげていくと、その大柄さにびっくり。箱を開けたときから「あれっ、意外と大きいな……」と思っていましたが、ここまでとは。内装を作り終えると急激に機体が組みあがっていく加速感が、実際以上にそう思わせるのかもしれません。 この緩急を生み出しているキーは、胴体後部に仕込む「斜銃」でしょうか。密度感ある機銃パーツを骨組み架台にセットし、細身の胴体へ立体的に組み込んでいく斜銃ユニットの組み立ては、濃密で没入感のある作業。これを終えた直後、伸びやかな翼と胴体がガツンと合体し、全幅35cmの機体が一気に姿を現すのです。これは3兄弟共通で、なかなか爽快です。  機体のスタイルが見えてくると、意外なほど丸みを帯びた美しい飛行機なのだと気づかされます。機体表面には端正なパネルラインが走り、華美さはなくとも真面目で落ち着いた表情のプラモ。パーツ同士の合わせは全体を通して心地よく安心できるものですが、わたしの場合は主翼付け根に少しのスキマを作ってしまったので、この点に関しては丁寧に作業するとよかったのかもしれません。  できました! 探し求めていた「前期生産型」のスタイルをとうとうモノにできて感慨ひとしおです。後期生産型以降はより洗練されたスタイルで一味違う印象ですから、3箱どれを選ぶかはそれぞれの好みがあらわれそう。「この月光を選んだひとはあんなプラモも選んでいます──」みたいなレコメンドも組めちゃいそう。 さて、新たなカテゴリに興味がわくと、その周辺のプラモへの解像度がぐんと上がって見えるから面白いですね。この月光のようにバリエーション兄弟を持つキットたちは、それこそ数えきれないほど存在するはず。このマイブームに乗じて、「新発見」はまだまだ続きそうです。
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September 5, 2025 at 11:00 AM
「無数の選べる完成形」が贅沢な悩み!/ピットロードの最新飛行機プラモデル、P-1哨戒機 インボックスレビュー #キットレビュー #軍用機・旅客機 #nippper #プラモデル
「無数の選べる完成形」が贅沢な悩み!/ピットロードの最新飛行機プラモデル、P-1哨戒機 インボックスレビュー
 日本の周辺海域の警戒・監視の任務をこなす海上自衛隊のP-1哨戒機。エンジンや電子機器にトラブルを抱えやすく、稼働率が低い……といった実機に対する巷の批判はさておき、新しいプラモデルになったことはおめでたいこと。ピットロード製の1/144スケールP-1は、新鋭機の最新モデルとしてかなり楽しい内容になっているので、まずはそっちにフォーカスしよう。  全体の設計思想は、大きな部品でシルエットを決めつつシャープさや緻密さが求められる要所をこまかなパーツでフォローするというグレートウォールホビーの現用機キットに通じる。これは風防用のカット済みマスキングシートや機首錘の付属といった点でも同様だ。プラスチックパーツは実機の微妙なブルーグレーをイメージした色合いで、組むだけでも見栄えがする。  まず楽しいのは塗り分けが楽ちんな「タイヤとホイールの別体化」だ。1/144スケールではその小ささからタイヤとホイールが一体のパーツで再現されることも多いが、大型機ならではのメリットを活かして分割されている。ただし、着陸脚そのものは展開/収納が選択できるため、飛行状態を選択して組み立てるとこのおもてなしの恩恵は受けられない。ここで第一の「どっちで組もうかな」が出現する。  次に目を引くのがフラップとスラットの扱い。主翼前縁のスラットと後縁のフラップは別パーツとして分割されており、開閉(ないしアップダウン)を選ぶことで離着陸時か巡航時かを表現できる。スラットやフラップの展開時にだけ露出する赤い警告色は同梱されたデカールが鮮やかで、複雑なラインも一発で再現可能だ。ただしこちらも、巡航姿勢となればこのデカールの出番はない。任務中の伸びやかなラインを取るか、離着陸時のギミックフルな姿を選ぶか、第二の「どっちで組もうかな」の出現である。  機体番号も悩ましい。デカールには厚木、鹿屋、下総の各基地所属機が収録され、試作機改修の5502号から量産初号の5503号、さらに35号機までじつに計34機分の番号を網羅している。航空祭などで目撃した機体の再現もまずまちがいなくできるだろうし、教育航空隊の機体を選ぶのか、即応配備されている部隊機を選ぶのか、塗装や汚しと組み合わせれば、同じ箱から何通りものP-1が生まれることになる。第三の「どっちで組もうかな」がここにある。  全長264ミリ、全幅246ミリという取り回しやすいサイズに、嬉しさと悩ましさを同時に呼び込む仕掛けを詰め込んだキットは、批判にさらされてきた実機とは逆に「選んで迷ってまた作る」という豊かさを保証してくれる。このP-1をどう仕上げるかは常にあなた次第であり、このキットを一度きりで終わらせるのはもったいないように思える。単に完成形を目指すのではなく、作るたびに違う答えを導き出せるピットロードの最新キット。ぜひあなたも手にとって、その理路整然としたパーツ構成と豊かな選択肢を堪能してほしい。
nippper.com
September 2, 2025 at 1:00 PM
パレットに残った青が起こした奇跡。「コルセアが軍警ザクになった日」。 #筆塗り #塗料 #工具 #軍用機・旅客機 #ガンプラ #nippper #プラモデル
パレットに残った青が起こした奇跡。「コルセアが軍警ザクになった日」。
 コルセアを塗った梅皿がきっかけで、軍警ザクを塗ることになるなんて。パレットに残った塗料は、次の模型を呼び寄せる……。  先日、「タミヤ 1/48スケール アメリカ海軍 ヴォート F4U-1A コルセア」を筆塗りしました。完成後に、筆塗り時にパレットとして使用した梅皿を見てみると、「あれ?? この色って軍警ザクとほぼ同じじゃね?」となり、ストックから組んだ状態の軍警ザクを引っ張り出してきました。  すると、ビンゴ。ネイビーブルーやミディアムブルーを使えば、このまま軍警ザクもすぐに塗装できる! という嬉しいサプライズが、我が机上に舞い降りたのでした。こうなったら塗るっきゃない!! コルセアを塗ったパレットとザクを見比べながら、頭の中で色の配置をイメージしていきます。まさに色の記憶が残ったパレットとの対話であります。  パッケージイラストがとても張り切っていてかっこいい! さらに、ピンクのエフェクトに照らされたブルーの雰囲気が良かったので、コルセアで使用したブルー(ミディアムブルー、ネイビーブルー、グラデーション用に混色するホワイト)に少量のピンクを加えて塗ってみました。  コルセアで使用したパレットを洗い流すことなく、そのまま塗料を追加! コルセアの味を軍警ザクに引き継がせるのです!!  パレットに残った色の記憶は、他の模型にも引き継がれる。プラモデルは、スケールモデルでもキャラクターモデルでも色の往来を楽しむことができる素敵な趣味です。「あの戦車の色、このモビルスーツにそっくり! あの車の色が美少女プラモの髪を塗るのにピッタリじゃん!」。そんな色の視野が広がってくると、塗装はさらに楽しくなってきます。今あなたが塗っている色も、もしかしたら他のプラモデルを輝かせてくれる色かもしれません。塗装後のパレットを見つめる時間は、そんなサプライズをあなたにもたらしてくれますよ。
nippper.com
September 1, 2025 at 1:00 PM
「飛行機プラモの筆塗りをしたいとき、どこまで組んでも大丈夫なのか問題」の解。 #軍用機・旅客機 #筆塗り #nippper #プラモデル
「飛行機プラモの筆塗りをしたいとき、どこまで組んでも大丈夫なのか問題」の解。
 ロービジ……つまりグレーのトムキャットを筆塗りしたい。飛行機模型は組んだり塗ったりの工程が入り組んで「塗る→組む→塗る→組む」となりがちだが、トムキャットのカタチはさっさと見たいし全体のバランスを一気に整えていくのにも「部分ごとに塗る」というのは微妙な結果になりそう。筆塗りの先輩たちよ、ジェット機のプラモデルはどこまで組んでも筆で塗れるもんなんでしょうか。  で、その正解は……「ほぼ全部」でした。ホビージャパンウェブにそっくりそのままの記事があります。筆塗りが超絶うまいアーティスト、大森紀詩アニキの作例がどう塗られているのかを観察すると、全体を組み上げて真っ黒に塗ってから、筆でグレーを重ねて汚れも一緒に描いちゃったりして、「組む/色を塗る/汚す」の工程を一体に捉えていることがわかります。いやー、気が楽になったぜ。 この記事を紙で読みたい人はバックナンバーを買ってもいいし、電子書籍でいつでも呼び出せるようにしたければKindle Unlimited(月額税込み980円だからHJ一冊読むだけでモトが取れてしまう……)に加入するといいです。  ちなみに記事の写真をよーく見ると、ミサイルの類は白を塗ったりデカールを貼ったりするこまかな作業が必要なので本体とは別に塗装しています。反面、胴体下にぶらさげる燃料タンク機体と同じグレーなのでは本体に接着した状態で塗装。全体を黒く塗っておけば「筆が入らないところは影」という見え方になるし、非常に合理的です。これも自分で同じようにやって、なるほどそういうことか!と体感できました。  ちなみに大森パイセンが「全体を組んでから筆で塗ったトムキャット」は麻布台ヒルズの集英社マンガアートヘリテージ トーキョーギャラリーで開催中の大暮維人×大森記詩「SCALE GIRLS / SCALE ARMS」にて実物を見られます(金網越しなんだけど、これがまたかっこいい!)。記事を読んでなんとなく「そうすれば塗れるんだな」ということがわかっても、やっぱり実物を見て自分も同じ方法にチャレンジして、なるほどそういうことか!というのがよくわかります。みなさんもぜひ、「読んで、見て、実践して、楽しい!」を味わって下さい。
nippper.com
August 30, 2025 at 1:00 PM
ふたつのスケールでついにファミリーが勢揃い/タミヤ製最新飛行機プラモ、1:72 F-35C インボックスレビュー! #キットレビュー #軍用機・旅客機 #nippper #プラモデル
ふたつのスケールでついにファミリーが勢揃い/タミヤ製最新飛行機プラモ、1:72 F-35C インボックスレビュー!
F-35の新たに登場したタミヤの1/72スケールC型プラモデルは、艦載機特有の折りたたみ主翼機構や装飾的な塗装図を特徴とし、多用途性を具現化しています。
nippper.com
August 24, 2025 at 1:00 PM